表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

有志

〈我が耳は執念(しふね)き雷の殘る耳 涙次〉



【ⅰ】


 杵塚は8台めのバイクを買つた。ヒョースン gv125Xロードスター。韓国製品である。60ウン萬したから、彼のバイク・コレクションの中では髙価(たか)い方だらう。因みに彼にしては珍しいクルーザー・タイプ。

 さて、バイクはOK。次は映画だ。俺の仕事だからな。*『霧子』の次回作の構想を練らなくちや。いつまでも楳ノ谷の懐頼りでは進歩がない。



* 前シリーズ第172話參照。



【ⅱ】


 一頻り考へた後、やつぱじろさんかな、と發想。彼の半生、放つて置くには余りに波瀾万丈過ぎる。それに知名度も髙いから、今度も当たるぞ! 早速映画會社に交渉しに行く。

 杵塚、交渉はスムーズに行くものとてつきり思つてゐた。然し、會社側、なかなか「うん」と云はない。これつて2匹めならぬ3匹めの泥鰌はゐないつて事?「さうぢやなくて」と會社の担当者が打ち明けた...



【ⅲ】


「映画監督のギルドがあるでせう。杵塚さん、貴方それに加入してゐない。ギルドのサイドが、未加入の杵塚に撮らせるのは出來ぬ相談だと云つてね」もし杵塚に撮らせたら、ギルド挙げてのストライキも辞さない。さう強硬な手段に出られると、うちとしてもね‐

 杵塚、一匹狼を氣取つて、ギルドの群れの内に身を投ずるのは控へてゐた。これは致し方ない。加入の手續気を取るか。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈午后3時欠伸が出れば大丈夫我が身を知るは我一人なり 平手みき〉



【ⅳ】


 杵塚、ギルドの事務局に出頭した。だが...

何という横暴さだらう。ギルドが指定する題材でないと、撮るのは罷りならぬ、と云ふのだ。然も、その題材、とは‐『伊達剣先の生涯』だと云ふ。ちよつと待て、その一件はもう終はつた筈だぞ!



【ⅴ】


 杵塚、その件急ぎカンテラに連絡。カンテラ「おいおい、マジで洗脳されてる連中がゐるとはな」カンテラ・じろさん・テオの3名で事に当たるが‐「あんた方の脅しに屈する我らだと思ふなよ」‐仕方ない。斬るか。然し、それでは特定の思想を押し付けてゐる、と云ふイメージが殘つてしまふ。一體だうすりやいゝんだ?



【ⅵ】


 こゝでカンテラ事務所特別顧問の尾崎一蝶齋登場。彼は物柔らかにギルドの連中に云つた。「いゝでせう。確かに承りました」‐「え!?」と杵塚。尾崎は云ふ。「勝手に撮つちまへばいゝ。ゲリラ戰法だ」‐「ありやりや。いつもの活人剣は何処へ、そんな(ごり)押しあり?」‐「私がありと云つたらありなんだ。それで差し支へが出るやうだつたら、それこそ楳ノ谷さんに相談すればいゝ。メディアは映画だけぢやないでせう? 後は時の過ぎ行く儘に、さ」

 確かにさうだわ。そこで杵塚、ゲリラ上映してくれる、有志を募つた。その數、相当なものだつた。だつて今の世の中、LINEつて便利なものがあるぢやない!



【ⅶ】


 と云ふ顛末。ギルドを上回る尾崎の惡知恵(?)、流石特別顧問。で、世間には篤志の人たちが澤山ゐるもので、その現狀を皆さんに廣めてくれた事は記憶に新しい。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈ぽつと來てまだまだ足りぬ冷却水 涙次〉


 云ふまでもなくこの話はフィクションです。實在の團體・個人とは関係ありません。(永田)

 ぢやまた。アデュー!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ