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○冒頭
私はあの日、動けなくなってしまった。
その間に、全てが終わっていた。その後に吹き荒んだ嵐、戦争を生き抜いて、気がついたらひ孫ができる年だった。
振り返ると何処かで、いや、あの瞬間、頑張れたはずだ。
今はまだ後悔しかない、でも今の生活は後悔ない、それはそれで嘘はない。
でも、それでも、願わくば、あの瞬間、自分に力が、いや、踏み出す決意があったなら。
誰も頑張れとは言わなかった、でも、言葉は自分向けられていたはずだった、でも気づかなかった。
だから願う、あの瞬間、その日にもう一度戻れるなら、今度は間違えない。その先が地獄でも。
ありえない世界だけど、許されるなら、叶えてくれ。
ありきたりなセリフで「夢は叶う」と言われても、信じれない。信じなかったけど、今度は信じる。いや信じない。自分で叶える。予想すらしない未来へ。だから、少しでも夢を見たって良いじゃないか。叶わなかったその夢の先を。
見たって良いじゃないか、その夢の先を。その先を走る主人公は私の瓜二つの別人であっても。
駆けろ、その世界を。私の代わりに。お願いだから。