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8、ハングドマン

「はは……嘘だよね。お父さん……アラン……」


 茫然自失といった感じでフラフラと吊るされた死体に近づくナナ。


「待て!? 触るな!」


 だが、それを咄嗟に止めたのはマーサだった。


「マーサちゃん、離して……せめて、せめて下ろしてあげないと」


「よく見ろ!死体に手榴弾が取り付けられてる。ありゃ下手に触ると爆発するブービートラップになってる!」


 なおも死体に近づこうとするナナを、マーサはやむなく羽交い締めにして止めた。


「ルーナ、一緒に止めて!この子意外と力が強い!」


「うん!」


「リューネは本隊に連絡。合流する。この状態じゃ偵察任務なんて無理だ!」


「はいよ!……死体にブービートラップ。隊長の十八番だけど、やられる側になると腹が立つな」


 リューネは携帯無線機を通じて、スカイに連絡をとる。


「こちらイーグル3。リューネ。……件の首吊り死体の所まで到着。……とんだサプライズに遭遇した。ナナが戦闘不能。……いや、怪我したわけじゃない。ただ、心にとんでもない傷をつけられた。先行して早々だが、本隊に合流したい。オーバー」


「……了解。イーグル3。敵がいなければその場で待機し、後続を待て」


 スカイからの返答にリューネは少し苦い顔をした。流石にこの場にいつまでもナナを置いておけない。


「後退し、本隊に合流したい。……この場にいつまでもいたら、ナナが壊れる。…………吊るされてたのはナナの親父と婚約者だ。オーバー」


 すると、しばらくスカイからの返答が途絶えた。流石の彼といえど、絶句しているのだろう。


「イーグル3、至急後退し、本隊に合流せよ。こちらは現在ポイントH66を通過中」


「助かる。これより後退する」


 リューネが通信を終えると、流石に少しは落ち着いたのか、ナナは2人に支えられながら、ゆっくりとした歩みで歩み始めていた。死体から背を向けて。


 死体たちは全員死後数日は経っていそうだ。ハエやアリが体中を這っていて、黒い斑点が至る所で蠢いている。


 そして首には木製の看板がかけられていた。


 そこにはこう書かれていた。


 ――私達は無責任に戦争を煽ったクソッタレです。私達の罪はここに吊るされるに値します!


 * * *


「……まさか、ナナの親族とはな」


 スカイは、吊るされた何体かの死体を眺めながら呟く。


 すでにイーグル第3小隊は合流していた。現在地は件の首吊り死体群の地点。あのうちの2体がナナの父親と許婚だったという。


 ナナの精神的ショックは相当なものだったろう。現在、死体が見えない位置でレベッカとルーナ。そしてシャーロットが彼女を落ち着かせている。


「暴徒化した市民じゃなく、反政府軍だろうな。わざわざブービートラップ化してる辺り。王都から逃れて潜伏していたが、潜伏先がバレたか、密告されたかして捕まった。そんな所か……」


 彼はは、冷静に吊るされた死体を見る。ナイロン糸が木にくくりつけられ、手榴弾の安全ピンに結ばれていて、それが死体に固定されている。


 下手に下ろそうとすると、ズドン。


 スカイ自身がこれまでも何体も作ってきた罠。敵にやり返されるとは皮肉なものだ。


 首には反政府軍がかけたと思われる看板。実際、彼らは主戦派の一角として文言通り、無責任に戦争を煽っていた人間達だ。しかも、王都の安全な場所から。因果応報……といえばそれまでだが……。


「……スカイ」 


 死体を見ていると、レベッカが声をかけてきた。


「レベッカか。ナナの様子は?」


「今は落ち着いてる。……ただ、今後は分からない」


「PTSDは後から来るからな……。しばらく気を付けて様子を見てやってくれ」


 レベッカはうなずいた。流石に陽気な彼女も弟子に降りかかった突然の災禍にショックを受けている様だった。


「……せめて、ナナに関係ある2人だけでも、下ろして埋葬してあげられない?」


 レベッカの言葉に、スカイはゆっくりと首を横に振る。


「……下手に動かすとトラップが作動する。それに今は行軍中だ。夜が明ける前に、少しでも先に進みたい」


 彼の考えを察して、レベッカは何も言わず、ただ、悲しげな顔をした。


(…………そんな顔をしないでくれ。俺だって苦渋の決断なんだ)


 そうは思いつつも、それをあえて口に出すことはしなかった。あくまで、皆の前では感傷的にならず、いつもの冷徹で合理主義者の『ついていけば生き残れる、理想の隊長』でいなければならない。代わりに、一言、命令を下した。


「……隊列を組め。進軍を再開する!」


 スカイの声に従って、隊員達は進軍隊形になった。ナナは……一応自力で歩けそうだ。


「……敵に捕まれば、我々もああなる。生き延びたければ、敵を殺すしかない」


 そう、スカイは自分に小声で言い聞かせると、声を上げた。


「行軍開始!」


 首吊り死体達の脇を隊列は行く。


 カーク市へは少しずつだが、確実に近づいている。


 隊は進む。地獄の果てを目指して。

スカイくんが日常的に死体にブービートラップ仕掛けまくってるから、666大隊の少女兵達、死体=爆発するものって認識があるんだよね。もしスカイがそれしてなかったら不用意に死体に触って4人とも爆死してたかもという。


普通娘を666大隊から親や許婚が連れ戻そうとするイベントとかあると思うじゃん?そんなものはない(無慈悲)。戦記ハーレムもので許婚や親がししゃり出てくる展開は勝ち戦だから書けるんやなって…見ろよこのブラックバニア。負け戦ですべてがぐっちゃぐちゃだ

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