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6、第六感

 147号線。ブラックバニアの北部を通る幹線道路である。規模は中規模ながら、クラリーチェ・ヴァレンティアの領地、カーク市へと繋がる道の一つであり、一時期にはここをめぐって政府軍と反政府軍で熾烈な争奪戦が行われた。


 王国歴199年5月1日に行われた、666大隊も参加した大規模作戦により、この近辺の反政府軍勢力は一掃され、政府軍の支配地域になっていた。が、王都が落ちた現在。この地域は反政府軍と遭遇する可能性のある地域になっている。


 と、いうより、カーク市以外の土地は、ほぼ全て遭遇のリスクのある土地と言っていい。反政府軍はもちろん、山賊めいたゲリラや、果ては住民までもが敵になっている可能性すらある、先ほどまでいた廃村や森は、深い山の奥だったからある程度は安全だったが、幹線道路まで出てくるとそうはいかない。


 普段は変人揃いの666大隊も警戒心最大で進んでいる。オウル偵察隊は先に出発したが、最終的に自身を守れるのは自分自身なのだ。


「らーらーらー♫ こちらオウル2。ブリジット・ホークアイ。定時連絡。現在ポイントG66を通過中。敵影無し、オーバー」


「了解。こちら本隊。スカイよりオウル2へ。そのままのペースで進軍せよ」


「オウル2、了解」


 無線からブリジットの声が聞こえてくる。相変わらずの美声だ。


 147号線の両脇は森林になっていて、典型的な山道である。とはいえ、良く整備されていて行軍の効率は森林の比ではない。


「この辺、うちの領地なんです。このあたりは庭みたいなもんで、土地勘があります。イーグル第3小隊も先行しますか? 目は多い方が良いでしょう」


 そう俺に進言してくるのは、ナナ・デルタダート。男爵令嬢にしてレベッカの弟子。イーグル第3小隊は彼女が所属する小隊だ。


「……行ってくれるか? 無線の周波数は6785-666を使用する事」


 スカイは即座に判断して指示を出した。


「了解。マーサちゃん、リューネちゃん、ルーナ。行こう」


 ナナは隊のメンバーを集める。その時、無線から別の声が入った。オウル第3小隊、エレオノーラ・ドーントレスの声だ。


「こちらオウル3。定時連絡。現在、ポイントG67を通過中。敵影はいないけど……いやーなものを見つけちゃった」


「こちらスカイ、オウル3、状況を報告せよ」


「大したものじゃないけど…………さっき、脇の森の木に人が吊るされてた。それも1人じゃなく、何人も。気分が良いものじゃないから、後続は注意されたし。そろそろ見えてくるはず。オーバー」


「よく知らせてくれた。そのまま偵察を続けろ、オウル3」


「了解」


 そう言って通信は切れた。……首吊り死体。


 最近の情勢じゃ、珍しくもない。捕まった貴族や反政府軍に『反革命的』とされた人間。更には反政府軍同士の内ゲバの末、処刑された人間。そんな見せしめの為の首吊り死体は、これまでの逃避行の末に彼女達は何体も見てきた。


 当初は、ショックを受けた隊員もいたが、何体もそんなものを見ていくうちに、大半は慣れっこになっていた。人間の適応力は恐ろしい。


「首吊り死体なんて、今日日珍しくも無いでしょ。行きましょ」


 実際、イーグル第3小隊のマーサなどは特に動揺もせずに言う。……何度も懲罰部隊送りになってその度に帰ってきた少女に、元の高慢だったお嬢様の面影は皆無である。スカイは頼もしさと、少しの罪悪感も覚える。


「……なんとなく、嫌な予感がする」


 そう言ったのはルーナ・デルタダガー。ナナの従姉妹でバディ。火炎放射器使い。 


「何? 死体にビビってるの?」


 リューネ・スーパーセイバーがそう茶化すが、ルーナは首を横に振った。


「いや、そういうわけじゃなくて、第六感というか……」


「ま、行こうよ。別に今日日死体なんて珍しくも無い。それに、目は多い方が良い」


 ナナはそう言うと、先頭に立った。


「3人とも着いてきて。道案内する」


「……大丈夫かな?」


 ルーナは不安げだったが、それだけで拒否する事も出来ずに、戦友3人と共に先行して行った。


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