6、チーム編成
「――というわけで、頭数もそろったので、手分けして探そうと思う」
アリスが腕を組み、実に当然のような口調で言い放った。
その隣で、レベッカは思い切り眉をひそめていた。
「それはいいとして、チーム分けはどうするの? 一歩間違えると血の雨が降りそうだけど」
血の雨――その言葉には、妙な迫力があった。
「……というか、あんまり冗談に聞こえないのが怖い」
スカイは集まったメンツを見渡す。ここにいる女子の顔ぶれを考えると、割と現実味を帯びている。
「ははーん、ヤキモチ? 可愛いね。大丈夫、スカイに振られてもレベッカは私が娶ってあげる」
「私に百合趣味はないんだけど」
さっそく噛みつくレベッカと、涼しい顔で挑発を楽しむアリス。
この空気、どっちかというと「スクラップブック探し」より修羅場回避のほうが難易度高い気がしてくる。
「とりあえず、私ら4人とスカイ。レベッカとエリザベスのコンビで」
「待てや」
レベッカの声が低く響く。
「そのバランスおかしいでしょうが! 」
「むしろ華やかで良いじゃん?」
「よくないわ!」
姦しい二人を見ながらスカイは心の中でため息を一つ。
――スクラップブック探すだけだよ? なのに、何でハーレムラブコメの山場みたいになってんの? いや、この小説、一応ハーレムものだけどね?
「とりあえず、くじで決めましょうか」
口を開いたのは、エリザベスだった。
冷静で的確な声。……ああ、こういう時、参謀役がいるのはありがたい。スカイは心底そう思った。
「……ああ、ただし」
彼女はさらりと恐ろしいことを付け足した。
「隊長と二人一組で行動すると、隊長の貞操が危なそうなので――四人と三人で二手に分かれましょう」
「おお、流石副生徒会長……! 細かい配慮まで出来る!」
スカイは思わず拝みそうになる。
だが、次に出てきた言葉が彼の全身を凍らせた。
「ただし、全員が協働して、3Pもしくは4Pコースになった場合、隊長は諦めて覚悟を決めてください」
「怖いよーーーっ!?」
ネクロディアがスカイの陰から顔を出して、ケタケタ笑う。
「スカイ君、中学生で父親になるのは色々と大変だからね。ちゃんと避妊はするんだよ?」
「お前は黙ってろや蛙神!」
――すったもんだの末、くじ引きの末に決まった編成は、こうだ。
スカイ(+ネクロディア)、エレナ、マルタ、フローラ。
アリス、エリザベス、レベッカ。
「僕、死亡フラグの塊チームに放り込まれたんですけど」
エレナは政治思想こじらせガチ恋勢、マルタはボディタッチ上等の女スナイパー、フローラは僕のガチ恋写真家。
――……いや、待って。これ本当に大丈夫なの?
「じゃ、決まりだね!」
アリスが悪戯っぽく笑いながら、スカイを指差した。
「そっちは爆弾処理班ね。スカイ、死なないでね?」
「笑いごとじゃないよ!?」
「結局、ヤンデレ組に放り込まれてる……」
レベッカがボソリと言う。リーダー格のアリスがいない分、むしろどう転ぶか分からなくなった。チーム編成リセマラしたら更に結果が悪くなったでござるの巻。
「さっさと見つけよう。………ところで隊長。王政復古に興味は無い? 今の立憲君主制って衆愚政治だと思うの」
早速そんな事を言い出すエレナ。
「やめてくれよ政治の話は。今日日、色々面倒くさいんだ……。あー、もう初っ端からこれだよ。先が思いやられるなぁ」
こうして、スカイのファンブック、もといスクラップブック捜索作戦が始まった。




