5、人徳
「最後に見たのは、昼休み。図書室でスカイ様の写真を整理していたのが最後です」
「図書室ね……そういえば昼休みには僕もいたな」
マリーに話があって彼も、その時は図書室にいたはずだ。……明らかに怪しい奴はいなかったと思うが……。
「途中、アリスから呼び出されて、一時的に席を立ったんですが……そのまま机の上に置いてて。……用を済ませて帰ってきたら無くなっていて」
「アリスに……?」
スカイは、隣で話を聞いていた彼女を見る。
「ああ……5時限目、体育だったじゃん? 体操着忘れちゃってさ。借りれないかと思って。私が原因の一つか……悪い事したね……」
「どうもアリスはドジな所がある」
最近は忘れられているドジっ子設定を思い出しつつ、スカイは再びフローラに視線を向けた。
「無意識に落としたわけでは無いと……。席を立ったのは何分くらい?」
「10分くらいだったと思います」
「監視カメラって、うちの学校にあったっけ?」
スカイの問いにエリザベスは首を横に振る。
「生徒達のプライバシーの尊重という事で……裏の理由は予算不足で、うちの学校には監視カメラは校門と入り口くらいにしかついてません」
「……生々しい理由だなぁ。もしかしたら何か映ってるかと思ったんだけど」
とはいえ、無いものに文句を言っても仕方ない。
「本の特徴は?」
レベッカの言葉にフローラは、特徴を挙げていく。
「結構しっかり製本された本だよ。一見、普通の大判本にも見えるかも。色は茶。背と表紙には手書きで『記録』って書いてある」
「そんなの持ち歩いてたり、落ちてたら、結構目立ちそうだけどね」
だが、まさかひとりでに消えたという事はあるまい。スカイは少し考える。……盗難か、落とし物か。
「……とりあえず、手分けして探そうか。図書室を重点的にしつつ、校内も」
「それなら援軍を呼ぼうか」
「援軍?」
スカイの声に、アリスはニヤリと笑みを浮かべた。
* * *
「というわけで、来たよ」
「フローラのスクラップブックがねぇ……どこかに落としたんじゃないの?」
アリスに呼ばれて生徒会室に来たのは女子生徒二人。
1人はエレナ・ハインド。スカイのクラスメートの1人で……彼に惚れているらしい子の1人。それと、少し……いや、かなり政治思想が偏っていて、国の選挙の時期が近くなると、ちょっとめんどくさくなる。
もう1人はマルタ・ロングボウ。高等部2年のスカイ達の先輩で、射撃部のエース。そして……やっぱり彼に惚れているらしい。最近はスランプらしくて色々相談に乗っているが、なにかにつけてボディタッチをしてくる。この前はナチュラルに胸を押し付けられた。
「……」
レベッカが渋い顔をしている。彼女達がスカイに気がある事は彼女も感づいている。警戒心がMAXになっていそうだった。
「よし、スカイの非公式ファンクラブ幹部、揃ったね」
対してアリスはにやにやとしつつ、スカイに視線を向けてくる。
「という訳でスカイ。ここに揃った4人があんたの非公式ファンクラブの幹部クラスだよ。以後お見知りおきを」
「お見知りおきも何も、全員と面識あるけど……」
「改めて全員で揃うのは初めてでしょ? なかなか壮観な光景だと思うけどね。スカイに惚れてる子ばっかり一堂に会するのは」
「……ハーレムってか? 柄じゃないよ」
「ふふ……このファンクラブに所属してる子、結構多いからね? ユリシアにキャサリンにリネアに……それだけ人徳があるんだよ。スカイ」
生徒会長としてそれは喜ぶべきなんだろうが……レベッカの視線が痛かった。瞳にハイライトは映っていない。
「この雌鰐め……夜這い失敗した直後にめっちゃ煽ってくるじゃん」
「怖い怖い怖い……」




