2、全部同じじゃないですか〜!?
第666特別大隊。大休止中。
アリス・アリゲーターは無数に並んだ銃器の中から、一丁の古びたアサルトライフルを手に取り、横に座ったリサ・ハボックへと差し出した。
「今日はリサに、AK-47アサルトライフル一家の見分け方を教えてやろう」
「はい、師匠!」
リサは元気よく返事をする。まだ十三歳、強制動員された農民の娘だが、師匠であるアリスの前では完全に弟子モードである。
アリスは没落しているとはいえ、男爵令嬢。しかし、物覚えが良く教え甲斐のある農民出身者のリサを弟子扱いして可愛がっている。
「これ、大隊の皆が主に使ってる小銃ですよね?」
「そうだ。特殊兵科を除けば、大隊員の武器はほとんどがこのカラシニコフかUZI。だが」
アリスは銃身を軽く叩く。
「同じカラシニコフでも製造元や製造年で全然違う。素人が見たら全部一緒に見えるかもしれんが、実際にはかなり当たり外れが激しいんだ。頑丈でクリーニング無しでも動く……そんなのは純正品だけの話だ」
「はぁ……」
リサはやや呆けた顔で頷く。
「まずはこれだ。正真正銘、ソ連製の純正AK-47。質実剛健、世界中で使われてる。世界最高で世界最悪の大量破壊兵器。反動がきつくてフルオートだとまともに当たらないが、セミオートなら命中率も悪くない……だが」
アリスはわざと声を低くした。
「ロシアが隣国に戦争を仕掛けて、世界から総スカンを食らって以来、あの国は今はセルフ鎖国状態。純正品はレア物になりつつある。壊すなよ? 見つけたら命がけで整備するんだ」
「おお……純正って響きがなんかかっこいいですね!」
「次はこれだ」
アリスは別の銃を取り出した。
「56式突撃銃。中国製のマイナーチェンジ版だ。軍部が供給ストップした純正品の代わりに大量に買ったんだが……まあ、価格は安い、精度は甘い、壊れやすいの三拍子。良くも悪くも中華クオリティだな。大隊のカラシニコフのうち、半分はこれだ」
「えぇ……廉価版ですか」
「だが、まだ弾が出て銃として使えるだけマシだ。ここからが真のハズレ枠だ」
アリスが持ち上げたのは、どこか歪な外装の銃だった。
「ブラックバニアの工廠でライセンス生産したRB-777。通称『トリプルセブン』。精度は56式以下、弾が真っすぐ飛ばない。撃った弾がなぜか右上に逸れていく呪いの装備。トリプルセブンなんて名前のくせに、こんなのを渡された奴は間違いなくアンラッキーガールだ」
「全部同じに見えるんですけど~」
リサが困った顔をすると、横から隣で話を聞いていたマルタ・ロングボウが、苦笑しつつ口を挟んだ。
「全然違うぞ。違いの分かる女になるんだ」
「そういうもんだ」
アリスは続ける。
「これがアメリカから流れてきたカラシニコフ。一連の中東戦争で鹵獲されたやつの成れの果てだよ。ジャンク品だらけだが、たまに純正の美品が混ざってるから油断できん」
リサの口が少し開いたまま固まる。
「そしてこれが、ソマリアやリビアなどの紛争地帯の町工場でおっさん達が自作したAK- 47(?)だ。ぶっちゃけ暴発しないのが奇跡みたいな代物」
「(白目)」
リサは小さく呻いた。
「さらにこれだ。AK-74。うちだとイーグル第5が使ってる。悪い銃じゃない。だが、弾薬の規格がAK-47と互換性がない。だから整備する時は絶対に取り違えるなよ? シルヴィアに殺されるぞ」
「……」
「そしてこいつがスカイの愛銃AKS-74U。AK-74のマイナーチェンジ。弾丸は74のを使う。だが、それ以上にこいつはブラッディ・ダラで死んだ敵の少女兵が実際に抱えていたいわく付きの品だ。嘘か真か、夜な夜な、銃からすすり泣く声が聞こえるなんて噂もある」
リサは無言で遠い目をした。
アリスは笑って肩をすくめる。
「とりあえず簡単な見分け方を覚えよう。フル・セミオートの切り替えレバーの刻印で見分ける。キリル文字なら純正AK-47。漢字なら56式。ブラックバニア語ならRB777。何も書いてなきゃ町工場おっさん製だ。74はマガジンとマズルブレーキが47のやつとかなり違いがある。クリンコフは外見にかなり差異があるし、そもそも666では使ってるのがスカイだけだ」
「あ、意外と分かりやすいかも」
リサは少し安心した様子で頷いた。
「まあ、細かい違いは色々あるけど、それはおいおい」
その時、背後からテレサ・トーネードが割り込んできた。
「そうだな……こうしよう! 大隊員の武器を全部AK-47からM-16に置き換えれば良い!」
場が凍る。アリスの目がカッと見開かれた。
「おい待て、M-16? 本気か?!」
「そう。こっちの方が精密射撃できるし、アサルトライフルとしても優秀。なによりスタイリッシュだ」
「ふざけんな! あれは整備がめんどくさいんだよ! AK-47の二倍時間がかかる! 大隊全員分なんか面倒見きれん! だいたいあんただけだろ、M-16使ってるの! このゴルゴ気取り!」
アリスが指差すと、テレサはクールな表情で言い返した。
「私は『一人の軍隊』だ……」
その顔は、どこからどう見ても「あの見覚えのある濃い作画」だった。
リサは口を押さえて吹き出しそうになる。マルタは呆れ顔。アリスは頭を抱えた。
「はぁ……これだから変人ばっかりの大隊は……!」




