EXシナリオ P世界線×W世界線×H世界線 3、やべー奴
崩れた瓦礫と静寂の廃墟の中で、Pのスカイと『もうひとりの僕』であるWのスカイは、引き続き並んで腰を下ろして話をしている。
「俺の母は軍学校を首席で卒業したエリートでな。馬鹿親父に弄ばれて、捨てられて、落ちぶれて……でも軍隊と戦場への未練タラタラで。寝物語代わりに、頼んでも無いのに縦深戦術や電撃戦についてよく語ってたな……」
「……はは。うちの母も似たようなもん。こっちは結婚をきっかけに円満退役だけど、それでも未練タラタラだからしょうがないな、あの人は……。いい歳して「安心しろ息子娘、私はロンメルの再来だ」が口癖でさ」
お互いに身の上話をしつつも、Pのスカイには少し、心に引っかかるものがあった。
そんな彼の顔を見て、Wのスカイがぽつりと口を開く。
「……なんとなく、浮かない顔をしているな。何かあったか?」
「……いや、ちょっと幼馴染の子とね」
Pのスカイは曖昧に笑ってごまかしたが、頭に浮かんだのは、――夜這いを断った、先ほどのレベッカの顔。
「……幼馴染、って、レベッカか? レベッカ・シューティングスター?」
「もちろん」
Wのスカイの表情がわずかに険しくなる。
「……何があった? あいつを泣かせたなら、もう一人の俺といえど、鉄拳制裁してやるが」
Pのスカイは観念して、正直に話した。
カクカクシカジカ、夜這いを断ったこと、彼女の様子、自分の迷い。
「…………なるほど。そっちのレベッカも、随分俺の事が好きなんだな」
Wのスカイは溜め息交じりにそう言った。
「……断って良かったのかなって、ちょっと思ってる」
「…………まあ、良かったんじゃないか。そういうのも」
彼は、少し遠くを見ながら言った。
「俺は……ダメだ。あいつとはもう、そういう関係になってる。悪いが、恋愛の駆け引き云々のアドバイスは……出来ないな」
「……本当かい?」
「ああ。……そのせいで、泣かせてばかりいる」
「……何やったんだい?」
「八股」
「えぇ……」
思わず引いた。引かざるを得なかった。
「いや、なんか、マルタと浮気して以降、こう……なし崩し的に」
「しかも初めての浮気相手がマルタ先輩って……。鉄拳制裁されるべきはアンタだよ」
マルタ・ロングボウ。『Pの世界』の彼女は射撃部のエースとして知られているが、最近はスランプ気味で、Pのスカイがよく相談に乗っている。
その際、やたらとボディタッチをしてくるが……もしかして、『そういう事』なのだろうか……。
とはいえ、浮気は褒められたことではない。Pのスカイが苦言を言った、その時だった。
ズンッ、と重低音が廃墟に響き渡る。
「いや、Pの世界のスカイよ。お前は初心過ぎる! そして、Wの世界のスカイ。お主は手ぬるい!」
「え、誰?」
振り向いた先には――半裸で軍服のズボンだけを履き、王冠とマントを纏った『スカイ』がいた。
そして、なぜか頭のアホ毛は超長くなっていて、まさに三国無◯の呂布の様だった。
「……いつの間に?」
「神様仏様ネクロディア様、どうかこいつが別の世界線の僕じゃありませんように……」
Pの世界のスカイの祈りは届かない。
「我はR18ハーレム世界線スカイ! H(harem、H(直球))世界線のスカイ・キャリアベースだ!!」
彼は堂々と胸を張って宣言した。
「そしてキャリアベース朝・新ブラックバニア帝国初代皇帝なり! Wの世界のスカイよ、なぜ八人なんて中途半端な数字で止める? 男なら百人全員孕ませんかい!!」
「やっぱり僕だった~~~?!」
Pのスカイは叫ぶ。
「しかもめちゃくちゃヤバいルートの奴だった~~~!? 顔と声とアホ毛で分かってたけど! てか、アホ毛長っ!!」




