EXシナリオ P世界線×W世界線×H世界線 1、ファーストコンタクト
P世界線。
レベッカに夜這い未遂をされ、説得して帰したスカイは、ベッドの上でうつらうつらしていた。
……先ほどまで、新たに彼の中で居候する事になった自称邪神のネクロディアに、しつこく話かけられて、結構な疲労がたまっている。
1000年ごしの復活でテンションが上がっているのは分かるが、少しは自重して欲しい。こちとら健全な美少女(♂)学生なのだ。夜更かしは身体に悪いというのに。
そんなこんなで、彼は眠りに落ちていく。
――そして、気づいた時には夢の中にいた。
***
「明晰夢ってやつかな……? 初めて見た」
スカイは自分が今、夢の中にいる事が分かっていた。身体は自由に動くし、頭も冴えている。
場所は学園のあるハマン市、ダラ通り。毎日通る馴染みのある道。目をつぶっていても歩けるほどだ。
だが、ダラ通りは、いつもの狭いが活気のある商店街ではなく、一面の廃虚になっていた。いつも歩いている場所だというのに、まるでそこが血塗られた気味が悪い場所に感じる。学園もない。
「……」
彼はなんとなく不安になりながらも、廃虚の通りを歩く。
「よく知った場所なのに、初めて来る様な感覚だ……」
不思議な感覚に陥っていると、視線の先に1人の人間がいた。妙な事に、その人は軍人の様で軍服を着て、手には小銃を持っている。
本来、慎重に行動すべきだろうが、頭ではどうせ、これは夢だと分かっている。スカイは躊躇いなく彼に向けて手を振った。
すると向こうもこちらに気がついたのか、手を振り返してきた。悪意や敵意は感じない。スカイは彼に向けて足を進めた。
「……あれは?」
ある程度近づいた所で、彼は驚愕した。その人物は、スカイ自身と同じ姿をしていたから。白いロン毛と頭頂部のアホ毛は見間違うはずもない。
驚愕と困惑はむこうも同じだったのか、彼も若干警戒した様な顔で、足を進めてきた。
***
「……というと、あなたはブラックバニアが内戦状態に陥った世界線の僕、って事ですか?」
「そういうお前は、この終わった国が、まだまともな状態の世界線の俺、って事か…………ま、話は大体分かったよ。人々の選択次第で『後世の人間の頭のまともさ』まで変わるなんて、歴史ってのは残酷なもんだなぁ」
「まとも……かな? こっちだって社会問題は色々あるよ?」
「まともさ。少なくとも、朝、学校行ったら突然軍の徴兵担当が来て、クラス丸ごと軍に攫って行ったりしない」
廃虚の軒先に、同じ顔のアホ毛の男の娘が並んで座っているのは中々シュールな光景だ。
言葉は普通に通じた。いくつか伝わらないスラングとかはあったが、言語自体は彼もブラックバニア公用語であるクリサティ語。森と山岳部だらけのこの国で、音をよく通すために発達した、独特の濁音が強い発音はどちらの世界でも、そこまで変わらない様だった(本作では便宜上、日本語に翻訳されているが、彼らが普段使っているのはこのクリサティ語である。イメージ的にはグロンギ語に酷似)。
それで少し話をして分かったのは、彼もまごうことなくスカイ自身という事。そして、この世界の彼が想像以上に過酷な命運を背負わされているという事。
邪神と融合させられ、1000人の女学生部隊を率いて地獄の内戦を戦い抜いた事。1年で彼女達はたったの100人にまで減った事。更にその過程で20000人以上の人を殺めた事……。
「……まったく、あのクソ邪神め、なーにが「君ぃ、暇つぶしに、幸せな世界線の自分と会わせてあげるよぉ」。だよ。わざわざブラッディ・ダラなんて舞台まで用意しやがって……」
「クソ邪神……ネクロディアの事?」
「……知っているのか?」
「……いやね。ソフトボール部のヴィクトリアがカキーンと打った球がパキーンと学校裏の、彼女を祀っていた祠に直撃して、なんやかんやあって取り憑かれたの」
「…………すげーな、そっちの世界。色々と」
もう1人の「スカイ」はP世界線のスカイを不思議なものを見る様な目で見つめている。




