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2、作戦会議2

「作戦は、奇襲でいきます。いつも通りの一撃離脱。攻撃開始は0300。まず、ヴァルチャー隊が先行して敵の指揮官、通信兵、見張りを排除。その直後、イーグル、ウッドペッカー、コーモラント第2、第3小隊の各隊が一斉突入」


  エリザベスの声が淡々と響く。


「イーグル隊とウッドペッカー隊は敵守備隊の排除。コーモラント第2小隊は通信塔の爆破。第3小隊は倉庫の鍵の解除を。グース隊は支援砲撃。スワロー隊は補給車に極限まで物資を積載して、敵の増援が来る前に撤収します」


 オウル第3小隊が持ち帰った情報から書き起こした集積地の地図に、一同の目が集まる。


  「オウル隊は先行偵察と、作戦時の遠距離支援もお願いします。ペリカン隊は前線での応急処置と……最悪の場合、遺体の回収も」


  このあたりの役割分担はスムーズに決まっていく。 奇襲作戦ではいつものパターンだ。 反政府軍の補給隊や補給基地を襲撃して逃げる、というゲリラ戦法はこの大隊の十八番だ。


 戦況悪化に伴い、何故か正面攻撃や撤退戦に放り込まれる事が多くなり、この大隊の本来の強みを活かせず、最近はスカイも隊員達も不満気味だったのである。


 とはいえ、今回は総勢たった100人の寄せ集め精鋭で、これをこなさなければならない。


「敵を焼き尽くして差し上げますわ! 腕が鳴ります!」


  自信満々に笑うのは、イーグル隊中隊長、オリヴィア・ランサー。王都出身の軍事貴族の娘、15歳。緑髪をツーサイドアップにして、銀細工を思わせる銀色の瞳と、優雅な立ち振る舞いに反して、持ち武器は火炎放射器というギャップの塊。


「……オリヴィア、間違っても物資を燃やすなよ?」


「もし燃やしたら……ご主人様がお仕置きしてくれますか?♡」


「ははは、そのときは火あぶりにしてやるよ」


「はうぅっ! ご主人様に身も心も溶かされるなら、このオリヴィア、喜んで火刑に処されますともぉぉ……!」


「……だめだこりゃ」


  なお、彼女はスカイのことを『ご主人様』と呼ぶ、生粋のドMである。 最初は彼のことを『貧民王子』と見下していたはずなのに、気づけば懐かれていた。


  スカイの誕生日には、「この卑しい私めにお使いくださいまし!」と、鞭と縄と……その他、とてもとてもここには書けないような道具を大量に送りつけてきたこともある。まあ、この隊で変なのは彼女だけでは無いので、浮くどころか、むしろ666大隊では馴染んでいるが。


 そのくせ、火炎放射器の扱いは一流で、幾つもの陣地やトーチカを熱消毒してきた。ついたあだ名は「ファイアフライ」「トーチカバスター」。


「コーモラントは爆破担当か……うちの工兵隊を連れていけば、なんとかなるでしょう」


  そう呟いたのは、工兵部隊コーモラント隊の隊長、アリス・アリゲーター。15歳。 進路希望書と志願兵希望書を間違えて提出し、こんなところまで連れてこられた気の毒なヤンデレ娘。もっとも、普通に進路希望を出したとて、遅かれ早かれ工学系学生は使えると徴兵されてはいただろうが。


 ヤンデレ、天才整備士、そしてスカイの愛人筆頭(正室公認)という属性三重苦を背負いながら、今日に限っては妙に冷静だった。


  ……昨夜の号泣タイムで、スカイにそっと抱きついてきたのが効いたのか、どこか満足げですらある。


 ちなみに、666大隊の補給車――本来なら政府軍の正式採用補給車であるはずのそれも、コーモラント隊の手によってミニ四駆のノリで魔改造されている。


  もはやシルエット以外に原型はなく、現在は『アーマード補給車』と呼ばれる装甲車紛いの物体と化している。 実際、足回りと防御性能は異常に高く、敵弾を浴びても大抵走り抜けるため、実質これも戦力としてカウントしていいだろう。


 実際、王都陥落以降は、地面状況の悪い獣道めいた道も容易に踏破してきたのだ。


 元々は、王国政府軍が採用していた中古の日本製の民間向けトラックだった。


 本来なら日本車らしく整備が容易で、頑丈で、積載量も多い、前線の補給任務をこなす優等生だった。本来なら民間向けで軍用ではないのだが、それは御愛嬌。


 ……だったのだが。 この車両が、あのコーモラント隊の手に渡ったのが運の尽き(あるいは始まり)だった。


  アリス「だってそのままだと、面白くないじゃ~ん!」

 エレナ「走るだけじゃつまらないから、ちょっと火器管制システムと20mm砲も積んじゃうぞ☆」

 フローラ「ついでに、撃破したテクニカルから引っ剥がしたパーツも使おう! もったいないし!」

 マルタ「ついでに障害物破壊用に衝角もつけて……」


  ……などと、ノリと勢いと技術力に任せて、純正パーツどころか、市販パーツ、ジャンク、敵軍の鹵獲品までかき集めた挙げ句、フレーム以外ほぼ別物にされてしまった。


 車体には追加装甲、サスペンションは強化済み、なぜか前部に衝角があり、排気管は横に飛び出し、運転席の天板からは車内から撃てるリモコン20mm機関砲が角の様についている。


「補給車ってなんだっけ……?」


 と、誰もが思ったが、使い勝手は異常に良い。 実質、『補給もできる装甲車』として、いまや666大隊の前線支援に欠かせない存在になっていた。

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