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「今日はオナニーホームラン!」

こんなんに時間かけんの勿体なかったと後悔した

「今日はオナニーホームランの日だ!!!!」

5才くらいだろうか、男の子が母親と手を繋ぎ可愛らしい声でそう言った。2人はまさに絵に描いたような幸せな笑みを浮かべ帰路に向かっていったのだが。

すれ違いざまに「オナニーホームラン楽しみだね!」という母親の言葉が頭から離れなかった。一度歩みを止め、私はその言葉を何度も脳内で復唱した。(オナニーホームラン…オナニーホームラン…オナニーホームラン…オナニーホームラン…オナニーホームラン…オナニーホームラン…オナニーホームラン…オナニーホームラン…)

…やはりおかしい、いや冷静に考えておかしい。オナニーホームラン????なんなんだそれは???

いや、分かってる。昨年ホームラン王をとった高飛車選手の代名詞とも言えるルーティンの名前だ。そうだそうだ、そうなんだ。そう自分に言い聞かせるがやはり引っかかる。夕焼けに染まる下町で私は再び歩き始めた。

 高飛車選手は言わずもがな世界一有名で人気のある野球選手である。保育園の頃から野球好きの父親のもと英才教育を受け、小学生時代から既に大手プロチームのスカウトマンに目をつけられていたそうだ。中学一年でベンチ入りし、名もなき弱小中学に日本一の証である優勝旗を持ち帰り、その後3年間その優勝旗は学校に飾られたという。また野球の強豪校である孕女産卵高校にスカウトされ、万馬県の甲子園優勝回数は他の都道府県に比べて3回も増えた。卒業後は人気プロチーム、巨根にドラフト1位指名で入り年俸は19億円、日本中を驚かせた。

 しかしそんな彼だが決して楽な道ではなかった。ある日の岡本コンドーム戦にて9回ウラ、スリーアウトマン塁、得点は1-4どう考えてもここで打たなければ入団以降初めての黒星になる試合だった、緊張が日本中に漂っていた。高飛車はとてつもないプレッシャーを感じていた、それは自分が打たなければ全国のファンから叩かれるとか全戦全勝のキャリアを失うからでもなかった。入団前から彼への人気は高かったがその倍以上に彼への否定的な意見は多かった。光が強ければ強いほど、影も濃く強くなる様に。彼のその圧倒的な才能は多くの選手生命を脅かし、野球の面白さが損なわれつつあったのだ。彼への否定的な目は日に日に強くなり、彼の友人や家族にすらむけられるほどだった。そんな時に訪れた絶好のチャンスはより一層彼への負のオーラを強大にし、今か今かと彼の敗北を期待していた。

ホームベースに立った彼はそのオーラに気圧されバットすら握れなかった。放心状態となった彼はその後のインタビューでこう語った。

「もう何も考えれなくなりましたね、鳴り止まない僕へのブーイング。もちろん前からもありましたがあの時は特別でした。僕、呪いとかって信じない方で、神頼みするなら素振りしとけって思ってるんですよ笑。」

「でもその時感じたんです。測りきれない膨大な負の声に呪いのようなものをね。」

「信じられないでしょ?笑。本当なんですよ、これ笑」

「でね、僕思ったんですよ、これ無理だっペ。」

「それでね、段々頭がぼーっとなってきてなんか全て嫌になってきて、このまま投球にぶつかって死のうかなって考えちゃって、死のうと思ったんですよ。」

「でもその時確かに聞こえたんですよ、無き祖母の声が。死んじゃダメだって。」

記者「その後ですよね、ズボン脱いだの」

「そうなんです笑、もう最後にヤケクソになってシコってやろうって思って、新人AV女優生まれて初めてのナマ中出し の内容思い出して射精しました。」

記者「砂糖潮ですよね?私も好きなんですよ、それ」

「あ、同担拒否っす」

突然世界中に放映された高飛車のオナニーは衝撃を与えたが誰もがその姿にくぎ付けとなった。ものの数十秒で果ててしまった彼の陰茎はプロ野球選手にしては似つかわしくない短小包茎であった。

「ちっさ」名も無きビール売り子がそう呟いた。

彼の陰茎が世界中に放送されて12分程たったころ各地で笑いが起き始めていた。

「なんだ、完璧人間かと思ったらこんなにちぃせえのかよ。」

「毎日高飛車の想像してディルドオナニーシてたのにこんなもんだったの…萎え」

「なんだ高飛車にもコンプレックスあったのか」

「自販機のボタンを2つ同時に押すと必ず左側の商品が出てくる」

徐々に笑いが起き始め、ものの数分で世界中は笑いに包まれた。そして渦になり彼への負のオーラはいつの間にか消滅していた。

結局その試合で彼の公式戦無敗伝説は終わってしまった。だがそんな事どうでもいいことは既にわかっているだろう。それからというもの全宇宙野球連合会は高飛車選手以外へのアーマードスーツ着用を認め、それからというもの野球に再び面白さが戻り彼への否定的な声は減っていき、それどころか寧ろ彼への声援がどんどん大きくなっていった。アーマードスーツ着用選手に対して遜色無いほどの活躍をしているからだ。そして未だに広がり続ける彼への声援は野球の文化が根付いていない国々にまで広がり、今やサッカーを超える超人気スポーツになった。

気づくといつの間にか帰宅しており書斎のパソコンをひらき、彼のWikipediaを読んでいた。

テレビをつけるとまさに今彼がホームベースに立ちお馴染み、オナニーポーズをしてシコシコと手を動かしていた。実況が湧く。投げられた球は気持ちのいい程の音を響かせ宙高く飛んでイキ、天の川へ消えていった。会場、いや世界中が湧く。

「でたー!!、オナニーホームランッ!!」

妻亡きリビングに実況の声が響く。

「オナニーホームラン、か…はッ笑…」

やはり何度きいてもおかしな言葉だ。私が学生の頃、妻とであった40年前の高二の夏。あの頃はまだオナニーという言葉は嫌悪される下品な言葉だった。

だが今ではどうだ、誰も彼もが口にして恥ずかしがらない、本来の意味は不健全な言葉なのだが。しかし今に始まった事では無い。クソや死ぬなどの言葉もその昔は口にするのも嫌悪された言葉だが今となっては子どもですら使う。改めて言葉のちから、そして高飛車という漢の凄さを身に染みて感じた。

やっとホームベースに戻って来てチームメイトにハイタッチをする彼の姿を見ながらまだ呟く、

オナニーホームランってね。


もう二度と書くかこんなもん

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