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自殺保安官  作者: とっとら
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第一話~人と死~

いつからだろうか、人の死を怖がるようになったのは…

警察。それは、人を守るという建前のなのか?

そう疑問が浮かんでくる。

2030年に自殺取締法が制定され自殺者を減らそうとする取り組みも増えた。

だが、一向に解決に向かわない…

そんな世の中が嫌いな僕には、この職業は天職だったのかもしれない。

「自殺保安官」それは警察の派生に過ぎない、だがこの世の中には重役。そんな重役を果たしている三人がいる…

「取締ってゆうのは死なれた後じゃこまるんだよな~」

そう弱音のような言葉を発した一人の青年が居る。

まるで生気を感じられない背中は一際目立つ。

彼は倉場(くらば) 悠樹(ゆうき)

まだ18歳の青年だ、それでおいて人の生死を目の当たりにすることを避けない。

「あの人…大丈夫か?仕事のことで思い詰めてるが…こっちはいじめでか…」

悠樹は自分が辛いことも隠し人々の辛さと向き合う、それはとうに人の耐えうる限界を越えていた。

「でも動かなきゃ…人が死ねば悲しむ人は比例じゃない」

これが彼の持論であり、自分を打ち付けるための鞭でもあった。

そんな限界であれ、力を振り絞り、泣きっ面を構えながらがっしりと容疑者の肩を掴んだ。

「悩みありますよね…吐いてください…楽になります」

途切れながらも芯から語りかけた努力むなしく

「ひぇ!あなたの方がよっぽどですよ」

などと怯えながらも軽くあしらわれてしまった。

そうこうしてるうちに一つの人影が背後を奪う、空高く上げた手のひらで勢いよく平手打ちを食らわされた。振り返ると、そこには黒く真っ直ぐな髪を腰まで下げた女性が立っていた。

「いっでぇ!何すんだよ魔女!」

「そんな風にアンタが弱気だから活を入れてやってんでしょ!」

そんな活力に溢れた女性もまた自殺保安官なのだ。久見田(くみた) 夏南(なつみ)、彼女もまた若くしてこの職に就いている。

「人を悲しませたくないなんていってるくせしてアンタが守られるような立場じゃね…」

軽い嫌味を言われ拗ね悠樹も続ける

「うるせぇな!そういう魔女だってさまともに聞き出せたことねーだろ」

そんな言い争いをしているが二人共々根本は強い正義感からきている

「ONE FOR ALL」その言葉だけで心のどこかが救われる。

そんな人々によってこの世に少しでも平和の兆しが浮かび上がるならと、そんな事を考えながら日々を過ごす。

「なぁ魔女…本当にこれを続けてて人助けなんて出来てんの?

どうしても僕は手応えがなくて…」

先程の勢いも幻へまた弱気に戻ってしまう。

「なに、また弱気?」

少し考えるようにして落ち着いて返す。

「そうね…こんなことしてても実感無いもんね…アタシだってやっても意味ないんじゃないかって思う時あるよ」

「でも人助けなんてそうゆうものだと思うの

助けてなんてSOS出せる人はほんの一部だけ…私達はそこだけじゃなくてその奥まで見てあげないといけない」

「これが私の答え」

夏南も声を落ち着かせ悠樹の眼をしっかりと見つめる。

「はぁ…魔女に見つめられるだけで根負けしちゃうんだよな~」

「男の自分が惨めに見えてくる」

少し安堵を混ぜたような声で返す。

「なんかアンタの弱音で疲れた、帰ろ」

なんだかんだで仲の良い二人である。

だが、解決するための糸口が掴めずにいる二人、今日は一時退散し本部に帰ることにした。

本部とはいえど警察のように表立って捜査し解決出来るような仕事じゃない、だから近所のマンションの一室を拠点として集団生活をしている。

本部に帰るとパソコンの前に金髪の少し背の高い男がどっしりと固定されているかの如く座っていた。

この男が自殺保安官の最後の一人、神永(かみなが) 将弥(しょうや)

彼は、主に情報屋としての活動をしている。そんな彼は人はいつ死ぬか分からないという不確定要素と戦う為に睡眠時間を五時間削りいざというときは、自分の全てを尽くす。

「おー!お帰りー誰か救えたか?」

「こっちは今ここのホームページ作ってる、ここに救助願いとかを入れてくれたら楽だと思ってね」

「後はポスターを貼る許可を役所にもらいにいかねーとな」

将弥はとにかく重労働であるが苦しい顔ひとつしない。それでいて笑顔でハッキリしている。

「お…おお」

悠樹は濁し宛てのない返事をする。

「やっと一人目かぁここまでくるのに半年か…長かったなー」

感慨深そうにうつむきながらよろこぶ将弥に向かって正す夏南。

「将弥、そいつの濁した答えは聞かなくていいの!

今回は悠樹が弱音吐いてるからまた誰も助けられなかった…ごめんね」

将弥は落ち着いた声色で二人をなだめる。

「大丈夫ですよ

まだこの職業は、なにすればいいかすら分からない難しい仕事ですから、準備段階だと思えば…

でも、救える命はできるだけ救っていきましょうね!」

三人をまとめ心のケアまで出来る将弥は二人には必要不可欠な存在。

二人は目を閉じ一息ついた。

すると、将弥は少し気難しい顔をして問う。

「そういえば、悠樹はなんでこの仕事を選んだのにそこまで弱気なんだ?」

「それ聞いちゃうか?そうだな…

人に俺の話をするのは初めてなんだが…こんな時だし話すか」

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