珈琲にミルク
冷蔵庫の中には
紙パックのカフェオレ
甘ったるくて
みじんも
珈琲の薫りなんて
しなかったそれが
好きだったあの頃
鳩時計の中の
白い小鳩が
甲高く鳴いて
宿題なんて
やる気もせずに
冷たいフローリングに
転がっていた
砂糖をいれなくなったのは
きっと
大人になったからで
ミルクをまだ
いれてしまうのは
あの頃の延長線上に
生きているから
鳩時計の小鳩は
いつの間にか
飛び立って
なにが変わったんだろうって
振り返る夏に
窓の外にのびる
光る青空は眩しくて
さぼった計算式が
浮かんでは消え
解き明かせないことばかり
ここに残っている
冷蔵庫の中の
柔い
オレンジの明かり
意味もなく開けては
空っぽを埋める
なにかを探していた
口寂しさも
人恋しさも
同じ夜に溶け合って
ただ その苦さを
薄めるために
それをつけ加えた
紙パックのカフェオレは
無糖の珈琲のペットボトルに変わり
牛乳は切らさず
その横に並べて
冷蔵庫を開ければ
お守りのように
今も
そこに置かれ続けている