花屋
三題噺もどき―さんじゅうきゅう。
短い短い…。
お題:百合・朝焼け・ぽつぽつ
真っ白な、凛と咲く百合の華が、朝焼けに紅く染まっていた。
私は、小さな街で、小さな花屋を営んでいる。
そんな私の朝は、花の手入れから始まる。
花の入荷などをすることもあるが、うちのような小さな花屋では、そこまで頻繁にはしない。
店のシャッターをあげ、何種類かを外に運ぶ。
それから、花の手入れをして、水をあげて、綺麗にしてあげる。
一通りの仕事を終え、外に出る。
朝焼けがほんの少し目に痛い。
顔をあげて、深呼吸をして、背伸びをして、気持ちを切り替えて。
「よし……!」
―今日も頑張ろう!
無意識にそんな言葉が漏れる。
さて―と、店に入ろうとしたとき、ぽつぽつと、白い百合の上に雫が落ちた。
「ん……?」
サァアァ―
小さな粒の雨が降ってきた。
(お天気雨―狐の嫁入りだったっけ)
真っ赤に染まる朝焼けに、小さな雨粒がキラキラと輝いて、花に落ちる雫もその存在を主張するように光っていた。
「キレイ……」
素直にそう思って、声に出てしまった。
小さな宝石が散りばめられていくようで。
「はよ、入らんと、濡れるよ!」
外を走っていく、近所のおばさんに言われ、とっさに身を引く。
(と言うか、だいぶずぶ濡れなんだけどね)
景色に惹かれ、見蕩れていたせいで、身体中びしょ濡れだった。
(早く、着替えないと。)
雨は、既に止み始めていた。