好きだと言ったら側にいられなくなるからずっと我慢してた
✦…ヒロイン視点
♠…ヒーロー視点
✦✦✦✦
「好き」
思わず出てしまった。
言うつもりなんて無かったのに。
ずっと友達のあなたと。
進む事も、壊す事もせず。
このまま。今の状態のいい感じのまま。
何も気にせず何も邪魔せず。
あぁ、ほら。
びっくりしてる。瞳が、揺れてる。
だから
「なーんてね、冗談よ」
誤魔化した。
震えてるのがバレないように流し込んだお茶は味が分からなかった。
相手も俯き、ホッとしている。
『無かった事になった』
残念。嘘。安心した?
ずっと友達でいた。
相手は私を好きではない。
他にいるみたい。
好きな人の話をすると、目が優しくなる。
うらやましい。
私ならいいのに。
相談されるだけ。悲しい。
♠♠♠♠
好きだと言われた。
ずっと、友達だった彼女から。
俺は彼女を好きだけど、彼女は俺の事何とも思ってない。
俺が『好きな人の事で相談がある』と言うと、『どうしたの?』て聞いてくる。
平気な顔で言えるのは何とも思ってないからだろう。
もし彼女から同じ事言われたら立ち直れなくなる自信しかない。
我ながら身勝手だ。
その話をする時、彼女は俺の目を見てくれる。
あぁ、好きだなぁ
だけど、何とも思ってないだろ…?
ほら、『冗談よ』って………。
一瞬浮かれたのに、一気に急降下した。
いつか、この想いを冗談でなく伝えられたら。
この居心地いい関係も終わるだろうか。
それは嫌だなと思うと、伝える事を躊躇ってしまう。
けれど、友達の関係から前に進みたくて、俺はずっともがき続けている。
✦✦✦✦
「婚約する事になったわ」
カップをソーサーに戻しながら、私は告げた。
告げられた彼は手に持ったカップを床に落とした。幸い柔らかい絨毯で割れず、飲み干したあとみたいだから被害は無かった。
チラリと見ると目を見開き呆けている。
「君を相手にしてくれる人がいた、とは、……ね…」
乾いた笑いを浮かべながら落としたカップに手を伸ばす。
「……いつ、会ったの」
床に転んだカップを持ったまま呟く。
「先週。相手のお宅にお邪魔したわ」
「じゃあ用事って!」
「ええ、お見合いですわ」
こともなげに言う。平常心を装わないと震えそうだ。
「……そうか…。はは、は……………そう……」
目の前の男が、なぜショックを受けた顔をしているのか分からなかった。
(私の事好きじゃないでしょう…?)
(君を相手にしてくれる人がいたとは、って、バカにされてる…?)
もやもやした気持ちのまま別れた。
♠♠♠♠
どうやって帰って来たか分からない。
気付けば自宅の部屋にいた。
『婚約することになったわ』
たった一言で打ちのめされる。
ずっと好きだった。
告白して断られたら今の関係が終わる気がして、言えなかった。
好きな人の相談とかただの空想だ。
側にいて話したかった。
言えないとか、ただの情けない男でしかないじゃないか。
言えないせいで、言わなかったせいで。
この先「好き」と言える可能性を潰してしまった。
バカか俺は。
何も言わなければ何も傷付かない。変わらない。
悪い方にいかないなら良い方にもいくわけがない。
自分を守って、惚れた女一人手に入れられないなんて。
…………まだ、間に合うだろうか?
いや、間に合う。
婚約しただけ、いや、まだしてないはず。
すぐに動かねばこの先ずっと後悔することになる。
間に合え、間に合え、間に合え。
動け、動け、動け。
未来は自分で選ぶんだ。
♠♠♠♠
「まさかあの時あなたが来るなんて思わなかったわ」
「絶対に後悔したくなかったからな」
「…でも、嬉しかった」
「お父上のびっくりした顔は忘れないよ」
あの後すぐに彼女の自宅に行った。
彼女の家族の前で告白して、オッケーを貰ってすぐ、
「お嬢様をください」と頭を下げた。
「絶対幸せにします」と懇願した。
「婚約破棄の慰謝料も払います」と、なりふり構っていられなかった。
ぽかんとしていた彼女の父親は、「これから婚約するところでした」と言った。
ギリギリ間に合った。
婚約予定の相手もいた。
こちらにも頭を下げた。
困った顔をして笑われたが、最終的には
「彼女を泣かせたらすぐにさらいに来るから」と脅された。
それから二人はどんな小さな事でも言葉を交わした。
すれ違いは何度もあって何度も話し合って折り合いをつけた。
そして今日。
「誓います」
「誓います」
晴れ渡る青空の下、二人は手を取り合い微笑んだ。
──病めるときも、健やかなるときも。
君との未来に希望を見る。