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元禄赤穂忠臣蔵

作者: 小田 優太郎

[キャスト]

・大石内蔵助(大石) ♂

播州赤穂藩筆頭家老。仕えていた主君の刃傷事件により浪人となり広島藩預かりとなる。のちに宿敵吉良上野介を討つ計画を立て、中心となって活動する。


・吉良上野介(吉良) ♂

幕府高家旗本。浅野内匠頭に千代田城松の廊下で斬られるも幸い一命を取り止める。地元三河では名君としても知られる。


・浪士1-4(浪士1-4) 不問

人数が不足している場合、兼任でも可。


・語り部(無印) 不問


[用語解説]

・元禄年間; 1688 - 1704 年の期間。将軍は5代目徳川綱吉。この時代に起こったこととして、松尾芭蕉が奥の細道の旅に出かけたり、捨て子禁止令が出るなど、今に通ずる文化や規範ができた時代でもある。

・千代田城; 江戸城(現在の皇居)

・赤穂藩; 現在の兵庫県赤穂市、相生市一帯を治めた藩

・山鹿流の陣太鼓; 物語に登場する架空の太鼓。「山鹿流」自体は兵法として存在する。




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時は元禄(げんろく)十五年の年の暮れ、雪がしんしんと降る寒い夜のことでございます。江戸は本所(ほんじょ)の料理屋の座敷に集まった四十七(しじゅうしち)人の男たち。どの顔もそれはそれは義に溢れておりました。


大石; 皆の者、よう集まってくれた。感謝する。


座の中央にどっかりと構えたこの男、名を大石内蔵助(おおいしくらのすけ)と申しまして、播州赤穂(ばんしゅうあこう)筆頭家老(ひっとうがろう)を務めておりましたお方でございます。


大石; あれから、もう一年となる。その間もかの男は高家(こうけ)という身分を保証されて、のうのうとのさばっておる。我らが主君の恨み、いかばかりになるか。


その前の年、大石らの主君、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)は千代田城に登城(とじょう)の折、松の廊下で吉良上野介(きらこうずけのすけ)に斬りかかったかどで切腹、浅野藩はお取り潰しの処分を受けたのでした。ですが、決して乱心から斬りかかったものではないと、大石をはじめ家臣一同重々承知しておりました。


大石; 殿はご切腹、藩はお取り潰しになり、仕えていた者は方々(ほうぼう)に散ってしもうた。


浪士1; が、しかし忘れられぬ主君から(たまわ)った身に余るご恩。


浪士2; そして、憎き吉良への復讐心。


そうです。彼らはこれから、吉良邸へ討ち入りを果たそうとしているのです。しかし、当然討ち入りはご法度(はっと)でございます故、死罪は免れません。しかし、彼らにとって死罪になることなど構いもしないのです。それほどまでに、ここに集まった浪士たちは恩義を感じていたのでございます。


大石; よいか、これが最後じゃ。ここでもし命がどうしても惜しい者は脱盟してよい。誰も(とが)めることはせぬ。みなの自由じゃ。


浪士3; いいえ、我々はきゃつに一矢報いる為、そして受けたご恩に報いる為にここに参上 (つかまつ)ったのであります。それに、心はもう決まっております。


浪士4; 我々は吉良を仇討ちし、その首を主君の墓前に供えること。その為であれば我らは命を惜しませぬ。


どの顔を見ても決意は固く、きりりと口を真一文に結んでおります。


大石; そうか、そうであるか。うむ、みなの協力、不肖(ふしょう)大石、心の底から感謝致す。ではこれより、吉良邸へ討ち入りいたす。


隊は大石を先頭に雪の中をしずしずと進んで行きます。誰一人口を利かず、ただまっすぐに前を向いて隊列を乱すことなく歩を進めて行きます。

二八蕎麦の屋台の角を曲がりますと、そこは憎き吉良の(やしき)。密偵の調査によって、昼間に京より下って来た公家の為に盛大な茶会を催したことがわかっております。

大石は隊をふたつにわけ、息子の主税(ちから)に裏門から攻めるように指示をしました。


山鹿流(やまがりゅう)の陣太鼓が一打ち二打ち三流れと江戸市中に鳴り響きますと、いよいよ討ち入りはじめの合図です。一斉に門を突き破ると雪崩のごとく流れ込みます。


大石; 吉良はどこじゃ!吉良はどこじゃ!


騒ぎに気がついた吉良邸の家来たちとすぐに刀を交えますがそこは赤穂の腕っ節の強いこと。たちどころに返り討ちにしてしまいます。

さて、肝心の吉良でありますが、寝所(しんじょ)からはすでに逃げ出しておりました。しかし、隊士の一人が夜具(やぐ)に手を入れますと、まだほんのりと暖かい。やつはまだ寝所を出たばかりなのでした。


浪士2; えぇい、どけ!吉良はどこじゃ!吉良を出さぬか!


吉良の家来たちを返り討ちにしながら、吉良を捜索する四十七士たち。吉良も息を殺して見つかるまいと物陰に隠れておりましたが、いよいよ運の尽き。台所の裏の物置に隠れていたところを雪の下に引きずり出されてまいりました。改めて見ますと、白小袖(しろこそで)の小柄な老人でございます。その老人を雪の降る庭に引きずり出すと、ぐるりと四十七士が囲みました。


浪士4; お主が吉良であるか


吉良; お侍様、何のことでございましょう。私は吉良なぞというものではございませぬ。私は茶会に参列していた客でございます。


浪士1; えぇい、しらを切るでないわ!その額傷、今は亡き主君浅野内匠頭様が付けたものであろう!


吉良; こ、これは今朝方へっついに頭をぶつけてついたものにございます


浪士3; まだしらを切るか!えぇい、背中を改める!


吉良; あぁっ......!


大石; うむ。これはまさに我らが浅野様があの松の廊下でつけた刀傷(かたなきず)じゃ。間違いない。どうじゃ、これでもまだしらを切るか!己も武士ならば、武士らしく、潔く認めぬか!


吉良; っ、ふは......ふはは...ふはははは.....いかにもワシが吉良である。


大石; 間違いはないな。


吉良; そうじゃ。


大石; 武士の情けじゃ。何か言い残すことはあるか。


吉良; 情けなぞ要らぬ、それより早う斬らぬか。寒くて敵わん。


大石; ぐぬぬ、おのれ、この期に及んでもなお謝罪の一言もないとは。なんと武士の恥さらしであることか。主君の恨みじゃ。その身をもって思い知るがよい。


大石はそういうと吉良の(まげ)をむんずと掴み、すぱんと首を()ねたのでした。

さて、その後見事に本懐(ほんかい)を遂げた四十七士は憎き吉良の首を持って、主君浅野内匠頭が眠る高輪泉岳寺へと向かいます。ようやく登って来た朝陽が彼らを照らしますと、どの顔も晴れ晴れとした面持ちで足取りも軽く、勇ましく江戸の市中を行進していきました。


大石; 我らが主君浅野様、憎き吉良上野介をお連れしました。


浅野内匠頭の墓前に首と共に供えるは、殿の遺品の小刀であります。大石はひらりとその身を抜きまして、一度、二度、三度とその首にあてがいます。


大石; これにて、仇討ちは終いじゃ。殿のご無念もこれをもって晴れたであろう。あとは、御沙汰を待つばかりじゃ。


数日後、お(かみ)は彼ら四十七士の切腹を命じました。本来であれば斬首が言い渡されるはずですが、武士の情けでもって切腹という処断になったとされております。

それから間を分かたず、彼ら四十七士はみな見事な切腹を遂げたのでした。



終劇

31st, Oct, 2020 執筆








※読んでいただき、また(ボイドラサーチからいらっしゃった方)演じていただきましてありがとうございます。


感想等頂けると今後の創作の励みになります。よろしくお願いいたします。

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