投擲武器
前回は弓矢の話でしたので、今回はそれ以外の投擲武器について考察します。
最も原始的な投擲武器は石ころ(飛礫)です。
我が国の戦国時代に三方原で武田軍が、家康陣営に石を投げつけて陣列を乱させたことがあります。実害よりも、精神的な苦痛を与えます。
その石ころを遠くへ、より強く飛ばす道具が紐状の投石器です。
スリングは構造は単純ですが扱いが難しく、狙って飛ばすには訓練が必要でしたが、大量生産に向いていた為、西洋では長く使われました。
聖書の人物、ダビデ王はこのスリングでゴリアテという大男を倒しています。
更にこのスリングを棹の先につけたスタッフ・スリングは扱いが簡単でしたので広く使われていました。
次に投げつける武器で著名な道具は、投げナイフですね。我が国では手裏剣です。投げ矢もこの範疇に入ります。
戦場では他に投げ槍が使われました。古代ローマの軍隊は敵前に迫ると槍を投げつけ、相手の盾に刺さるよう攻撃を行いました。投げ槍が刺さった盾は使い物になりませんので、陣列を乱した敵兵にローマ軍が優位な態勢で挑むことができたようです。
他には投げ斧もあります。
一風変わった武器には、インド北部で用いられたチャクラムがあります。
チャクラムは輪の外側に刃が付けられた投擲武器で、切ることを目的としています。
こうした投擲武器が古代から主要武器であったのは、陸上競技に砲丸投げ、槍投げ、円盤投げがあることからも明らかです。
更に時代が進んで火薬が発明されると、人類は爆発物を投擲武器にしました。
手榴弾が現代の投擲武器です。
我が国でも、サイダーの瓶にガソリンを詰めて投げつける火炎瓶を日露戦争で開発しました。
人類史上、最も使われた武器は、これら投擲武器と言っても過言ではありません。
こうした投擲武器を大きくしたのが、投石機や弩、砲門などの機械仕掛けの武具です。
投石機は岩石だけではなく、様々な物体を飛ばしました。汚物や爆薬などはマシで、時には死体まで飛ばした記録もあります。
投石機は近世まで用いられました。
弩、クロスボウは機械仕掛けで弦を引き、短い矢などを発射する武器です。弓矢よりも威力は勝っていましたが、速射性能に劣り、我が国では普及しませんでした。弓矢ほどに訓練の必要がなかったので、大勢を動員する社会では長く主要武器でした。
砲門は、弩の発展で火薬武器を飛ばす兵器が、火薬の力で砲弾を飛ばす兵器に変わり、現代では火薬の力で火薬武器を飛ばす兵器になっています。
銃器については別稿で考察します。




