7話 バチバチのGW-1
GWに入っても練習はあるが、人数は少なくサークルに入った当初のような活気は薄れていた。
理由はいくつかあって部員が帰省や旅行でいないこと。
そして何よりサークルの代表を含める主要メンバーが地方大会に行ってしまっていることがでかい。
閑散とした体育館では時の流れがゆっくりと過ぎていくように感じておのずとお喋りも多くなる。
よく話題に上がるのはサークル内対抗戦についてだ。サークルで順列をつけて上位になれば金銭面や練習面で優遇されるらしい。
特に先輩達が気にしているのはAチームとBチームは実力が拮抗していて今回の対抗戦では入れ替わるかもしれないという内容だ。
「今回は玉樹とニ歩、どっちのレグが勝つかな」
「やっぱ玉樹のレグでしょ」
「いや二歩のレグもかなりいい線いってると思いますよ」
「西山さんのレグはどうなんですか?」
会話に上がるのは毎回3年生の2人のどちらかで不思議に思い問いかけた。
「あぁ、西山さんのレグも悪くないがあの2レグがダントツなんだよ」
玉樹さんは体験会の時にローリングアタックを披露していた。二歩さんは3球目にそのアタックをブロックした人だ。
基本的に大会や合宿に参加する際は自費になってしまう。そのため、参加できるからといって全員が参加するわけではない。
金銭面がサポートされるということで上位を狙う人もいるが多くの人は手頃なイベントということで楽しむらしい。
サークル内対抗戦があるのはGW明けでもちろん1年生も参加することができる。
「あーすか君、調子はどうだい?」
当たり前の様に練習に参加しサーブを打っている飛鳥に媚びるように話しかける。
「なんだよ、今忙しいんだけど」
飛鳥はここ最近特に熱心に練習していて、その迫力は鬼気迫るものを感じさせる。
「サークル内対抗戦どうするのかなって思って」
「まだなんも決まってないよ」
「へぇ、それはそれは一緒に出ませんか? 飛鳥くんの天才的サーブを見せてほしいです」
徹底的に下からヨイショしてお願いする。そもそも実力的には飛鳥が上なんだけど……
なんだか呆れ顔でこっちを見てくるな、やっぱダメだったか。
「時々するその変なキャラキモいんだげど」
「えー、ひどっ」
「まぁ、いいよ別に」
「えっ、いいの!?」
「いいっていってるだろ、もう1人はどうすんの?」
「銀を誘おうと思ってるけど……」
「銀はキツくない」
俺も厳しいと思っている。レグを組むのに同学年でないといけないってことはない。即ち、上手な人は先輩からも声をかけられるということだ。
飛鳥もそうだろうなとダメ元で声をかけたため、まさかの返答がきて驚いてしまった。
§
ネットを挟み男が2人対面しているがその様相は全くの真逆だ。
1人は膝をつき肩で息をして滴る汗が床を濡らす。もう1人の男はそんな様子を見下ろしながら微笑を浮かべる。
「ハァハァ、ダメだったか……」
「別にいいよ、一緒にレグ組んでも」
「えっ、こんなにボコボコに負けたのにか」
「別に負けたらダメともいってないしね、必死にボールを追いかける姿が面白かったから」
「ハァハァ、なんだその理由は……まぁとりあえず良かった」
「よろしく、飛鳥君もよろしくね」
男は見下ろしていた男と握手をするとこちらにも手を差し伸べてきた。
「あぁ、よろしく」
これでレグが完成した。
アタッカーの将基、トサーの銀、そしてサーバーの俺。
「ひとつ聞いてもいい? 俺の気のせいだったら悪いんだけど、俺を走り回らせて楽しんでた?」
将基も俺と同じように前後左右に振られ体力を奪われてじっくりとやられた。
むしろ俺の時よりもボールに追いついていた分走らされた距離は相当なものだろう。
少し間を空けて今までで見た中で1番の笑顔で答える。
「少しだけね」
1番の笑顔とはいっても銀はそもそも笑わないから少し微笑んだ程度だったがその笑顔は悪魔的で少し身震いをしたものだ。
無事にレグを組めたのはいいがやる事は沢山ある。
基本戦術はもちろんのこと、サーブレシーブのカバー範囲やサーバーに投げるボールの合わせ、トサーとのアタックのバリエーションの確認など様々ある。カッコ良くアタックのバリエーションとか言ったけど現状は基本のシザースしか武器がないです。
なので話し合ってそこら辺も増やしていかないといけない。
何よりも最も重要なことが決まっていない。
「どうする?」
「将基がやればいいじゃん」
「僕も将基君で良いと思うけど」
「えっマジで……」
「誘ったの将基なんだし、別に良いでしょ」
「じゃあやろうかな」
というわけで、レグのキャプテンになりました。別にそんなに特別なことをする訳ではないけどね。
キャプテンも決まりレグで試合をしてあれやこれやと詰めているとあっという間に時間は過ぎていく。