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5話 セパタクローの練習-1

 ジリリリリリリー。

 講義の終了を告げるベルがなると体育館に人がポツポツと集まってくる。

 体験会から3週間、24人いた新入生は15人と数を減らしていた。新入生も先輩の顔を覚え練習にも慣れてきている。


 練習は週に4回、部活でもないサークルではこれでも多い方らしい。正月くらいしか休みのなかった高校の部活では考えられないことだ。


 時間になると体育館を軽く走り柔軟(お風呂上がりの柔軟のおかげでかなりましになりました)、体幹、筋トレの流れでアップが始まる。

 アップが終わると1人球蹴りを30分、目標は右足インサイド100回だが未だに達成してない。

 もう少しで達成なんだけどな。サッカー経験者は全員が達成している。


 時間がくると5人組を作り、円形になって玉蹴りをする。組には1人以上先輩が混じっている。

 隣では2人球蹴りと言って対面になって球蹴りをし合っているがこれは球蹴りがそれなりにできないと難しくボール拾いに奔走することになる。

 5人だと多少ボールが乱れても誰かが触れるし先輩もカバーしてくれる。


「カバーお願いします!!」

「オッケー!! よろしく」

 自分がカバーをする時もあればカバーをしてもらうこともある。お互いに声をかけてカバーをし合うのだが隣の組は様子が違うようだ。


「チッ、またかよ!!」

 イラつきを見せる声に怯える形で1人の女の子がボールを拾いにいく。

 そんな声を聞いてしまったら隣を意識してしまうのが普通だろう。聞き耳を立てていると再度罵声が飛ぶ。

「いい加減にしろよ。マジでなんもできねぇじゃねえか」

「すみません、すみません」

 女の子は謝りながら再びボールを拾いにいく。


「それは言い過ぎだろ」

 その組にいた飛鳥が呆れた顔でいきすぎた言動を制止する。

「お前だって思ってることだろ」

 男の名前は津田康介(つだこうすけ)、サッカー経験もあるということで新入生の中でも上位に入る程上手い。ただ、プライドが高く自分が一番上手いと思っている。

 津田の言い分は自分はこんなにもできるのにできない奴と一緒に練習するのは無駄だということらしい。

「サッカー経験があるから今は他よりもできるってだけだろ」

「それが重要だろ、そいつはスポーツ経験もないんだぞ、練習して他の奴に追いつけるとは思えないし足引っ張られるのはだりぃんだよ」


「まぁまぁ、お互いにそんなに熱くならずにね」

 慌ててその組に入っていた2年生が間に入るが、その声にはあまり力が入っていない。

 その2年生はお世辞にも上手とはいえない。既に津田や飛鳥は同程度の実力かもしれない。

 サークルということもあって練習は強制参加ではないし、そこまで厳しいというものでもない。やる気がなければ成長はしない。この2年生はそんな先輩なのだろう。

 たださすがに津田も先輩に対して暴言を吐くことはなくその場はなんとか収まった。

 その後も飛鳥と津田の間には溝ができ、火種となった女の子は終始泣きそうな顔を見せていた。



§



「大丈夫か?」

 不機嫌そうに汗を拭う飛鳥に声をかけると、大きな溜息をつく。

「まぁ、ああいう考え方の奴もいるだろ。高校のときもいたしな」

「思いの外、冷静なんだな」

「俺も少し思うところがあるからな。でも、努力をしてるのにそれを否定するのは気に入らない」

「確かに頑張ってるもんな」

 あの女の子は努力家だ。練習も真面目に取り組んでいるし、メモなんかもつけてるみたいだ。


 波乱の球蹴りから少しの休憩を挟むと最も好きなポジション練習がやってくる。

 各ポジションに分かれて練習をするのだが俺はもちろんアタッカーだ。

 銀はトサー、そして先程の波乱を起こした3人はサーバーを選択している。


 アタッカーの練習はコートに入ってアタックを打つというシンプルなものだ。

 1人一つボールを手にして列を作り順番が来たらコートに入っているトサーに下手でボールを投げる。

 トサーは一回レシーブしてからトスを上げ、アタッカーはそれを打つとボールを拾い列の最後尾へと並ぶ。

 トサーは時間ごとに交代していくので上手な人から下手な人、わざと変なトスをあげる人と様々なトスを打つことができる。

 一定時間が経過するとトサーはいなくなりトサーの位置にはボールを5球持った人が立つ。

 アタッカーが投げられたボールをアタックすると、すぐさま次のボールが投げられ連続で5回繰り返すと列に並び息を整える。

 これは中々にハードな練習だが、トサーに比べればマシだなと思う。


 トサーはアタッカーにトスを上げる以外の時間は基本動き続けている。

 エンドラインからダッシュしてネットの前にいる人が持つボールをタッチすると、そのボールが高い放物線を描きコートを超えるか越えないかのところへ投げられる。

 それを走って追いかけレシーブするとボールを投げた人の位置へトスを上げる。その位置から再びボールをタッチしにダッシュをしてトスを上げる。それの繰り返しだ。他のメニューも似たようなメニューで反復横跳びからダッシュをしてトスを上げたり、バンビージャンプをしてからトスを上げたりとかなり厳しいものになっている。

 そんな中、銀は息を切らしながら練習についていってるがいつもの無表情は崩れ、肩で息をして必死で酸素を肺に送り、痙攣しかけの足を叩いてほぐしている。


 最近分かったことだが、銀は同じサークルに藤和金(とうわきん)という3年生の兄を持つ。

 銀とは真逆の様な性格で派手な金髪に派手な服装、性格は明るくてサークル内のムードメーカー的な存在だ。プレイスタイルも真逆で銀はトスに徹する「静」なら兄は攻撃的でアタックも自ら行う「動」といったところ。


 兄の影響でサッカー部を引退してから数ヶ月セパタクローに触れていたらしく、銀に「コツとかあれば教えて欲しいんだけど」と尋ねた時に「うーん、努力かなぁ?」と答えたのは純粋に数ヶ月努力したからという意味らしい。

 さすがに言葉足らずすぎないかな。

 こっちが同じサークルに兄がいると知って驚いていた時も「兄貴だけど何?」みたいな顔しやがって、藤和さんが銀に絡んでなかったら一生気づかなかったよ。


 サーバーもキツそうな練習をしている。サーバー同士でボールを投げて打つのだが、順番ではないものは隅の方で体幹と柔軟をひたすらにしている。

 正直、どのポジションも結構きついと思う。

 俺は部活を経験しているためこの強度の練習でも問題ないが、運動をしてなかったものにはつらいだろうなぁ。

 飛鳥の隣で先程の女の子が顔を赤く染めぷるぷると震えながら肘を床につけ、足を伸ばし爪先立ちで背筋をピンッと伸ばしフロントブリッジの姿勢をキープしている。


 広谷歩未(ひろたにあゆみ)はスポーツ経験はないが吹奏楽部で体幹や筋トレはしていたらしく他の女子に比べ体力はあるが、球技を経験していないことからボールとの距離を把握するのに苦戦している。

 先程の一件があったのにも関わらず練習に参加できるのは根性がある証拠だ。

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