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23話 器用富豪

 本戦出場組とそれ以外のメンバーとでわだかまりを残したまま日は過ぎていき、学生大会本戦は開催された。

 大会は土日の2日間に渡り行われ学生一が決められるが、多くの人間はそれがどこの大学なのかが分かっていた。


 それは諦めであり、その大学と当たれば最悪だ。

 とはいっても、初日のリーグ戦ならまだ負けてもチャンスはある。

 4チームリーグで上位2チームがトーナメントへと進める。


 会場では各大学がアップを始め出した。

 もちろん、わだかまりを残しているとはいえ他のメンバーもサポートにはついてくれる。

 むしろそれは、奉仕的でそこにはわだかまりなどは感じさせない。

 元々、本戦出場組が大会前にナーバスになっていたところにそれ以外の一部のメンバーが衝突していただけで大半のメンバーは自分たちのサークルを応援するのは当然だと思っている。


 将基もアップを始めるが会場の雰囲気に震えていた。全国から選りすぐりの選手達が集まり一人一人がオーラを放っていて一回りも二回りも大きく見えて自分の存在がどれだけ矮小なものなのかを感じさせられる。


「おーい、お前大丈夫か? 震えてんじゃん」

 震える将基に飛鳥は何食わぬ顔で問いかける。


「これは武者震いだから、だってすげぇだろここにいる全員がトップレベルなんだぜ」


「まぁ、確かにな、当たって砕けるしかないよな」


 将基達のレグのリーグには全国的に名が知られる選手はおらず比較的楽なリーグだった。



§



「くそっ、あれが『器用富豪』のレグかよ」


「『器用富豪』よりもあのトサーのアタックもヤバイぞ、あんなのそこらのアタッカーよりも打てるじゃねぇかよ」


「確かに、俺のアタックよりも凄いかも……」


 男達が話している『器用富豪』とは玉樹のことで技の引き出しの多さからそう呼ばれている。

 普通はいろいろなことに手を出して形にはなっても、どれもが中途半端になることを器用貧乏というが、玉樹の凄いところはそれぞれの技のクオリティの高さにある。そこから器用貧乏をもじって器用富豪という二つ名がついている。


「オラァッ!!」

 渾身のサーブはトサーとサーバーの間の取りづらいコースへ飛んでいく。

 狙ったわけではない、実力では完全に負けていると分かった上でなんとか崩そうと全力で打ったサーブがたまたまいいコースへいったのだ。


 このサーブから反撃の狼煙を上げれると思ったがそんなに甘くはないといわんばかりに藤和金が素早い動きで移動して右足のインサイドでレシーブをして見せる。

 ボールはサーバーの少し後ろへ弾かれるがサーブの威力を考えると十分ナイスレシーブと言えるだろう。

 金はレシーブ後、すぐにボールの下へと潜り込みトスの態勢に入るが正面を向く余裕はなく、ネットに対して後ろ向きでトスを上げることになる。


 一般的にレシーブが乱れたときはアタックが打ちやすいように高いトスをネットから少し離れたところへ上げて、アタッカーは威力よりも安定を求める。

 男達は渾身のサーブは取られたもののすぐにアタックへの対応へと気持ちを切り替える。


 金のトスはブロックに構える男と真逆の位置へ高速低弾道で上げられた。

 玉樹はローリングの態勢に入るがブロックが間に合う気配はない。


 無情にもアタックはコートへと叩きつけられる。どれだけいいサーブを打ってもレシーブをされ、そこから繰り出される無数の攻撃になす術もない。


 唯一の救いはサーブレシーブでのミスが少ないとこだろうか。

 玉樹のレグのサーバーである大槻 角栄(おおつきかくえいはレシーブが安定していて、サーブも悪くない。どちらかというと攻めるサーブよりは安定したサーブを打つ。確かにレベルは高いのだが2人に比べるとパッとしない。

 しかし、それは当然のことで角栄はもともとサーバーではない。

 玉樹と金に説得をされてトサーからサーバーへとポジションを変更したのだ。


 そのため男達からしても角栄のサーブが脅威には思えなかった。

 ただ残念なことにサーブが取れるからといって点が取れるかというとそうではない。

 玉樹のブロックも避けるのが大変だが、それを超えたとしても金と角栄のレシーブが後ろで控えている。

 無数の手段による攻撃力が注目されるがそれらを支えるのは安定したレシーブにある。

 レシーブが安定しているからこそ攻撃にもバリエーションがつけれて、相手からは何がくるのか分からない恐怖がある。


 見せつけるは圧倒的な力の差。

 男達も地方予選を勝ち抜いてきた猛者のはずだが玉樹達の前には歯が立たなかった。


 難なく1試合目を勝利で収めた玉樹達は続く2、3試合目も勝利し、リーグを1位で通過を決めた。

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