表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

15話 合同練習-1

 合同練習が行われるのは二条大学、金曜日の夕方から日曜日の夜まで泊まりで行われる。

 参加大学は盤上大学と五井学院大学(いついがくいんだいがく)八重大学(やえだいがく)、これに主催である二条大学(にじょうだいがく)の4大学で合同練習は行われる。


 大学の講義を終えた将基は西山達に連れられ電車で二条大学へ向かう途中だった。

 一つ疑問に思ったのは何故か銀も同行しているということだ。

「なんで、銀がいるの?」

「うーん、よく分かんないけど、連れてこられた」

 銀は兄である金に半ば強引に連れてこられたようだ。

 西山さんも特に気にしてないようだし、向こうには連絡してるということだろうか。


 そんな疑問を浮かべていると気づけば二条大学に着いていた。

 体育館へ案内されるとそれは見事なほど立派な体育館だ。

 二条大学はスポーツに力を入れている大学で、広い体育館にジムまで完備されていてシャワーも使用できる。

 しかも、サークルや同好会ではなく日本でも数少ないセパタクロー部として活動をしているため、これらの施設を自由に使っていいらしい。


「3日間お世話になります。よろしくお願いします。それと予定より1人増えたのですが……」

 西山さんが二条大学の部長に挨拶をしていると横からハイテンションな男が現れた。

「大丈夫だって西山、話はつけてあるからさ」

「えぇ、その通りです。宗象から話は聞いているのでお気になさらずに」

 西山さんと二条大学の部長が頭を下げているのを横目に気にせずに盤上大学メンバーで固まっていたこちらに向かって歩いてきた。


「やぁ、金ちゃん!! 久しぶり、元気だった」

 藤和さんの肩を軽くたたき、藤和さんも笑顔で答える。

「元気ですよ。で、こっちが弟の銀です」

「初めまして、銀ちゃんかよろしくね」

 どうやらこの宗象さんという先輩が会ってみたいと銀を呼んだらしい。

 軽く挨拶を済ました宗象さんは準備があるからと小走りで走っていってしまった。

 なんというか台風みたいな人だな。


 この日は夕方からと練習時間も短かかったため、顔合わせを含めた軽い練習という位置づけらしい。

 軽くアップをしたら球蹴りをしてすぐに試合が始まった。

 試合といっても顔合わせの意味が大半で別大学の人と組んで2試合したらまた別の人と組む。

 自分と同じ大学の人とは組むことはなかった。


 初対面でいきなりレグを組むのはなかなか難しい。お互いのプレイスタイルを最低限話すと試合はすぐに始まる。

 シザースをメインにしていて速攻を時々入れてください。これが俺の自己紹介だった。

 ここにいる人間のレベルは高くそう伝えるだけで試合が成り立つ。

 俺が成長しているということもあったが、銀と苦労した速攻も面白いように決まり、トスが合わなくて困るということはなかった。

 それは宗象さんを除いて。


 宗象さんの上げるトスはネットを超えるトスやまるで矢のように一直線に飛んでくる速すぎるトス、さらには打てないといっているのにローリング側のトスを平然と上げてくる。

 見よう見まねで左上から落ちてくるボールを左足を軽く上げて、股関節を開き右足で振り抜く。

 左足から着地するスタンディングアタックを打ってみるが入らない。

 するとお手本かのように宗象さんは自分自身でトスを上げて、スタンディングアタックを見せてくれる。

 それはぎこちない俺に比べてスムーズに流れるように左足の振り上げから始まり、右足の踏み込み、それほどジャンプをしていないはずなのに右足が高い位置まで足が上がり、反対に頭は地面へと近づく、高速で振り抜かれた右足から放たれたアタックはオレのシザースよりも速いかもしれない。

 着地は同じく左足か、少し違いがあるとすればほぼ同時に両手でも着地をしている。

 それだけ上半身が地面に近かったということだ。

 こちらへ向かって「こういうことね」と呟くとそこからのトスは打って変わってシザース側へ打ちやすいトスが上がってくるようになった。


 宗象さんを観察していると他のレグでもそのアタッカーが苦手とするトスをわざと上げているようだった。

 そして失敗する姿をみて高笑いしている。しかし、それを注意する人間は誰もいない。

 知っているからだ彼が学生No.2トサーでそのトスはアタッカーの可能性を広げるためのトスだということを。

 そんな感じで金曜日は試合を回し続けて練習を終える。


 俺は仲良くなった同い年と席を共にしてご飯を食べていた。

 彼は八重大学の住江空(すみえそら)、ポジションはサーバーだ。

 空は1年にも関わらず情報通で色々な選手について知っているらしい。

 空曰く、この合同練習は凄く豪華だと興奮気味に語り出したので、この合同練習で全国的に注目を浴びている選手を教えてもらった。


 まずは二条大学4年、宗象総司(むなかたそうじ)、学生No.2トサーで『トリックスター』と呼ばれる。

 藤和金は彼のことを目標にしている。金の攻撃的なプレイスタイルも宗象の影響を受けている。


 五井学院大学3年、城倉健吾(じょうくらけんご)、アタッカーで『鉄壁』と呼ばれるブロックが特徴的。


 そして君の大学の篠宮玉樹(しのみやたまき)、アタッカーで器用貧乏の逆の『器用富豪』と呼ばれていて、その通りに全ての技において高いクオリティを誇る。

 それと藤和金(とうわきん)、トサーでありながら圧倒的な攻撃力を誇ることから『超攻撃型トサー』と呼ばれている。


 他にもすごい選手はいるけどさっき名前を出した人達は学生代表選手に選ばれてるほどの人達だ。

(玉樹さんに藤和さんが学生代表に選ばれているほどすごい人なんて知らなかった。そもそもそんなのがあるのを知らなかったが……)

 ちなみにうちの大学にも期待大の選手がいて、双子なんだ。


 そういえばいたなと思い出していた。確か、アタッカーとトサーだったな。

 明日はさっき教えてもらった人に注目してみよう。

「ありがとう」

「ぜんぜん大丈夫だよ、話すのが好きだから。じゃあまた明日ね」

 食堂で空と別れその日は寝床についた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ