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◆8 莉奈ちゃんとお料理した。(ハンバーグつくってみた)

 




 なんか怒涛の一日だった。

 たくさん人と話したからだろうか。オレのHPは確実に減っている。

 しかも男子だけでなく女子とも話してしまった。

 絶対うざいとかキモイとか言われると思ったのに、なんであんなに、フレンドリーなわけだ? こんなことあったか? 逆行前はなかったぞ、ずっとボッチだった。

 しかもオレ自身が結構べらべら喋ってるじゃねーか! 高校生相手に!! いやオレも今高校生なんだけど! ありえねえええ。恥ずかしい、穴を掘って埋まりたい!

 一人で両手で顔を覆って悶絶していると、人の気配がした。


「お兄ちゃん、頭いたいの?」


 莉奈ちゃん! そか、オカンは出勤したのか。

 さみしくなってオレの部屋まできちゃったか!!

 お兄ちゃん頭は痛くないけど、頭おかしいかもしれないから悩んでるんだよ。なんて言えるはずもなく、両手で顔を覆ったまま大きくため息をついて気持ちを切り替える。


「大丈夫だよ、さて~お兄ちゃんは夕ご飯を作ろうかな~」

「何を作ってくれるの?」


 下校間際にオカンにラ○ンを送っておいた。材料は莉奈ちゃんと一緒に買いに行ってくれてるはず。

 オレが部屋を出てキッチンに向かうと、莉奈ちゃんもちょこちょことついてくる。

 冷蔵庫を開けて確認。ふむふむ。買ってきてくれてるね。


「今日はハンバーグ作りたいと思います」

「ハンバーグ‼」

「莉奈ちゃんはハンバーグ好き?」

「好き!」


 ですよねー。オレも好きです。


「莉奈ちゃんも手伝ってくれますか?」

「はい‼」


 ……癒される……。逆再生してよかったと思うのは莉奈ちゃんの存在だ。

 莉奈ちゃんがいてくれたから、学校に行っても、女子に話しかけられてもキョドることなかったんじゃないだろうか? と思えてしまうよ。


「じゃあ、お手て洗ってきてね。莉奈ちゃんにはコネコネ係をしてもらうから」

「はい!」


 素直~可愛い~。オレも手を洗う。

 あ、今度莉奈ちゃん用のエプロン買うようにオカンに言っておかないと! 


「まずはひき肉、最初にコレをコネコネしてね。あとで玉ねぎとかも入れるけど、最初にちょっとこねておいた方がいいんだ」

 ひき肉をボウルに移して塩コショウを軽く振っておいて、莉奈ちゃんに渡すと莉奈ちゃんはコネコネ始める。

 よし、その間に玉ねぎみじん切り、ピーマンと、ニンジンも少量みじん切り、ピーマンもニンジンも玉ねぎの半分ぐらい分量で。

 オレがガキの頃は緑黄色野菜が苦手で、オカンがこうしてみじん切りにしてハンバーグに混ぜてくれてピーマンも食べられるようにしてくれた。

 みじん切りの野菜を軽く炒めて粗熱をとる。

 粗熱をとっている間に、ジャガイモを手にする。

 こいつをピーラーで剥いてレンジに。

 茹でブロッコリーもつけよう。

 莉奈ちゃんにはもう一つのボウルを渡す。レンチンしたジャガイモが入ってる。


「はーい、莉奈ちゃん今度はこっちです」

「なにするの?」

「これでお芋をコネコネしてください」

「はい!」

 莉奈ちゃんはちゃんと手を洗ってから、すりこぎを持って芋をマッシュはじめる。今度百均でマッシャー買おう……。

 そして莉奈ちゃんがマッシュしている間にオレはキュウリをスライス。

 あとこれもスライス。部活見学の時に余ってるからって言われたので貰ったリンゴだ。リンゴの皮をむいて、これもスライス。塩水に着ける。変色予防なんだけど、彩りはいいけどしょっぱさがなあ……。ま、サラダに混ぜるからいいだろ。

 その作業を終えて、粗熱が取れた野菜をひき肉に混ぜて繋ぎのパン粉、卵、牛乳ほんの少しと……あと焼き肉のタレ少し混ぜて、捏ねる。

 よし、いい感じになった。成形する。あ、コレ、明日の弁当に入れよう。

「莉奈ちゃん、お芋はもういいよ、小さいハンバーグを作ってくれる? 3つ作って。小さくていいよ」

「はあい」

 オレは夕飯とは別に二つほど薄めのハンバーグを作る。これはオカンと莉奈ちゃんの間食用。普通に食パン挟んでもいいけど、市販のマフィンとか挟んだら、莉奈ちゃんマク〇ナルドみたーいってテンション上げてくれるかも。

 それに、莉奈ちゃんはちゃんとプチバーグ作ってくれて、それはお弁当の分だとわかっているっぽいから……なんか作っておいた方がいいかなと思ったんだ。

 そして4つほど夕飯用の成形もしておく。

 あとでラ〇ンでオカンに知らせておこう。

「あとは焼くだけね」

 バットに成形バーグを並べてラップして冷蔵庫にいれておく。

 莉奈ちゃんとオレは手を洗って、サラダの続き。

 変色しないようにリンゴを塩水に漬けしてたからしょっぱいけど……。


「莉奈ちゃん、あーん」


 莉奈ちゃんに一切れリンゴを口に入れるとシャリシャリ食べてる。

 小動物みたいに可愛いいっ!


「しょっぱいけどりんご」

「お手伝いのご褒美だよ」


 ……女子の意見でたまに、「彼氏が料理手伝ってくれない。料理を一緒にしてくれる男子っていいよね」とかTVやネットで見たりするわけだけど、その意見はオレ的にもありなわけ。オレ自身も彼女ができたら(できる気がしないが)一緒に料理したい派なの!

 そんで味見する彼女を見てニヤニヤしたいの! キモイとか言うなよ! ささやかなドリームなんだよ! 過去二次元推しでどんだけ妄想したことか。

 逆再生する前も、多分逆再生した現在もそんなことは絶対に起きねーなと思っていた。

 だが、今、莉奈ちゃんとお料理している! !

 夢叶った! 妹だけどなっ‼

 莉奈ちゃんがマッシュしてくれたジャガイモに、キュウリのスライスとリンゴのスライスを入れてマヨネーズとバターほんの少し投入。そして混ぜる。

 あとブロッコリーは茹でる……レンチンでもいいかな……。

 汁物は……あ、オカンが紙パックのポタージュ買ってきてくれた。ラッキー。コレを温めればいいか。

 最初から最後まで手作りなんて無理無理。

 市販のもので補えればそれでOKだと思おう。うん。異世界転生じゃなくてよかったのは、こういうところだよな……。


 玄関の方から「ただいまー」の声がする。声だけでもイケメンだよ、クソ羨ましいな。


「優哉お兄ちゃんだーおかえりなさーい!」


 ぴょんと跳ねるように玄関へお出迎えする莉奈ちゃんの後ろ姿を見て、オレはサラダにラップをかけて冷蔵庫にしまう。

 無洗米を5合ほど炊飯ジャーに入れてセット。

 ちょっと一休み。

 コーヒーメーカーをセットして……一応、優哉の分もね! 莉奈ちゃんはミルクティでいいかな。

 お茶したら夕飯にとりかかろう……。


「幸星―弁当サンキュー! なにあれ! だし巻き卵⁉」


 優哉はカバンから弁当箱を取り出して、キッチンに置く。


「一応……でも、市販の顆粒だし麺つゆだぞ?」

「甘いの想像してた! でもしょっぱくない‼ おまけにひじきも入ってた!」

「甘いのは……焦げ目がつくから止めた。甘いのがいいなら甘いの作るけど?」

「どっちでもいい! ありがとう幸星! お前マジ神‼」


 そんなに感激しちゃうのかよ。

 こいつバスケ部だし身体動かすし、購買のパンだけで昼はもたねーだろ。購買のパンが補助食的な感じだ。こんなに喜んでくれるなら、弁当のおかずに入りそうな副菜や常備菜も作った方がいいのかもな……。


「感謝は態度で示してほしい、弁当箱は自分で洗ってくれてもいいんだぞ」

「OKOK、着替えてくる」


 ご機嫌だな……。学校そんなに楽しかったのか……。

 オレは疲れたよ。いろんな人と喋りすぎて。

 優哉は自室に戻って着替えてきたようだ。

 ランチバッグから弁当箱を取り出して素直に洗う。オレはその後ろを横切って、莉奈ちゃん用のミルクティを作る、ミルクたっぷりにしておく。

 紅茶はほんの少し。ミルクティじゃなくて、ホットミルクの方がよかったかな。

 まあいいや。

 そして炊飯ジャーを開けて水の位置を確認すると、早炊き設定にしてスイッチオン。


「コレ、お前のね」


 弁当箱を洗い終わった優哉に声をかける。

 キッチンカウンターにコーヒーの入ったマグを置く。


「砂糖とミルクはお好みで」


 ちなみにオレは入れない、意外と思われるかもしれないけれど。ブラック派。

 優哉はかごの中に弁当箱を入れて顔を上げて尋ねる。


「え! オレの分も?」

「あ、ダメだったっけ?」


 こいつコーヒー苦手だったっけ? 別にこだわりないと思ってたんだけど……。あんまりそこらへんの記憶がない。そりゃそうだよね。逆再生前より、今の方が会話率高いもんな。

 わー失敗した。


「いや、全然ダメとかではなく。帰ってきてコーヒーすぐに飲めるとか! 幸星! 嫁に行くなよ!」


 おい、まて。

 確かにリアル女子は苦手だし結婚できる気がしないが、二次元の推しはオレの嫁。

 そう、もし結婚するならオレは嫁を貰いたい派なんだよ。

 あ、でも、いまならお願いを言い出せるチャンスなのか?


「優哉、あのさ、飯終わったら、学力測定テストでひっかかった問題があるんで、教えてくれない?」

「そんなことぐらいなら喜んで!」


 今、居酒屋かよってぐらいの勢いがあった。

 よろしくお願いします、優哉先生。


「莉奈ちゃんはこっちだよー」


 莉奈ちゃんは両手でオレが持ってるピンクのマグカップを受け取る。


「お茶を飲んだら、お料理の続きをするけど、今度は火も油も使うから、莉奈ちゃんはキッチンに入ってきちゃだめだよ?」

「はい! 優哉お兄ちゃん、今日はね! ハンバーグなんだよ! 莉奈もつくったの!」


 優哉に莉奈ちゃんのお話し相手になってもらってるうちに、オレはスマホで常備菜や副菜のレシピを検索する。

 きんぴらや切干大根なんかは定番だよな……。

 朝にちょっと出すだけでもいいし。

 スワイプとタップを繰り返していると、それまで優哉と学校について話していた莉奈ちゃんがオレの腕を引いてスマホをのぞき込む。


「おかず~?」

「うん、作り置きしておいた方がいいものを調べてるんだよ」

「コーセーお兄ちゃん、お料理、じょうずね~」


 そうなのかな? まあ男子高校生が料理する時点で変わってるといえば変わっているか。

 社会人で自炊する奴もいまの世の中は半々だもんなあ。

 でもオカンが仕事でいなくて、このメンツでコンビニ弁当とか……底値398円×4と材料費だったから、作った方がいいだろ。

 冷食とコンビニと外食とかって莉奈ちゃんにはさせたくねえし。

 オカンも日勤の時はやってくれるし。

 再婚の顔合わせの時も成績アレでも、家のこと頑張るからと言った手前もある。

 手料理で、家の中の雰囲気よくなるならそれでよくね?


 オレはマグカップのコーヒーを飲みほして、キッチンに向かった。




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