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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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◆84 遥香ちゃんと一緒の、何気ない放課後の日

 





 ぬるい文化系クラブ活動は、三年の先輩でも時折、部活に顔を出す。スイーツ部なだけあって、お菓子作ったあとに、試食しつつ雑談に興じてたりする。


「ところでさー真崎少年は水島ちゃんと、デートした?」


 デートどころか同居してますけど? とは言えず「はあ、まあ」的な返事を返した。

 それを聞いた新入部員はオレと遥香ちゃんに一斉に注目する。


「何?」


「あ、あたし達、あ、あの、聞いちゃいけないかと思ってたんですけれど……」

「部長と副部長って……その、付き合ってるんですか?」


 新入部員の三人には敢えて言ってなかった。でもこの子達は察してるんじゃないかと思っていたけど。

 これ、言った方がいいの?

 オレは遥香ちゃんの方に手を向けて言う。


「彼女です」


 新入部員が一斉に「きゃー」と声をあげた。

 なんでそこで騒ぐんだろう……。察してくれていたんじゃないのかよ……。

 オレが苦笑してると、先輩達からまた声がかかる。


「どこいってきたの?」


 遥香ちゃんに尋ねると遥香ちゃんは、にっこりする。


「合羽橋商店街です、浅草寺にも行きました」


「渋いっ!!」


「いろんなキッチンツールが見れて楽しかったし、でも、買うにも商品のお値段高いので……商店街散策して、浅草寺まで」

「あーそうなんだー、で、初デートのゴハンはどこで?」

「おそばやさんです」


「渋い!! 初デートの初飯に蕎麦とか!?」


 先輩が声をあげる。そんな声にも遥香ちゃんはテレテレしながらも答える。


「浅草だから和食にしようって幸星君が予約入れてくれて、雰囲気もよくて」


 遥香ちゃん遥香ちゃん……照れ屋さんなのに、何もそこまで正直に報告しなくてもいいんだよ?


「え……デートで予約とか入れるんですか……?」


 新入部員ズ、ちょっと目が点状態。なんで? 普通でしょ? デートだし……え……? 高校生感覚って、デートの飯屋の予約とか入れない? その場の雰囲気で「何食べる~?」 とかで「ファミレスとかファストフードにしよっか」とか、そんな感じか? でもオレはほら、中身はおっさんだから……。

 もちろんそっちも考えたさ、でもね、ファストフードにしてもよ? 最近いいお値段じゃね? サイドメニューとか頼むと、結構するよね? だったらネットで調べて予約いれるよね? 彼女の誕生日だったし。

 それに団体でクラス打ち上げとかは予約入れてるじゃん? イインチョーだってそういうところ、テキパキ手配してるよ?


「それで指輪を貰ったと」


 なんで指輪限定なんだよ、ネックレスだよ。


「指輪じゃないですけどネックレスもらいました。誕生日だったので」


 だから遥香ちゃん、なんで素直に言っちゃうの?

 莉奈ちゃんと一緒にいるから莉奈ちゃんの素直無邪気成分が感染?


「え~指輪じゃないの~?」

「でも、あんた達、去年の暮れに付き合い始めて初デートが最近って何? それまでは放課後デート?」

「お家デートです。オレの家は小学一年生がいるんで。今、二年生になったけど、お世話しないとダメなんですよ」


 オレがそういうと後輩たちから「えー!」とかブーイングが飛ぶ。

 うう、女子のブーイング何気に凹む。


「水島先輩! それでいいんですか!?」

「真崎先輩はもっとデートしないと!」


 オレは遥香ちゃんを見る。

 どうだろ、どこか行きたいところとか、あるかな?

 ゆーても、デートか……。


「幸星君はどこか行きたいところある?」

「いや……それは男のオレのセリフでは?」


 オレがそういうと、遥香ちゃんは考え込んでしまった。

 ですよね。

 別に彼女ができたらどこへデートっていうのも……前回の合羽橋はまあまあ遥香ちゃんも喜んでくれたけどさ。

 現在、同居で物理的に距離が近い。おはようからおやすみまで一緒だからなー。


「特にない……かな」

「だよね」


 けど……お出かけ用遥香ちゃんの私服姿って、カワイイんだよなー。

 そういうのまだまだ見てみたい気もする。


「……なんか落ち着いちゃってますよね……水島先輩と真崎先輩……」

「いやーこの二人、去年からずーっとこんな感じで、付き合うまでもこんな感じだったんだよねえ」

「性格によるんだろうけど」

「まじで付き合ってないとか言ってて、はよくっつけとか思ってたんだけど、今ならもうはやく結婚しろとか言いたい」

「……真崎先輩は、水島先輩のご両親とかにも会ったりしたんですか?」

「うん」

「ひええええ、親公認なんだー」


 うーん……後輩ちゃん達は何がききたいのかわからんなー。

 ただ、後輩ちゃん達はしきりにアイコンタクトしてて、頷きあってる。


「もし、真崎先輩に告白してくる子がいたらどうします?」


 遥香ちゃんに告白する男子がいるのはわかるが、オレに告白する女子とかはいないだろ。


「いないだろ」


 オレが一蹴すると、遥香ちゃんは複雑そうな表情をする。


「幸星君は、モテるんだよって言っても、いつもこう言うんです」


 三年の先輩達は顔を見合わせて、一年生に視線を移す。


「一年から見て真崎少年はどうよ」

「うちらではなく、一部ではいい感じでお名前が知れ渡っていると言いますかー」

「いい感じ? オカンの称号を持つ男ってことで?」


 ……なぜ先輩達までオカン言うのか……。


「あ、それも聞き及んでますー」


 一年にもすでにオカン呼びが浸透してるんかーい!?


「ですが、主に水島先輩の彼氏ってことで……」


 ……そうですか……名前ではなく、存在が浸透ということですかあ。いいのか悪いのか。

 遥香ちゃんの付属品的なアレですか。いやいいですよ。オレはテキパキと後片付けをしながら、その後の会話はスルーした。




 今日はオカンがいるから、お買い物はなしで、ちょっと前からきになっていたことを、遥香ちゃんと一緒の帰りの時に尋ねた。



「遥香ちゃん」

「はい?」

「さっきも、思ったけれど、その……」

「うん?」

「素直に言っちゃうのかなーって……」

「何が?」


「デートの事とか。キクタンが騒いだ時もイインチョーが尋ねてただろ? どっちが告白したとか」


「ダメだった?」


 遥香ちゃんは唇に指をあてて、あわわってなる。

 そういう仕草もカワイイのでいいんですが。


「ダメじゃないよ。ただ、不思議だなって。遥香ちゃん、照れ屋さんだから、そういう話に素直に答えるタイプじゃないなって、オレは思ってたから……意外で」


「うん……わたしもね、幸星君のこと聞かれて素直に答えちゃうのは、幸星君やっぱり迷惑だったかな……とは思ったんだけど……」


 いやー迷惑じゃないよ。なんていうかなーオレ、一遍死んでるし。

 何度生まれ変わっても、逆行再生しても、彼女とかできるはずもないって思ってたし。

 ただ、遥香ちゃんが性格的にそんなことを言うタイプじゃないからずっと不思議だったってだけなんだ。


「でもね」


 遥香ちゃんはオレの手を取る。


「わたしね、自慢したかったの」

「?」


「わたしの彼氏、すごく優しいよって、みんなに自慢したかったの。もちろんナイショにしておくのもありかなって、ちょっぴり思ったりするんだけど……。でもね、莉奈ちゃんとか見てると、素直に思ってること幸星君に伝え甘えたりしてて、カワイイなって。わたしも、幸星君にカワイイなって……思ってもらえたらなぁ……って……ダメだった……かな?」


 遥香ちゃんは真っ赤になりながら、最後はほんと聞き取るのが難しいぐらいの小さな声でそう言った。

 オレは遥香ちゃんの手を握り直す。

 始めて告白した日みたいに、恋人つなぎで。


「ダメじゃないよ――……」


 オレは小さい子みたいに繋いだ遥香ちゃんの手を一振り二振りして、歩く。


「よかった……幸星君はね、わたしの――自慢の彼氏なの……」


 ……自慢の友達から彼氏にジョブチェンジ……


「遥香ちゃん」

「な、なに?」


「また、オレとデートしてくれる? どこ行こうか……」


 遊園地? 動物園? 水族館? 美術館? 映画もいいよね。


「それとお願いがあってね」

「な、なに?」


「またおめかしして」


 デートする度に、オレの彼女はカワイイんだよって、もし誰かに聞かれたら、オレはそう答えるから。

 もしかしてうっかり惚気るかもだけどね。


本日、PASH!文庫さんから「アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい」1巻とコミカライズ2巻発売されます!あとわたしがいるところでは今日なんですがくまクマ熊ベアーアニメ2期!このアラサーもCMでちょろっと流れるのです! よろしくお願いします。m(__)m

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