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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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◆76 二月のイベントが近づいてきましたよ!

 




 莉奈ちゃんのお誕生日会も無事に終わり、三学期って高校受験とかもあって、いろいろ休みの日が多いな。

 この機会に、遥香ちゃんとちゃんとデートとかしてみちゃったり?

 わ、いいかな? いいよね?

 でも来月あたりに学期末。学年考査か……。

 いつもみたいに、優哉と遥香ちゃんと勉強会だ。きっと莉奈ちゃんも真似っこしてくるだろうな~。

 なんてことをつらつらと考えながら、弁当を片付けてるところで、事件は起きました。


「あの……真崎君……いますか?」


 昼休みに他所のクラスの女子が、オレの教室にきてオレを指名してきた。

 オレの彼女が一番可愛いに決まってますけど、また系統の違う可愛い女子です。ショートボブで目がくりっとしてる。

 そんな子が呼び出したもんだから、当然、目の前にいるキクタンが、ガタンと立ち上がった。

 昼休みは、遥香ちゃんは草野さん達女子と、そしてオレはキクタン達男子と弁卓を囲んでいるんだけど……。


「ザッキー……お~ま~え~というやつはぁああ!」


 まて、キクタン誤解だ!

 そして見知らぬそこの女子、昼休みに呼び出しとか大胆すぎるだろ。

 オレには遥香ちゃんという彼女がいるって、もう学年で広まってるはずだ。え? ダメ? 広まってないの!?


「彼女がいるのに二股とか~!! 滅べリア充!!」

「してねえよ!」


 そもそも、呼び出しに来た女子が他のクラスの子なのはわかるけど、名前までわかんねーし。

 ていうかクラス内ですでに注目なんですけど!?

 遥香ちゃん! 信じてくれるよね!?


「奥さん! 旦那が浮気ですよ!」


 やめろ! キクタン!

 オレは遥香ちゃんの方に向いて手招きすると、遥香ちゃんは立ち上がって傍にきてくれた。


「幸星君はそんな人じゃないです」


 奥さんと旦那というワードを華麗にスルーしましたね。遥香ちゃん。はは。

 しかし、彼女の信用はちゃんとキープできている。そこは喜ばしいことだな。


「ほら見ろ、ちょっとお話を聞いてくる、一緒に行く?」


 遥香ちゃんにそう尋ねると、遥香ちゃんはうんと頷いてくれた。

 キクタンもうんと頷くと、ついて来ようとするので、オレはキクタンを手で払う仕草をしてみてせて「ハウス」と言い捨てる。


「なんでだよ!」


 そう叫ぶキクタンを佐伯とイインチョーがホールドする。

 いい連携だ。さすがだ。

 とりあえず、教室の後ろのドアの方へ遥香ちゃんと二人でいくと、呼び出した女子も別に遥香ちゃんのことを見て、嫉妬メラメラって感じでもないし。なんだろ。

 むしろ、遥香ちゃんもいてくれて「よかった、安心」的な表情だし。


「水島さんも! よかった。二人ともいてくれて」


 ほら見ろとキクタンに視線を向けるが。おい、キクタンお前、何つまんなそうな表情なんだよ。何を期待していたんだよ。

 とにかくクラスで昼飯食ってた連中の注目を浴びてしまったので、三人で教室から離れて、廊下の方まで移動した。

 その女子は最初どう話を切り出そうとしていたけれど、待ちます。


「その、二人、スイーツ部だよね」

「はい」


 オレと遥香ちゃんは頷く。


「実は……その、あたし……料理ヘタで……」


 まあ、普通、高校生で料理作るって子はなかなか……。オレと遥香ちゃんの場合は、家庭事情が事情だから、作ってるだけなんですが。


「でもその……今回バレンタインは……手作り……したくて……チョコの作り方を教えてほしくて……」


 ごにょごにょという感じで、もう最後の「チョコ」という単語から先は聞き取りにくかった。

 オレは遥香ちゃんを見る。

 期末――その前に一大イベントバレンタインですか。

 遥香ちゃんは、うんと頷く。


「大丈夫、簡単でも美味しくできるように頑張ろう」


 遥香ちゃんの言葉に、その女子生徒は顔を真っ赤にして頷く。

 こういうのを見ると、あ~健気~って思うんだ。

 バレンタインといえば、我が家に黒歴史を背負うあのお方がいるので、複雑な気持ちになる。

 ええ、人体の一部とかお気に入りの香水とかを仕込む呪術的チョコじゃない、まっとうなチョコで勝負できるように、協力しましょう。

 オレはラ○ンで皆森部長に連絡を入れた。

 もちろん、放課後、調理室を使いたい旨を連絡ですよ。


「ありがとう。あたし、A組の篠田っていうの。よろしくお願いします」




 教室に戻ると、やっぱり注目を浴びてしまった。

 じゃれついてくるキクタンとふざけあっていたら、遥香ちゃんのいる女子グループから声が上がる。


「え、遥香ちゃんと、真崎でチョコレート作るの!? ていうかチョコ教室!?」

「そっか、バレンタイン近いもんね!」


 その声を皮切りに、そのグループの声のボリュームが上がる。


「何それ、あたしも参加したいんだけど!? いいよね!?」

「あたしも~!」

「絶対遥香ちゃんがいれば失敗しないで練習できそうだし~」

「それ!」


 オレはキクタンにギュっと手を握られる。


「オレにもチョコをあたえろください」


 オレはキクタンの手を振りほどいて、キクタンの両肩をガシッと掴む。

「キクタン……お前は、チョコなら誰からもらってもいい男なのか?」

「え?」

「バレンタインといえば、野郎が作ったチョコよりも、可愛い女子から貰うことに意味があるイベントじゃないのか?」

 オレの一言で、キクタンはカッと目を見開いて、遥香ちゃんのいる女子グループに突撃していく。

「女子! オレが、オレが味見をするので、頑張ってください‼」


 ……ううん……そういくか。

 確かに味見も可愛い女子からのチョコには違いない。


「ザッキーが作ったヤツの方が味は確実だろうがな」


 よせ、佐伯。そこで余計な情報を仕込むな。




 授業が終わるなり先輩達からラ○ンの返信がきて、放課後、もろもろのスケジュールを組むために、ミーティングしようということに。

 オレと遥香ちゃんは調理実習室へ向かう。

 なんでも去年はこういう部活イベントがなかったとか。

 ミーティングでは、チョコ教室開催日程や今回作るチョコの種類なんかを取り決める。


「いやー真崎少年、キミはなかなか、人気があるねえ」

「へ?」

「去年はこんなことはなかったのよ」

「だって、この部活女子だけだったし、女子だけだと、逆にバレンタインってクールというか。水面下でいろいろやるかだし」


 水面下って何? オレの表情で、先輩達は補足する。


「自宅で自分でチョコ作る子が多かったってことかな」

「このクラブは、誰かの為にチョコ作るよりも、チョコ=素材。みたいな感覚の人ばかりだから~」


 はあ、そんなもんすか。

 けど、学校の部活では作らずにお家で作るのはなんとなーくわかる。部活でやったらうるさいもんね。噂千里を走るじゃないけどさ。

 今回みたいに、部員以外にも、チョコ教室始めます~なら、面白そうじゃんで、冷やかしの人でも参加なら、周りからくる雑音も少なくなるか。

 オレがそう思ってると、遥香ちゃんが言う。


「幸星君が、話しやすいタイプだから、篠田さんも相談を持ってきたんじゃないかな?」


 え⁉ オレ話しやすいですか!?

 遥香ちゃんはうんと頷く。


「ちなみに水島ちゃん。真崎少年からチョコ欲しいとか言われなかったのかね」

「真崎少年~ちゃんと、彼女にチョコくださいとお願いしたのかね」


 先輩達がニヤニヤ~としてる。

 その件に関してはいろいろ思うことありますよ!

 だって、初めての彼女から初めてのバレンタインチョコだよ!?

 欲しいよ!

 アラサーまで彼女の一人もおらず、2周目にしてできた、可愛い彼女ですよ!

 けどここで外野に言うことではない。多分ない。


「先輩達は誰かにあげないんですか?」

「え~市販のブランドの方が、味はいいし~」

「見た目もお洒落だよね~」

「赤い艶のあるチョコとか見た目が好き~」

「わかるー。アレ難しいよね、作るの」


 ここにも優哉と同じ意見の人がいる……女子なのに。

 そして呪術チョコを絶対作らない人達なのに……。

 まあ純粋にチョコだけを見てる人が多いからな~。




 ミーティングを終えて、いつものように、夕飯の買い出しをして、家路につく。

 そこで、思い切って遥香ちゃんにお願いしてみた。


「あの、遥香ちゃん。えっと……オレに、チョコくれますか?」


 ぼそぼそって言った言葉なのに、遥香ちゃんはちゃんと聞いてくれてた。


「はい」

「ほんと?」

「うん。美味しいの作るね」


 遥香ちゃんが笑顔でオレにそう言う。

 うきうきなバレンタインを待てる日が、オレにくるなんて、人生やり直してみるもんだな。



 


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