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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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◆69 お蟹様キター!





 オレたちは冬休み、隆哉さんも年末年始は会社はお休み。

 そんな中で一人通常どおりの出勤をするのは、オカンです。

 でも休みが全くないというわけではなくて、通常のシフトどおり。毎年そうだったから、オレには違和感がないけど、隆哉さんも優哉や莉奈ちゃんもちょっと寂しそうではある。


「ママ、今日はおしごと、お休みの日!」

「お休みだよ~」

「はるかおねーちゃんが。今日、夜に来る日?」

「そうよー。幸星、あんたバイトもう休みでしょ?」


「うん。昼メシ食ったら買い出しいく」

「莉奈もついてく!」


 そうなんです。

 実は先日、遥香ちゃんのご両親が帰国。

 隆哉さんが「車だすよ」といって、羽田まで一緒にお出迎えに。

 莉奈ちゃんも「パパとはるかおねーちゃんとドライブする」って言って、一緒にお出迎えしてきたらしい。

 そこでなんやかんやお話があって、本日遥香ちゃん一家が我が家に来ることに。真崎家でお食事なのです。

 その話を聴いてから、もうね、出すメニューは決めてました。


 鍋にするよ。再び鍋! 鍋再び!


 海外でお仕事してた遥香ちゃんのご両親は、日本食に飢えているはずなので。

 鍋を二種類作るんだ~。

 ガスコンロと土鍋が二つもあるお家なの? とか遥香ちゃんも心配していたけど、違います。

 我が家にはなんと、新たな調理器具「ホットプレート」様が追加されたのです。

 先日、オカンと隆哉さんがデートしてた時に買って帰ってきた。

 プレートの種類がいくつかあって、深鍋プレートもあるんですよこれが!

 これで定番鍋と洋風チックな鍋が一気に両方作れるじゃないですかー。

 オレがスマホで鍋を検索してると、優哉がのぞき込む。


「お、優哉、お前、何鍋がいい? 一つはちょっと変わり種を作ろうと思ってるんだ~」

「テストのお礼の鍋、美味かったけど……変わり種って何?」


 ふっふっふ。 

 スーパーに立ち寄らないキミにはわかるまい。

たとえ立ち寄ったとしても、ポテチ売り場に一直線だろ。


「じゃあ優哉も一緒に買い出しに行くぞ」

「はいはい、荷物持ちなんだろ」


 それもあるけど、違うよ?

 今回の主な目的はお鍋のつゆの素のコーナーだよ?

 食いしん坊だからね、次回の鍋のリクエストもリサーチできるというものだ。


 午前中はお片付け……世にいう大掃除っぽいことをして、お昼を食べたら三人でいつものスーパーに。

 オカンと隆哉さんは引き続きお掃除続行。

 

 莉奈ちゃんはオレと優哉の手をとって、謎の楽しいソングを口ずさんでいる。

 手袋はクリスマスに遥香ちゃんが編んでくれたやつだ。こんな小さいの編めるなんて器用だなー。

 スーパーの手前までいくと、莉奈ちゃんのお友達がいた。


「わーかすみちゃーん! ママと買い物?」

「うん。莉奈ちゃんは?」

「うん! お兄ちゃんたちと買い物なの!」

「ママ、莉奈ちゃんのお兄ちゃんだよ! 遊びに行くと、ケーキとか焼いてくれるの!」


 莉奈ちゃんと仲良しの女の子の友達だ。うちにも何回かきたことある子。

 かすみちゃんのお母さんから「あらあら、お世話になってます~」と挨拶を受けて「こちらこそ~」なんて言ってしまうあたりが……オレがクラスメート達にオカン呼びされる所以なのか。

 そして本来、母親同士のやりとりの場であっただろうに。オレのオカンのタイミングの悪さよ。まああの人はそこはしかたないとあきらめているところもあるけどさー。仕事好きだし。

 

「ママはおおそうじの続きなの」


 そんな報告しなくていいんだよ、莉奈ちゃん。


「それで莉奈ちゃんはお兄ちゃんたちと買い物なのね」

 かすみちゃんのお母さんも感心したように言う。

「うん!」

「すごいね~莉奈ちゃんの家はみんなで分担してるのね~子供達でお買い物なんて~。莉奈ちゃん、今度うちにも遊びにきてね」

「ちゃきまるに会いたいです」

「ちゃきまる大好きだね」

「莉奈のおうちでも、またゲームしようね、かすみちゃん!」

「うん」


 小学生女子の社交は終了のようだ。「じゃあねーばいばーい」と手を振って別れた。

 今は可愛いものだが、あと十年もしたらどうなるやら。


「ちゃきまるってなんだ?」


 優哉が莉奈ちゃんに尋ねると、莉奈ちゃんはぱっと目を輝かせる。


「かすみちゃんちのねこちゃんなの! かわいいの!」

「猫か……」


 おや、優哉さんは、猫好きですか。

 莉奈ちゃんの話しぶりからすると莉奈ちゃんも猫が好きだろう。

 どうしよう。

 莉奈ちゃんが猫拾ってきたら。オレは捨ててきなさいとか言えない。オレたちのマンションペット可だったか? でも莉奈ちゃんの口から猫飼いたいとかでてきてないからこんな心配は杞憂にすぎないんだけど。もしそうなったら隆哉さんはどうでるか。

 そんなことを考えてスーパーの自動ドアを通過する。


「幸星~それで、何を買うんだ?」


 優哉がスーパーのカートにカゴを乗せて言うと、オレは莉奈ちゃんの手を引いて、なにはともあれ鍋つゆのコーナーに歩き出した。

 さあ我が家の食いしん坊、悩むといい。

 オレが前回悩んだようにな!




「それで結局、寄せ鍋にしたのね?」

 

 スーパーから帰ってきて、エコバッグから買い物をとりだしながらオカンが言う。


 だって……優哉がいっぱい具が楽しめるのがいいって言うもんだから。それに遥香ちゃんのご両親もその方が無難に楽しめるかなと……オレ的には牡蠣の土手鍋がやりたかった。今シーズンのうちに一回やってやる。絶対にだ!

 一応寄せ鍋だから牡蠣も買ったし。今日はおもてなし寄せ鍋なので買ってしまったのだよ。年末だからね、売ってました『お蟹様』が!

 買っちゃったよ、買っちゃいましたよ。たっけぇ。今回、隆哉さんが奮発してお財布の中身を潤してくれてなかったらどうなっていたか。


 ホットプレート深鍋ではオレの意見を取り入れました。

 莉奈ちゃんも優哉も好きになるよ。

 多分。

 チーズフォンデュにしようと思います。

 野菜やソーセージはレンチンで済むし、作業的には簡単なんだ~。


 色々下ごしらえを完了したり、箸休めに、フォンデュの方にはシーザーサラダとかお鍋の方にもちょっとしたもの、かまぼこに梅ねりをはさんだやつとか、小松菜の煮びたしとか、

白菜の浅漬けとか。丸こんにゃくの田楽には、以前遥香ちゃんと一緒に作ったゆず味噌を用意とか。

 遥香ちゃんと料理するの好きなんだけど、今回遥香ちゃんはゲストなので。

 

 美味しいって言ってもらえたらいいんだけど。

 

 そういったものをちょこちょこ作ってると、ドアチャイムが鳴った。

 莉奈ちゃんが「はるかおねーちゃんだ!」って叫んでぴゅーと玄関まで走っていく。 

 隆哉さんとオカンも莉奈ちゃんの後を追うように玄関へ。 

 なんか挨拶っぽい会話がされてる気がするけど、リビングのドアは閉められてるのであんまりよく聞こえない。

 お皿と、お箸と、あとフォンデュに使うピックのかわりにフォークと。

 優哉に頼んでリビングのテーブルと、ダイニングの方に用意してもらった。


「幸星君、本当にキッチンにいてお料理の準備してる! こんばんは」


遥香ちゃんのお母さんが、驚いたようにオレに声をかけて挨拶してくれた。


「こんばんは」

「幸星君、なんか手伝うことある?」

「ないよーだいたい終わった。優哉が準備段階で、もう食べたそうにしてたから、座って座って~」

「幸星君も!」

「うん」


 そう言われるけどさーなんか照れちゃうんだよなー。

 なんでかなー。

夏に遥香ちゃんのお宅に御呼ばれした時も緊張したけど、今回の照れちゃうのは両家揃ってっていうところがなのか。

 いや別に、高校生だからね、いきなり結婚とかじゃないけどね、これ普通あります?

 付き合ってる彼女の両親と自分の両親でお食事とか。

 とりあえず、皆最初はダイニングに座って、椅子はたりないので、オレと優哉と遥香ちゃんはカウンターに。


「本当に、幸星君をはじめ、真崎さんにはうちの娘がお世話になって。私達もまだまだ海外にいることが多いので、今後もご迷惑をおかけするとは思いますが、よろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ、私達も共働きで、たいしたことはできませんけど」


 とか、まじでちょっと結婚前提で付き合ってるカップルの両家食事会の切り出しですか!?

 いえ、嬉しいやら照れちゃうやら。

 隣に座ってる遥香ちゃんを見ると、遥香ちゃんも照れくさそうにしてる。

 だからキッチンからオレを引っ張り出したんだよね。

 わかる~普通ないもんな~。


「うちの幸星君が率先して用意したので、まずは食べてください。あっちのホットプレートは洋風だそうで、どちらから行きます?」


「幸星君、あのね、これ幸星君からお鍋にするって聞いたから、うちの親が用意したの」


 おう。なんだなんだ。ご丁寧に。


「まさかもう用意されてるとは思わなくて、被っちゃった」


 遥香ちゃんが渡してくれた紙袋の中身を改めてみると、はい、お蟹様キター!

 オレはお蟹様を持ってキッチンへ。

 寄せ鍋の具に追加しましょう。

 遥香ちゃんのご両親もたっぷり召し上がってください!

 もちろん、全部を寄せ鍋にではなく、ほどよく分けて、リビングのフォンデュの方にも分けますよ!

 フォンデュの具材でエビとかも高級ですけどね、蟹ですよ! 蟹!

 トロトロチーズに蟹を突っ込む!

 寄せ鍋の方が親たち、子供達はフォンデュって感じにうまい具合に別れてるから、このお蟹様追加をリビングに持ってきたときの優哉の目が……めっちゃ期待で輝いている。


「幸星……まさか……この蟹を……」

「とろとろチーズと合わせます」


 蟹の足をチーズに絡めた瞬間から優哉の目の輝きが違ってみえる。

 それを優哉の取り皿に渡した。


「いいのか?」


 なんでそこで確認する。いいよ。遠慮なくいけよ。がぶりといつものように。

 オレが頷くとガブリと一口。

 美味しいモノに美味しいモノを足すと、やはり美味しいの法則。

 遥香ちゃんと莉奈ちゃんにも同様に取り分けて、もぐもぐしてる。


「ありがとうチーズ、ありがとう蟹……」


 そこまで感激しちゃうかオニイチャンよ。

 ならば、これは全員が食さなければ! 


「遥香ちゃんのご両親と隆哉さんとオカンにもわけてくるね~」


 遥香ちゃんも手伝ってくれて四人分の蟹チーズを持ってくと両親ズからちょっと話があるから二人とも座りなさいと言われた。


 ちょっと、何を一体お話するの!?

 オレ正座しないとダメなの?

 





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