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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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◆67 ブッシュ・ド・ノエル作ろう会を開催

 





「ひどい! クリスマス一緒にいてくれるって言ったじゃん!」


 キクタン……なぜそこでシナを作って女子の口調なんだよ。

 遥香ちゃんが顔を真っ赤にして後ろでブルブル震えている。

 いいよ、怒って。絶対遥香ちゃんの真似だろ。でも似てない。遥香ちゃん、敬語女子だからね。最近はオレの前だと敬語なしで話してくれて、そこも萌えますけど。

 ていうかさ、オレ、言ったよね? クリスマスはバイトだって。

「やっぱ真崎は今回も欠席か~」

 残念そうにイインチョーも呟く。うん。オレもいろいろ考えてはみたんだけど、さすがに、もうシフトは変えられないんだよ。

「ごめん」

 オレがそう言うと、キクタンが叫ぶ。

「いやっ! 許さないんだから!!」

 キクタンがぐっと、両手を握り締めてぶりっ子ポーズをとっている。

 お前……いつまでその女子キャラやるんだよ、もういいよ。

 イインチョーこの男なんとかして。

「キクタンのアレはおいといて、お前、そんなんで、あのちっちゃい妹とかもへそ曲げてんじゃないの?」


 確かに、クリスマスが近づくにつれ「コーセーお兄ちゃんはあるばいとなんだよね」とめっちゃ寂しそうに呟かれる。

 後ろ髪ひかれますよ。ええ。

 部屋をクリスマス仕様に飾りつけしてる時にも時折しょんぼりされてしまったよ。

 一緒にクリスマス料理を作りたい人生でした……。

 横で遥香ちゃんが莉奈ちゃんを宥めているのを見て、なんか早くもクリスマスに残業確定したお父さんの気持ちになった。オカンじゃないよ! お父さんだよ! 兄ですけど!


「遊びたいの! ザッキーと遊びたい!」


 キクタン、年末って各ご家庭はいろいろあるでしょ、お年始の挨拶とか、里帰りとか。

 クリスマスはがっつり仕事だけど、正月は休みなんだよな。個人経営だし。商店街の店舗もコンビニ以外はシャッター閉めるところもちらほらある。駅前のいつものスーパーは営業するようですけど。

 でも現状バイト入って年末いろいろ時間とれない。

 スマン、キクタン。

 オレは遥香ちゃんを手招きして、一緒にそーっと後退する。


「じゃ、オレ達部活があるから! キクタンもだよね! また明日!」

「ザッキー! 裏切者! 女が出来たら、すぐにいちゃいちゃと! 爆発しろ! ばかー!!」


 遥香ちゃんと一緒に教室を出て行くオレに、キクタンの声が聞こえてきましたが、無理なもんは無理でしょ。

 それにオレ達はそんなにいちゃいちゃなんてしてませんよ。

 遥香ちゃんと一緒に調理実習室に向かいながらため息をつく。


「なんでキクタンはああなのか……」

「菊田君は寂しいんじゃないかな……」

 キクタンは……寂しいというワードから最も遠い男だと思ってますが、違うの!?

 遥香ちゃんの言葉に驚いたせいで、へんな顔をしていたらしい。

「あ、うん、あのね、こういうの、女子の方があるあるだと思っていたんですが」

「はい」

「なんていうか、女子の仲良しグループで一人彼氏ができると、なんとなく寂しくなっちゃう子もでてくるの、菊田君もそれじゃないのかなって……」

 それって……遥香ちゃんとオレが、その、付き合って……遥香ちゃんの友達が寂しい気持ちになるっていうならわかるけどキクタンだよ?

「まさか、草野さんから、そういうこと言われたり……」

「ごめん、汐里はそういうタイプじゃなかった」


 うん、そうだと思った。腐女子は友情とは別の方向へベクトルが向いてるところもあるからなー。ある意味キクタンよりもマイワールドがしっかりしてそう。


「あ、でも、他の子はちょっとあるかも。わたしも、実を言うとそういう気持ちになったことあるし……莉奈ちゃんが大きくなって、彼氏ができたら、幸星君だってそういう気持ちになるんじゃ……」


 遥香ちゃんの一言でオレはその場にうずくまる。


「遥香ちゃん、それは寂しいってもんじゃない……血を吐きそう」


 遥香ちゃんも慌ててオレと同じようにしゃがみこんでオレの顔を見る。

 この子……こういうところほんと可愛い。そしてなんとなく莉奈ちゃんっぽい。

 仕草とか似てるよね? 姉妹なのかってぐらいに。


「わわ、ごめんなさい! 例えが悪くて! そ、そうだ、優哉君に彼女ができたら、幸星君も寂しいって思うかも!?」


 優哉……優哉に彼女ができたら……。

「寂しいよりも、心配。あいつ適当にしそうで」

「適当……?」


 遥香ちゃんは小首をかしげる。オレは立ち上がって、遥香ちゃんに手を向けると、彼女はその手をとって立ち上がる。


 優哉が本当に好きな子ができて、付き合うって言うなら手放しで喜んじゃうけど。

 なんか優哉は難しいかもしれない。

 優哉の見た目だけを見て、声を掛けるタイプの中から面倒くさいからって妥協しそうで。

 好きになってドキドキとか、そういうのなんもなくて。

 オレが遥香ちゃんに告白しようかどうしようかとか、モダモダしたようなそういう気持ちとか一切なくて。

 本当に適当にすまそうとしそうで、心配なんだよね。

 そんで関係は長続きしなくてある日後ろからぶっすりとか刺されそうで。

 ほんとそういうのだけはやめてほしい。

 オレが優哉に対してそう思ってるように、キクタンもまあ形は違えど、寂しいのか……。

 うーん……。

 でも、あいつ常日頃の発言が発言だからなー。寂しそうに見えないんですよ。




 そんなことをつらつらと考えて、調理実習室のドアを開ける。

 そこにはスイーツ部の先輩たちが二人ほどいた。

「お、真崎少年が彼女と一緒に来ましたよー部長」

「来たね~真崎少年。参加者少ないねえ、真崎君と水島さんいれて4人とは……もうこれは今年は中止でよくないか?」

「何がですか?」

「クリスマスケーキを作ろう企画」

「……まじですか?」

「マジです」

 実は部長の代からクリスマスにケーキを作ろうという企画をたてたようだ。しかし、クラブに出てくる人数はこれこのとおり4人。

 このクラブ自体もゆるーい感じだから……居心地はいいけど、幽霊部員の為にあるような部活だもんな。

 脚光を浴びるのは文化祭模擬店の時だけか。

 このスイーツ部は設立されて10年ぐらい。クラブとしては新参だし、歴代部長たちもなんか伝統になるような企画立ち上げたいとは思ってたんだって。

 そして今回のこの企画もごらんの有様です。

「皆森~やっぱ年末企画は無理よ」

「ブッシュ・ド・ノエルを作ってみたかったんだけどねえ」


 ブッシュ・ド・ノエル……なんかめっちゃもりもりしたロールケーキですか?

 部長的にはロールケーキから作ってみたかったらしいけど、放課後のクラブ活動的にはそんな時間もないのでロールケーキかスポンジを買ってきて、思いっきりデコろうって企画らしい。


「それぞれ予定が入ってたりで、今年の部活の締めもしょぼく終わりか……」

 部長が視線を遠くに飛ばしている。

 ですよねー。

 あんまり簡単すぎても作ってる感がないとダメなのかな……。うちの先輩たちも。

 あれ……待って、簡単だとしたらさ。

「先輩、うちの部員じゃないとダメ?」

「はい?」


「オレのクラスメイトがクリスマスやりたいってうるさいんです。そいつら誘ってみてはダメですかね?」


 オレの言葉に部長がサムズアップして頷く。

 え? いいの? 

 オレはスマホをとりだしてキクタンとイインチョーと佐伯にラ○ンをしてみた。




 そしてスイーツ部年末企画、ブッシュ・ド・ノエル作ろう会が開催。

 部長ともう一人の先輩は調理実習室の使用許可とかいろいろ回ってくれて、オレと遥香ちゃんは前日に学校近くのスーパーで買い出し。

 キクタンをはじめとする男子には、ロールケーキ買ってそのままクリームでデコった方が時短で手間もかからないんだけど。どうしてもロールの中にフルーツ入れたい。部長と先輩も気持ちは同じなのでケーキ用スポンジを購入。

 絶対イチゴは入れたい。あとは果物缶でもいいですけど。

 赤と緑でクリスマスカラーにしたい遥香ちゃんはキウイも買おうと言う。いいですね。料理の出来って見た目で決まる感じあるよね! ホイップするクリームとか製菓用チョコレートとかアイシング用チョコペンとかデコレーション用のアラザン、シュガーパウダーとかココアパウダーも購入。


「遥香ちゃん、うちのクラスの女子って結局参加するの?」

「うん。汐里と、さちかちゃんと、まあちゃんと、なおちゃん」


 遥香ちゃんの親しいお友達だから、みんな名前呼びですね。遥香ちゃんが友達の名前を呼ぶの、なんか新鮮。

 なんで女子の参加者を聞いたのかと言われると……ほら、他の男子、特にキクタンが「やっぱ、女子いてほしいの」ってお声があったものだから。

 ……ていうか絶対人生一回目だった時にはここまでセッティングできなかったよ!


「まあちゃんは小杉君もいいかなって……いいよって言ったんだけど、大丈夫かな?」

「OKでしょ、このくらいのメンツでいいんじゃない?」


 男子は女子と違って派閥ないから大丈夫だと思う。ていうか小杉君はえーと何部だ? 軽音部か……大丈夫じゃないかな。昼休みに中庭でバスケするメンツに入ってるし。

 ちなみに小杉君はまあちゃんの彼氏です。この二人はうちのクラスで一学期中に早々とまとまった公認カップル。

 彼等が真のリア充だとオレは思ってる。

 そうだよ、オレ、小杉君に相談してみたいことがあったんだよ。

 真のリア充にね。




 翌日、調理実習室は盛況でした。

 部長や先輩もはじめ、クラスの女子はノリノリ。

 キクタンは……お前、デコる前にチョコクリームを味見と称して食うのはやめろ。


「バイトがあるので、こういう形になりましたが、よろしいでしょうか? イインチョー」

「苦肉の策だな真崎……」

「外でわいわいはなかなか、ほら、オレ、インドアだから」

「キクタンはごまかされてるみたいだからいいんじゃね?」


 そんなキクタン、女子に混じって嬉しそうにクリームをホイップしてます。


「小杉君も器用だね」


 チョコプレートに文字をアイシングしてる小杉君に声をかける。

 小杉君はアイシングの手を止めずに「そうかー?」なんて返事をかえしてくれて、オレは少し声を抑えて小杉君に話しかけた。


「あのさ……オレ、小杉君に相談したいことがあったんだよね」

「真崎が? 珍しいー……何?」

「その、小杉君さ……彼女のクリスマスプレゼントって……用意した?」


 そうなのです。

 オレは真のリア充に尋ねたい。どんなものを用意したのか参考までに。


「ライブのチケット」

「……」


 軽音部らしいお答えでした……。

 そっかーそうなるよなー。


「悩んでるのか……」

「悩んでるよ……」

「スマン、参考にならなくて。オレ、好きなアーティストがいて彼女もそのアーティストが好きで、そこで話題が広がって付き合い始めたんで」

「……そうですか……」

「悩むよな、そういうの」

「うん」


 キクタンにもイインチョーにも相談しても、「滅びろ」としか言われかねない贅沢な悩み。

 優哉に相談しても逆にこれは無理。だってアイツ、貢がれる男ですから。

 クラスメイトの女子友に囲まれてる遥香ちゃんを見ると、彼女はオレに気が付いて笑顔を浮かべる。

 なんだよ、オレの彼女、可愛いすぎる。

 オレは遥香ちゃんに小さく手を振ってみる。

 こういう笑顔を何度でも見たいんだよね。


 何をプレゼントしたら、笑ってくれるかな。





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