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◆61 お菓子じゃ高校生男子の腹は膨らまないそうです。






帰宅したオニイチャンはリビングに鎮座しているオレのクラスメート達に会釈してから、オレに向き直る。

「幸星、お菓子じゃなくて、がっつり食いたい」

めちゃくちゃ真顔……。

「あ、はい……」

イケメンの迫力に負けてオレは頷く。わーそうだよねーブラウニーだけじゃ高校生男子の腹は膨らまない。おまけに今日は優哉だけではなくて男子三人いる。

簡単に手早く腹にたまるのって……。冷蔵庫を覗いてうちの食材を確認する。

「優哉、昨日と同じだけど焼きそばでいい? みんなも焼きそばでいい?」

「え?」

オレはキッチンに戻ると、ホットプレートを取り出す。遥香ちゃん、これお願い。そう、ダイニングテーブルの中央で。遥香ちゃんはいつものごとく、わかってる様子でセッティングしてくれる。

一応買っておいてよかった、焼きそば。三個入り袋麺を二つ。

ここのところ試験で早めに帰宅してたから、麺類は買い置きしてました。

昼抜きなんだもん。オレは食パン一枚あればいいけど、優哉の胃袋がそれを許すはずもないのだった。

野菜はこの袋麺を買った時に購入したカット野菜がある。あともやしが一袋、それとソーセージ一袋を斜めにカット。

遥香ちゃんがお皿とお箸を用意してくれる。

ホットプレートに油を引いてカット野菜とソーセージを投入。

麺はちょっとお湯を通してほぐして……その間に優哉は着替えてきたのか、コップを用意し始めた。もちろん人数分。

優哉兄さん。キクタン達のグラスを回収して、新たにグラスと、我が家の作り置き麦茶もドンと出す。

ほぐした麺をボウルに移す。その間、遥香ちゃんが炒めに回ってくれていた。

そこに麺投入ー! ジュワーと勢いよくってわけじゃないけどそれなりに湯気も出て、全体的に具と麺を絡めていく。

優哉は冷蔵庫から紅ショウガとマヨを取り出す。お前~マヨとか出すのかよ。調味料ストッカーからあおさも出してた。


「だいたい話聞いてると全員、部活が運動部系なんだろ? 菓子だけで足りるか、ガッツリ食いたいに決まってる」


はい。ごめんなさい。オレが少食なもんだから、他のヤツの燃費とか考えてないで。

優哉の食べっぷり見てると、この人は食いしん坊なんだな……で納得してたけど、ホットプレートを囲んだクラスメートの顔を見てみると、優哉の食事量って体育会系高校生男子の食事量の標準値なのかもしれない……。

やべえ。足りなかったら……どうするか。

困った時の小麦粉様の登場再びでお好み焼き……もしくは残った冷凍のゴハンでチャーハンでも作るか……の二択だな。

麺と具がいい具合になったところで粉ソースを投入。

麺がみるみるうちにソース色に。

「ごめんね、腹ペコだったよね、食べて食べて~」

オレがそう言うと、みんなお皿とお箸を手にしてホットプレートの焼きそばをつつく。

「所要時間10分だけど」

佐伯が呟く。

「手早ーい! 水島さんやっぱり嫁なの⁉ 何二人、一緒に暮らしてんの⁉」

キクタン! 誤解です!

「ち、違います!」

遥香ちゃんも草野さんも食べてね! 男子に全部持ってかれる前に確保してね!

ヤバイ、こいつら食うなあ! おなかすいてたんだな。

「まだ腹に入る人~」

みんな手を挙げる。そうだよね、足りないか。オレはキッチンに向かう。

「優哉、火加減よろしく、お好み焼きのタネ作るから」

「マジ!?」

「お好み焼き!?」

委員長とキクタンが声を上げるが、オレは釘をさす。

「肉はないぞ!」

男子が一斉にショボーンとした表情になる。

シーフードミックス様に登場してもらうんだよ。

「幸星君キャベツ切りましょうか?」

「大丈夫~食べてて~」

オレがお好み焼きのネタを準備しながらそう言うと、遥香ちゃんがホットプレートの天板部分を持ってきてくれた。ソースで天板汚れてるから洗い直ししてくれた。

「ありがとう遥香ちゃん、ついでにごめん、鰹節もよろしくお願いします」

「はい」

「何この料理人の二人……連携こなれた感……ここは真崎家ではなく若夫婦の経営する定食屋なのか?」

佐伯の呟きが聞こえる。

日常的なことだからなー優哉と莉奈ちゃんと遥香ちゃんでご飯とかの時とかもあるから。

「おかーさーんー。はやくはやくー」

ちっちゃい子供のようにキクタンが言うが……視覚的に可愛くない。

莉奈ちゃんがお箸持って、早く早くーと急かすなら、こっちもやる気がでるんですが。

佐伯と委員長が黙々と食べてるのを見て、優哉の言い分を納得した。

やっぱりオレの燃費が良すぎるのか。

優哉の場合は糖分も脂質もたんぱく質もその他もろもろも、脳か筋肉に回されてるとは思うんだけどね。

お好み焼きをもぐもぐしてるクラスメートを見て、その食欲にちょっと感動していた。

「ブラウニーはちょうどいいデザートってところか……」

焼きたてブラウニーをカットしてホイップクリームとカットバナナを添えて、みんなに出すと、草野さんがまずスマホでシャッター切ってる。

「草野、何してんの?」

「資料。デセール凝ってるねえ、真崎君」

「一応スイーツ部だからね。こういうの好きでしょ、女子。うちの莉奈ちゃんも大好きだから」

優哉と委員長と佐伯は期末の範囲について話してる。

学校違うし偏差値も微妙に差がありますが、一応オレの学校も普通科進学校なので、他校の範囲とかも参考にしたいのかもしれない。

文武両道なのに、何故この三人には彼女がいないのか……。

キクタンはまあ、うまうま食べてるのでいいか。そんなキクタン。補講とか追試とかは受けてるけど、苦手な教科だけで少ない方だし、そんなに多教科に渡って受けてる感じはないなあ。

もしかして、コイツこんな感じではあるが地頭はいいのか……?


「はー、美味かったー、ザッキー天才」

そうか、お前の胃袋が落ち着いてなによりだよキクタン。

「そんで、水島さんと真崎は結婚を前提に同棲してんの?」


違う。お前等、ちょっとは人の話を聞けや。

女子高生の一人暮らしなんて、実際は物騒だもんよ、アニメや漫画ならともかく。体育祭に『水島さん彼女になってください』って言ってきた二年男子には絶対漏らせねえけど、こいつ等なら、そういった心配もなさそうだし、いざとなったら、オレが盾になります。

遥香ちゃんを見ると遥香ちゃんはうんと頷いて両親が不在がちで、時々お世話になってると簡単に伝えた。

佐伯と委員長とキクタンがガシっとオレの肩を掴み遥香ちゃんたちから離れ、声を潜める。


「ということは……真崎、もしかしてまさかのお風呂を貸してお風呂場でドッキリとかも……」


さすがにゴクリと生唾を飲み込む音は聞こえないが、お前等、目が怖い。

そんなラノベや漫画のような展開にはなりません。家でお預かりしてるの、両親もいるの、妹もいるの、兄貴もいるの。


「ヘタレが!」

「チャンスは自分で作るものだろう、ましてや、そんなオイシイ舞台装置があるのに!」

「そこは健全な男子ならば見たいだろう」


「一気に信用を無くすのと、お前等にヘタレと罵られるのとを天秤にかけたら、遥香ちゃんの信用をとるよ」


そんなん決まってるだろ。

オレも本当に15だったら、後先考えないで暴走しそうだけどな。

でも性格的にチキンだからしないか。ただ多分今よりもっと妄想してると思うけども。

そこに玄関から莉奈ちゃんの「ただいまー」の声がする。

「おくつがいっぱい……だれかきてるの?」

リビングダイニングのドアを開けて、莉奈ちゃんがそんなことを言う。

「莉奈ちゃん! おかえり!」

「コーセーおにいちゃーん!」

ランドセル背負ったままオレに飛びついてくる莉奈ちゃん。

「お手て洗ってきて、ブラウニー作ったよ」

「わーい! はるかおねーちゃん! しけんおわったの⁉」

「うん、終わったよ」

「じゃ、じゃあ、莉奈と、ひみつのおはなしできるのね⁉」

「うん」


……莉奈ちゃんと遥香ちゃんの秘密のお話……? って何?


莉奈ちゃんがランドセルを置いて、お着替えしてきたところに、遥香ちゃんがブラウニーを出す。

その様子を見て、キクタンは涙目。

ああ、コイツ、女兄弟はいるけど姉って言ってたな。

素直で可愛いオレの妹が羨ましいか、どうだ。羨ましいか。

「そしてアレが真崎の運動部に入らない理由か」

佐伯も呟く。

「可愛いだろ? 可愛いだろ? 見て、オレの莉奈ちゃんの七五三フォルダが火を噴くぜ?」

佐伯に莉奈ちゃん画像を見せまくる。

「これは千歳飴袋を持たせてるけど、こっちはバッグを持たせてて、可愛かろう!」

「キッズモデル並みじゃね?」

「それな、パンフレットに使えそうじゃね?」

委員長も頷く。

「水島さんにめっちゃ懐いている」


「はるかおねーちゃん、今日は、お泊りしてくれる? ひみつのおはなしたくさんしたいの! 莉奈、がまんしたの!」


莉奈ちゃん無邪気に爆弾落としたよ……、オレの状況を見て? ねえ、それよりなにより、オレを置いて秘密のお話って何?

ガシっとオレのスマホを奪い取って、佐伯と委員長は画像フォルダをあさり始める。

何してんの⁉ 何してんの⁉

キクタンが背後からオレを羽交い絞めする。


「うるせえ、一人だけ涼しい顔しやがって、エロ画像の一枚や二枚は持ってるだろう、水島さんにチクってやる!」

「水島さんに『幸星君、不潔……』って罵られろ!」

「やめろー!」

そんで腐女子、そこで何スマホでこっち撮ってんだよ⁉

「あほ四天王」

草野さんがぼそりと呟く。

「あれだな、幸星の奴、『我が四天王の中でも最弱』とか言われちゃうポジだな」

「ですよ」

いやー! 勝手に決めないで‼


「うるさいの、ダメなの! おねーちゃんとひみつのおはなしできないの!」


莉奈ちゃんの一喝でオレ達の動きが止まる。


「はるかおねーちゃん、莉奈のおへや、いこう」


莉奈ちゃんは、よいしょとダイニングチェアから降りて、激おこぷんぷんで遥香ちゃんの手を引いてリビングダイニングから出て行ってしまった。

莉奈ちゃんに怒られた……すごいショック。

委員長や佐伯、キクタンはさすがに沈黙して目が虚ろになったオレに気兼ねしたのか「じゃあそろそろオレら帰る~」と言うので、駅まで送っていった。




「あーその、すまんね、まさか真崎がそんなに妹ラブだとは思わなくて」

委員長はそういうが、オレは何も答えられなかった。そのかわりオレの頭を優哉がポンポンと叩いて優哉が答える。

「幸星は莉奈が可愛くて可愛くて仕方ないから……大丈夫だよ、幸星、莉奈はケロっとしてるから、怒りは持続しないから」

そう思いたい。

そして腐女子。そこでまたオレと優哉を写メるのやめてもらおうか。

優哉もオレと一緒に、この場にいるのは、オレがこの連中を送ったあと、夕飯の買い出しをするからで、優哉は荷物持ちだからだ。

あんまりにも呆然自失してるオレが何を買い込むか不安だからだそうだ。

「悪かったな、真崎」

「いや、うん、まあ、まだメンタル復活しないけど、後味悪くさせて、こっちこそ、その……」

「妹ちゃんにも、謝っておいて~」

「う、うん」

「あ、そだ、せっかくだし、ラ○ン交換して優哉ニイサン」

優哉は「ニイサンいらない、タメだろー」なんて言いながら、オレのクラスメートとラ○ンを交換してた。


じゃーなーと手を振って改札抜けていく奴等にオレは手を振った。

ごめん。まあ、そのあれだ。

莉奈ちゃんさえ、許してくれたら、また誘いたいぐらい、オレも今日は楽しかったよ。




 



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