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◆60 学期末テストとその打ち上げです。






季節が秋から冬に。

そうすると、もう、アレがやってくる。そう期末試験。

くああああああ。やらねば! 一応ね、授業も真面目に受けてるし、自主参加補講とかも結構これでも受けてるんですよ。こう見えても一応ね!

その甲斐があってか、一学期の期末も二学期の中間もそこそこの成績。

いや~逆再生前って多分……赤点ギリギリ低空飛行だった気がする。二回目の高校生活において学校の授業では追いつかないとか、返ってきた答案用紙の点数を見て落ち込むとかはない……。オレにしてはできている! 

逆再生して学生時代の記憶があやふやで、なによりそこが心配だったんだけど、これもいわゆるチートなのかも!? いや……チートならトップだろ普通。

単純に、めっちゃ頭のいいオニイチャンと一緒になって試験勉強に取り組んでるからですよ。優哉は普通に勉強が好きなのかもしれない。

数学とか物理とか好きなんだろうけど、進路に関しては「まだ考えてる」とのこと。

えー……この人、オレがアラサーだった時、どこに就職したんだっけ……。

……就職したというよりは……あ、うん……こいつ、理系じゃなかった……大手企業にお勤めとかじゃなかった……。

弁護士になったはずだ……。

これはオレが死ぬ前、アラサーだった時、優哉君は弁護士試験に受かって~とオカンから電話で聞いてたから多分そう……。

「オニイチャン、進路どうすんの?」

「何、最近よくその質問するけど、お前はどーすんの?」

質問を質問で返されてしまった。

普通のサラリーマンです。アラサーだった時はそうでした。

オレ。やり直しの人生で、一体何になるんだろう……。

前回と比較すると(あまりにも過去のことでその記憶もうすらぼんやりですが)成績がUPしてるので、やっぱりちょっと選択肢が広がってるような気がする。

「嫁を貰うなら、進路は慎重に考えろよ」

「ちょっと待てー! なんだよ、嫁って! オレまだ高校生!」

優哉は舌打ちする。

「集中切れた、お茶したい。幸星、お茶。糖分補給。脳が糖分欲しがってる」

はいはいはい。

オレが立ち上がると、莉奈ちゃんが帰宅なのか、インターフォンが鳴る。

優哉がオートロックを解除してた。今日のおやつはスイートポテトです。生地は作っておいたので、卵を塗ってゴマ振って、トースターへ。

お芋の甘さとしっとり感が出てますように……。


「おーにーちゃーん! ただいまー!」

「おかえりー手洗いうがいしてきてね」

「なんかいい匂いする!」

「スイートポテトです。トースターであっためてるから」

「わーい」


莉奈ちゃんご機嫌だな……お着替えしていつものお気に入りのウサギのぬいぐるみを手にしてリビングに再登場。

優哉とオレはコーヒーを淹れて、莉奈ちゃんにはホットミルクを用意する。


「あれ? はるかおねーちゃんは?」

「水島さんは、自宅で勉強中」

「えー!」

「ラ○ンなんかするなよ」

「えー!」

 なんだ、随分仲良しですね。


「いろいろおはなししたいのにー!」


年齢離れてるのに、何をお話するのか……、女の子同士のお話なのか。

二人ともお洒落さんだから、お洋服の合わせ方とか? 遥香ちゃんが泊まりに来た時とか、莉奈ちゃんのお部屋でお洋服広げてたの見たことあるぞ。晩御飯呼びに行った時とか。

うん、それはオレには無理なことだな。


「いつもいっしょにおべんきょうしてるのに!」


優哉は莉奈ちゃんを見下ろす。


「お前さんがいるとお勉強にならんからだよ」

「え⁉」

「お前、いろいろ我慢きかないし、水島さんも優しいから相手にするだろ」


優哉が言い聞かせるというより、なんか含んでる? いや言った通りなんだろうけど。

莉奈ちゃんは優哉の言葉の裏を読んでいるような表情を見せた。

ぎゅーっとうさぎのぬいぐるみを抱っこしている。


「もー、しけん、はやくおわって! 莉奈、はるかおねーちゃんとおはなしたくさんしたいの!」


それはオレも優哉も水島さんも思ってますよ、莉奈ちゃん。

あ、スイートポテト焼きたてだからね! 怒りに任せて勢いよく頬張らないように!

ほっぺがリスのようですよ。

優哉、お前もだよ。口の中やけどするぞ。

もぐもぐ食べてる二人を見てると、やっぱりここに遥香ちゃんがいないのが物足りないというか寂しいというか……。

試験だから気合を入れると本人も言っていたし、それに……。


「幸星君の家にお邪魔しすぎな気がして、どうかと思うし……」


なんか遠慮気味にそう言われちゃって。

オレ的には、全然かまわないしむしろすごく助かるところもあるし……だけど、まあ、なんだ、やっぱり自分の家族じゃないから、実は遥香ちゃん自身も居づらいとか感じてるなら、こっちもそんな頻繁に振り回しちゃダメかな。何より今現在、学生の本分の試験だし。

オレだってバイトも休みにしてもらってるんだから、集中しないと。

とか思ってても、やっぱり夜になって、ラ○ンのスタンプを送ってみたりして。

莉奈ちゃんに我慢させて、オレがラ○ン送ってどうすんの。ダメじゃん……。

すると、通話の方で遥香ちゃんからの連絡がきた。


「遥香ちゃん」

「こんばんは」

「う、うん……こんばんは……」

「なんか変な感じ、いつも一緒にいるのにね」


遥香ちゃんがくすくす笑ってる。くう、可愛いかよ!


「あの、邪魔しちゃった?」

「ううん……大丈夫、嬉しい。やっぱり幸星君のおうちでみんなでやった方が集中できそうな気がする」

「ほんと?」

「わからない例題とか、優哉君に訊けるし」


……そっすね。

それはオレも思う。だから自室じゃなくてリビングで優哉とやってたんだけどさ。

今日は10分前に終了させた「もう寝る」と優哉が言うもんだから……。


「明日は、うちでやる?」

「ううん、明日から本番だから、テスト終了まで頑張る」

「そっか」


振られてしまったよ。ま、まあ当然ですね。

遥香ちゃんが頑張るなら、オレも頑張ろ。


「じゃ、テスト終了まで、頑張ろう」

「うん、あの、あのね、終わったら、また幸星君のおうちに遊びに行ってもいい?」


……そんなのいつもでもウェルカムですけど!


「うん」

「それを楽しみに頑張るね」

「うん」

「おやすみなさい」

「うん……おやすみ」


通話を終えてもスマホをオレは見てた。

はーやっぱダメ、電話しちゃった、オレの馬鹿! いやかかってきたんだけど、でもスタンプ押したのオレだし! 

もう耳に残っちゃうだろ、遥香ちゃんの可愛さわかってただろ、勉強手に着かなくなっちゃうだろ、もう馬鹿だ! だが「幸星君、やっぱり勉強できないんだね」とか言われたくねえ!

気になる問題だけもう一度ちょっとよく見ておこう。




「終わったー! ザッキー! 打ち上げ! 打ち上げ行こー!」

キクタン……試験終了でテスト用紙集め終わった瞬間に叫ぶなよ。クラスのみんなの心の中はキクタンの発言と一緒だろうが、代弁しなくてもいいんだぞ?

それにオレはいつも、打ち上げとか行かないし、莉奈ちゃんのおやつ作らないとダメだし。

オレがそう言うと、キクタンは机に突っ伏してウソ泣きを始める。

「トミー、ザッキーが冷たい……これから追試を受けるオレを労おうという友達甲斐がないよ……」

お前、今、期末終わったんだけど? 追試受けるの前提かよ。

「オレもトミーも佐伯も運動部だから週明けからまた部活だから~絡めないし~」

絡むのかよ。

「カラオケまではいかなくても、マッ○で打ち上げぐらいならいいだろ?」

委員長がそう言うけど……でもなあ……うちのお姫様がへそまげちゃう。単純にオレが構いたい。莉奈ちゃん成分補充したい。

「どうしたの? 幸星君……」

オレが考え込んでいると、遥香ちゃんが声を掛けてくれた。

「遥香ちゃん……遥香ちゃんは打ち上げとか行くの?」

遥香ちゃんも腐女子と一緒にマッ○で打ち上げ予定らしいけど……。

うーん……。

「遥香ちゃん打ち上げ草野さんだけ?」

「うん」

「じゃあ、オレの家でどう? みんな一緒に」

「え、でも、大丈夫?」

優哉は男子なら大丈夫だろ、別にオレみたいに人見知りでもないし。草野さんは優哉を見ても矢印向けるタイプでもないから。(別の方向へ妄想膨らませそうではあるけれど)大丈夫なんじゃね?

家族のグループラ○ンで家で打ち上げしていい? と流すと、隆哉さんと優哉からOKのスタンプが送られてきた。

テストで結構ストレスがたまったというか、オレも糖分補充したいというか、スイーツ系を作ってみたいので、そしてできれば遥香ちゃんにも手伝ってほしい。

「キクタン、うちでやろう」

「え?」

「オレの家で打ち上げ、両親帰宅するまでだけど」

「真崎家にご招待なの⁉」

「まあ……うん、兄と妹がいるけど。そんで焼き菓子ぐらいなら作るけど、キミら、腹持たないなら、近くのスーパーで仕入れればいいし」

オレがそう言うと、佐伯と委員長が驚いた表情だった。


「お宅訪問ですか⁉ 高校に入ってそういうのやったことないね」

「俺なんか中学でもねーわ。幼稚園以来だ」


オレなんか生まれて初めてかもしれんよ、家にこの人数の友達をご招待なんて。

ちなみにオレの家で打ち上げの提案は小声で展開されている。

家で打ち上げって言ったら、渡瀬さん達がうるさいに決まっている……。

まあ、彼女達は早々に教室から出て行ったけどね。後々絡まれるのも面倒だし。

キクタンはもう行く気満々だ。お調子者ではあるが、そこんとこはわかってるはず……一応、コイツにはそこんとこ注意しておこう……。




そんなこんなで、委員長とキクタンと佐伯、女子は遥香ちゃんと草野さんを真崎家にご招待してみた。

自宅の最寄り駅近く、いつものスーパーで製菓材料を買い足して、メンバーは「おやつは独り500円まで~」とか言いながら、適当にジュースやお茶やスナック菓子を買い込んで帰宅。


「おじゃましまーす」

「てかこのマンション、広くね?」

「はーうらやま」

男子はそう言う。みんなをリビングに誘導してると草野さんが声をかけてくる。

「真崎~あとで写真撮影してもいい?」

草野さんは、多分あれだな、背景資料用に撮りたいんだな。

「SNSにあげないなら」

「創作資料に使いたいだけ~」

やっぱりね。

「そこ洗面所だから、手を洗っておけー。そんでリビングで適当に座ってて、オレ着替えてくる」

「あ、俺、手を洗いたい~」

「オレも~」


そんで着替えてリビングダイニングに戻ると、何故かシーンとしていた。

何、どうした……。

ゲームもあるんだぞ? やってていいぞ?

「幸星君、何を作るの?」

遥香ちゃんがグラスをみんなに配っていたけど、オレに振り返って尋ねてくる。

「ブラウニーにしようかなと。あ、遥香ちゃんグラス出しててくれたんだ? ありがとね。お菓子用の皿~……あ、これも出しててくれたんだ」

「うん」

そして何故かシーンとしているリビングのメンバー……。

なんだよ。なんかおかしいところでもあったか?

ブラウニーって、焼きっぱなしにしてて大丈夫だからそれにしたんだけど正解。あまりの静けさが気になるぞ。さっさと生地作って、型に流してオーブンにぶっこんで、時間を合わせてスタートさせた。

いつもの調子でコーヒーメーカーもセット。

「遥香ちゃん、お茶はいつものでいいよね。草野さんも同じでいいかな」

「多分、汐里、紅茶とコーヒーどっちがいい?」

草野さんがオレと遥香ちゃんを見る。

「あの……真崎、説明してやった方がいいと思うの……」

「え? 何が? キクタンも委員長も佐伯も、どうしたーいきなり大人しくなっちゃって」

カウンターのスツールに腰かけて、メンバーを見ると、キクタンがソファの前のローテーブルに突っ伏す。

だから何だよ。

「真崎……水島さん……」

委員長が口を開く。


「お前等、やっぱ付き合ってるの? 水島さんがすげえキッチン周り把握してて、俺等、チョーびびったんですけど」


オレと遥香ちゃんは顔を見合わせる。


「遥香ちゃんの家はご近所さんなの! いろいろあって、ウチに来てもらってることもあるんだよ、妹のおやつ作るの手伝ってもらったり! いつもごめんね遥香ちゃん!」

「いいえ! とんでもない! 勝手にしてしまってごめんなさい!」

「こちらこそ!」


なんかへんなテンションで二人でいつもお世話になってますーな応酬をしていると、玄関のドアが開いた音がして「ただいま~」と優哉の声がする。

オニイチャン! 状況を説明して! お願い! 「嫁です」とか言わないで事実をありのままにプリーズ!






嫁です。(BY、優哉)

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