◆5 二回目の高校生活です(留年じゃないのよ)
そして学校ですが……。
入学式終えてすぐに各教科テストとはこれいかに!
あったな、あったんだよ学力測定テスト!
クラスの中も「いきなりテストかよー」なんて声があちこちであがる。
オレも心の中で絶叫していた。そこは授業からじゃないのかと。
もう終わったと思ったね。
けど、問題に視線を走らせると、意外と自分の記憶捨てたもんじゃねーなと思ったわけよ。
白紙覚悟で臨んだが、意外と解けた。記入できた。もうそれだけでやり切った感。
それが終わったと思ったら、HRでクラス委員決めですよ。
必ず誰かが何かの委員に入らなければならない。
あー高校の頃ってこうだったっけ……。
小中学校と違って、さくさく決まるんだよなこれが。
最初の高校入学当時も驚いたけれど、でもこれってやっぱ大学受験を見越しての評価もあるからなんだって後になって納得したんだけど。
ちなみにオレは体育祭実行委員になりました。立候補しました。意外だろ。だけどな、これは逆再生前に後輩から聞いていたんだよ。体育祭実行委員って、文化祭実行委員よりも準備期間が少なく、一学期で終了するから後は何もしなくてもいいという話をな!
多分15年前は余った感じの委員会に入ったと思う。そこの記憶はない。
委員も係も決まって、さて帰るか……と思ったら、教室から先生が出て行った瞬間、クラス委員になった富原が声を上げる。
「さてーみんなーラ〇ン交換しようぜー、っていうかさ、この1‐Bクラスのラ〇ングループ作っておきたいんだよね、学校の連絡事項とか一斉に流すからー」
まて、オレの一回目高校の時、携帯全員確かに持っていたが、こんなノリじゃなかったろ、何このスマホ有効活用。高校生にスマホ持たせるとこうなるのか⁉
なんだよこの世界線。
全員スマホを取り出す。
ええええええ。何これ、こういうのありなの?
確かに高校生の時はイジメとか弄りとかはなかったよ? 小中学校とはちがってね!
だからって、携帯番号交換なんて、オレ以前はやらなかったぞ! アドレスなんてスカスカだったんですけど⁉
この高校、当時も確かに携帯禁止ではなかったけどさ、こんな感じになるの⁉
一部の高校ではロッカーに入れて休み時間外使用禁止とかはあったみたいだけど、この学校公立なのにめっちゃ自主性になってるんだよ。オリエンテーションの時、持ち込み自由 だけど授業中の指示のないときの使用禁止、着信音は禁止って通達があって「へー」とか思ったんだけどな。
とりあえずオレも業務連絡系ならと連絡先を交換しました。
教室自己紹介よりも、コメントになんとなく個性でてるな……。
「じゃ。これで全員終わったなークラス会とか親睦会の参加不参加とかもこれやりとりできるんでー」
富原が声かけると彼はスマホ画面を見て固まった。
「どうしたーイインチョー」
みんなぞろぞろと教室から出ていくので、オレも早々と帰宅せねばと思い教室を出ていこうとすると、富原が口を開く。
「せ……先生から……通知が……きた」
富原を囲んでいた数人が「はあ⁉」と尋ね返し、教室に残っていた生徒も富原に注目する。
「先生もクラスグループの参加を希望している」
「え?」
「まじ?」
いや、業務連絡用だろ、それは担任としては一つあるとありがたいんじゃね?
一回の送信で全員に通達できる緊急連絡網不要の連絡手段だもんな。小学校の時もあったけど、あれってマジ効率悪いよね。
「おい、佐々木! 言ったそばから、グループ抜けてんじゃねーよ!」
「え、先生が入るなら楽しくおしゃべりできないもん」
お前は女子か! 的な口調で佐々木が呟く。
「ちょっとどうする?」
「入れる?」
いや、入れとけよ! そこは! 委員長、アンタ最初に言ってただろーがよ、学校連絡事項って、なんで先生から通知入って、いの一番にためらうの?
このクラス全員が陽キャのパリピじゃねえだろ!
先生をグループに入れるか入れないかで委員長富原を囲んだ数人と、そして「先生入るのー?」なんて疑問等やさっそく抜けた佐々木みたいにオレも抜けるとか、あたしもーとか画面上のコメントが流れる。
……スマホ画面のコメントの加速すげえ……。
いろいろカルチャーショックだこれは。
「もうとりあえずこのグループは連絡用で先生入れておけば? どうせそのうち互いに連絡しあう生徒同士で別グループ作成されるだろ」
オレはラ○ンにそうコメント流してスマホをポケットにしまい学校を後にした。
学校から自宅の最寄り駅に着いた時、せっかくだから今朝真崎さんにもらったお金で文具を買い足そうと思った。
オカンの再婚を機に引っ越して最寄り駅は以前住んでいた場所の反対側だ。
エリアで言えば城東から城南に引っ越した感じ。
駅前の商店街も充実してるけど、駅ビルに入ってる店舗も逆再生前とはなんか変わってるよなあ……。
莉奈ちゃんも気になりますが、高校生のお兄ちゃんが土地勘ないのもこっぱずかしいので、とりあえず寄り道というか軽い探検的な……、莉奈ちゃんの学校時間が伸びたらバイトもしたい……15年前とは違う今のコミュ力ならなんとか行けそうな気がする。
そんなわけでちょっとだけ駅ビルの中をぶらぶらしてみる。
「ちょっとぐらいいいじゃん」
「急いでるんです」
通りすがりに、そんな会話が耳に聞こえた。
立ち止まると、オレの学校の制服を着た女子が大学生ぐらいの男二人に絡まれているっぽい? うん? もしかして同じクラスだったっけ? 顔に見覚えがあるぞ。
こういう場合、優哉だったらさりげなーく助けちゃうんだろうけどさ、オレは無理だなあと思って視線を反らそうとしていたら、言い寄られている女子がオレの方に視線を向ける。
ていうか視線が合った。
……これ知らないフリできないやつになったじゃん?
ここでこの現場スルーしたら、翌日学校で何を言われるかわからんぞ? せっかくトリップして前回よりは順調な二度目の高校生活を送れそうなのに。
あーあーどーするオレ? 逃げたらかっこ悪いし、だけど割って入るのもなあ。
いい案ねえかなー。うん。ねーな。
これは「なんだよお前」とか言われてボコられるコース確実だわ。覚悟決めるか。そのすきに逃げてくれるだろ、この女子。
そう思って彼女の方に歩き出すと、彼女は、ばっと大学生二人と思われる男の手を振りはらってオレの腕をつかんだ。
「ごめんなさい! 探してました!」
彼女がオレにそう言った。生まれてこの方、女子高生から腕掴まれた記憶ないです。




