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◆57 優哉の文化祭にいってみた。




今、オレは優哉の文化祭にきています。

オレのところの文化祭は夏休み終わったらすぐだけど、普通はこの時期ですよ。

こういった学校関連のイベントで思うことは、15年前とは違って、学校のセキュリティが厳しくなったことかな。

どこの学校も校舎に入る前に受付がある。(受付担当は生徒会だったり、実行委員会だったり学校によってさまざまですが)莉奈ちゃんの小学校だけでなく高校でもそうだ。体育祭実行委員だったけど、これを知った時、えーそういうのするんだねーっていう感覚だった。

入口に生徒の友達とか家族とか書き込みせねばならない。

ものすごく社交的なタイプだったら、友達連れてわいわい行きたいところだろうけど、結構制限されてたりするんだよね。

そして優哉の学校は都内屈指の進学校。

でも公立だからゆるいのかな……そんなセキュリティも「効かぬ……効かぬわ!」な状態のところが一か所あった。とにかく長蛇の列なのだ。どうやって受付パスしたんだよ。この人数。

何か大きな催しがあるとかならわかるよ? うちの学校だってキクタンや委員長たちの運動部有志でやったウォーターボーイズはプールまで長蛇の列でした。

でもオレ達が並んでるこれ、普通に模擬店への長蛇の列です。


「改めて、うちのオニイチャンの人気がすごいということだね」


オレが呟くと莉奈ちゃんと遥香ちゃんはうんうんと頷く。

そう、この長蛇の列は、優哉がやっている模擬店の人待ちである。

ちなみに模擬店の場所は、校舎4階の教室にあり、この列はその教室から階段へそして校舎の正面玄関近くの廊下まで並んでいる。

兄の勇姿を見ようという弟妹が気軽に「オニイチャン、頑張ってるかー」と声かけできない事態なんですよ!

ちなみに、この列の先の教室に優哉がいると教えてくれたのは西園寺君です。

偶然、受付でサインをしてる時に声をかけられた。


「真崎弟、お前らやっぱ仲いいな」


優哉も、オレの文化祭にきてくれたし、オレも一回目の時は他校の文化祭なんか見たこともなかったからこの機会に見てみようって思ったし、莉奈ちゃんもお出かけしたそうだったし。告ってないけど、遥香ちゃんと家でお料理だけじゃなくて、どこかに行きたいと思ったし、(ほんとうは花火大会の時みたいに二人でおでかけしたかったんだけど)そんなところで優哉の文化祭があるので、とりあえず三人できてみました。

本当は隆哉さんもオカンも「行く~優哉の文化祭行く~」とか言ってたんだけど、「いや、来なくていいですから」とか優哉がすっぱり二人を断ってた。

その様子を見て、優哉が普通の高校生の感覚を持ってるからなんだと思ったんだよね。でも真相は、隆哉さんとオカン二人でデートでもしてくればいいのにとか思ったらしくて、気を利かせた様子。だから今日は隆哉さんとオカンはデートです。


「ちなみに真崎兄は4階の教室のほうで、喫茶店ウェイターやってるから、会いに行くならこの列に並べ」

西園寺君が指さしたのは目の前にある長蛇の列。

「さ、西園寺君、なんで喫茶にこの列……」

「おまえの兄貴目当てで収拾がつかなくなって規制が入ったんだよ」

「……」


どんだけだよ! オニイチャン!! 下手なアイドルよりも大人気じゃん。


「実行委員と生徒会が規制し始めてから落ち着いたが、それでもこの状態だよ」

「そ、そうなんだ……」

「コーセーお兄ちゃん、ならぶの~?」

「う、うん」

「俺、中庭で屋台のラーメンやってるから、よかったらあとでよってくれ。じゃあな」


屋台でラーメンだと……!?

えー何それ! 鉄板焼きもオレはやってみて面白かったけど、ラーメンだと? なんかやってみたいぞ? だけどうちの文化祭残暑厳しいから、ラーメンは売上厳しいかな~カレーは常に大人気なのにさー。

オレが西園寺君と話し終えると、遥香ちゃんが莉奈ちゃんに話しかけた。



「莉奈ちゃん退屈かもしれないけど、大丈夫?」

「へいきだよ」

「でも意外と進みが早いな」

「飲料オンリーで回してるのかもしれませんね」


客寄せパンダという言葉が頭によぎった。

イケメンだからってコレはないだろ、うんないわ。

しかし、この行列で、食材とか飲料回るのかよ。

そうこうしてると優哉の教室に入ることが出来た。


「優哉~」

「おにいちゃーん」


莉奈ちゃんが元気に手を振る。

優哉が振り返って、にっこり笑うが、お前、執事喫茶だったのかよ。

これが普通の男子高校生だったら――……、例えばキクタンとか委員長とか佐伯とかだったら、笑っちゃう。オレが着ても同様に大笑いされるだろう。

だけど、優哉が着ると……まあなんてことでしょう、どこの二次元から切り取ってきたかのような佇まい。女子もメイド服着てるんだけど、それが霞んで見えるとはどういうこと?


「お帰りなさいませ、お嬢様」


優哉のセリフに莉奈ちゃんはキョトンとする。


「え、『いらっしゃいませ』じゃないの?」

「これはこういうセリフでやるように言われてる」


莉奈ちゃんにそう優哉が答えると、莉奈ちゃんはわかんないよとオレを見上げた。

うん。そういうものなの。莉奈ちゃんは知らなくていいです。

それにしても、すげえな衣裳が。メイド服とかも可愛い、莉奈ちゃんに着てみてほしい。

遥香ちゃんとお揃いで。


「よく来てくれた。幸星」


優哉がうるうるしてる。

どうしたオニイチャン!?

「家族が顔を出すまでを条件で引き受けてたんだ。オレもこの客寄せパンダ状態から解放される……」

オレと遥香ちゃんは顔を見合わせた。

ていうか、優哉もあれだ。客寄せパンダの自覚はあったのか……まあ、あるだろうな。


「ちょっと、優哉君。ダメじゃん、まだ家族来てないんでしょ?」


メイド服を着た女子がオレ達と優哉の間に割って入ってくる。

その女子をめっちゃ冷めた目で見降ろしてる優哉。おま、その顔こえーよ。

莉奈ちゃんがコアラになって優哉の足にヒシっとしがみ付いた。

「莉奈のおにいちゃんなの、おにいちゃんたちと、いっしょに、いろいろがっこうみてまわるの」

優哉が莉奈ちゃんを見下ろす。空気読んだな莉奈ちゃん。

そして、空気読まないのはメイド服着た女子です。キミ、誰にガン飛ばしてるのかな?

遥香ちゃんが、こっそりオレの服をつかんでくるので、オレは遥香ちゃんを見る。

そりゃ、こんな可愛い子が現れたら、優哉の彼女か⁉ になるよね。

見た目なんて、美男美女だもんよ。中身がこれまた、壊滅的にメシマズな優哉と、超絶メシウマなJKの遥香ちゃんだから、きっと足りないところを補えちゃうんじゃね?……って、遥香ちゃんに出会った頃はそんなことも思ったりしたけど。


「遥香ちゃん」


オレが遥香ちゃんの手をとると、遥香ちゃんはいつかみたいに、手をとってくれた。

ちゃんと手をとってくれたところが嬉しくて、多分オレはにやけていたのかもしれない。遥香ちゃんも安心したように、にっこりしてくれる。

優哉は足元にいる莉奈ちゃんを抱き上げる。


「この子は俺の妹だし、こいつはオトウトだし、この子はオトウトの嫁だけど、家族じゃないって?」


優哉がメイド服の子にそう冷たく言い放つと、遥香ちゃんが小さく「嫁……」とか呟いている。でもオレの手を離そうとしなかったのでヨシ!

優哉のクラスメイトと思われる男子が優哉の傍にやってきて、メイド服の女子に言う。


「優哉の家族だよ、試合観戦にきてたし、俺も会った事ある。噂のメシウマな弟」

「彼女持ちかよ! 弟!」

「優哉、ご苦労! キミの任務は終わったぞ!」


どこかで見たようなと思ったら、バスケ部の人達か。


「俺ちょっと着替えてくる」


優哉はそう言って、莉奈ちゃんを降ろすと、莉奈ちゃんはオレの空いている手をとった。

お、おう……気をつけて行け、この行列の女子につかまったら、お前、身ぐるみ剥がされるぞ? 

そんなふうに思っていたら、クラスメイトの男子が優哉を囲って移動……。さながらアイドルとマネージャーな構図。VIPとSPみたいな。スクールカースト最上位最大派閥のトップってこうなのか。すげえな。

優哉は普通の制服に着替えて、オレ達と一緒に教室を出た。


「長かった……昨日の一日目なんてずっとあの調子だった」

 

優哉が呟く。


「そうか、優哉、何食べたい?」

「西園寺がやってるラーメン」


そうか、がっつり食べたいのか。オレも実は西園寺君と会ってから気になっていたけども!


「あと見所は何があるんだよ」

「取り立てて他校の文化祭と変わんねえよ、吹部や軽音よりオケ部の部員が多いからそっちが見所か……劇も多いし? あとは……そうだな手芸部とかも意外と力入れてるらしいぞ。ビーズアクセサリーとかシルバー彫金とか、レザークラフトとか」


オケ部ってオーケストラ部? そんなのあるんだ。そっちにまた部員が多いっていうのも高偏差値学校っぽいよな。

お疲れな優哉のリクエストでラーメンの屋台に移動するけど、あちこちで黄色の声があがる。


「ラーメンは、サッポ○いちばんラーメンなのかな……?」


莉奈ちゃんは優哉と手を繋ぎながらそう呟く。


「安心しろ、莉奈、サッポ○一番ラーメンよりも、お店のラーメンに近いはずだ」

「おみせのラーメン……どんなの?」

「そうか、お店のラーメンは想像しにくいか。幸星が作るラーメンに近い」

「コーセーお兄ちゃんのつくるラーメン! たまごもおにくもおねぎももやしもあるの! 遥香おねーちゃんたべたことある!?」

クルリと莉奈ちゃんが振り返る。

「ないかな」

「おいしーの! コーセーお兄ちゃんこんど、遥香おねーちゃんにつくってあげて!」


そう言っていただけるのは嬉しいんですけれどね。遥香ちゃんラーメン好きならいいんですが。そしてラーメンとかやっぱ市販のスープなんですよ、トッピングで凝るならチャーシューを自家製とかでやるぐらいで、たいしたものじゃないんだけどな。

ていうか、莉奈ちゃん……具無しのサッポ○一番ラーメンが、悲しかったのか。

優哉のライフがゼロになってしまう! もうやめて!


「幸星、莉奈が力説するからチャーシューっていうか煮豚? なんか食べたい気持ち……晩御飯それ作って」


優哉も振り返って、オレにリクエストしてくる。

莉奈ちゃんの言葉を神妙に聞いて、具無しラーメンの一件を反省してるのかと思ったのに……そっちかーい!

屋台の中でも並んでいる一角が、ラーメンらしい。

西園寺君がお客さん整理してる。


「店長~」


オレがそう西園寺君に言うと、優哉はブフォっと噴き出す。

西園寺君、ちゃんとオレの声に反応してる。やっぱ店長ですな。


「真崎ファミリー勢ぞろいできたな。ほら、これ整理券」

「売り切れないよな、西園寺」

「大丈夫、この子にちょうどいいサイズだから」


西園寺君は莉奈ちゃんを見てそう言った。

一人分の量を少なくして回してるってことか。

それを聞いた優哉がほんとうに寂しそうな顔をする。そりゃ莉奈ちゃんにちょうどいいサイズなんて優哉にとっちゃ、おやつだよね。いや、でもコストとか考えると、その量は正しい気がする。


「客寄せパンダになったのに……ラーメンちょっと……」


優哉、そういいながらオレを見んなよ。

わかった、オニイチャン! リクエストに答えるから、そんな顔しないで! 黄色い歓声がまた大きくなるから!



宣伝させてください><

今月8月31日に、ヒーロー文庫さんから拙作「第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様」4巻発売されます!

この話を止めて書籍作業をしたので、面白くなるよう頑張りました。

興味を持たれた方は是非!! よろしくお願いしますm(__)m

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