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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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◆47 優哉の誕生日





えっと、テンパリングって知ってます? チョコレートケーキであるじゃないですかコーティングされたチョコがめっちゃ艶々になって光ってるようなアレ。

それを今、部活で練習中なのですよ。


「真崎少年、キミ、器用だね、結構これ難しいのよ」

「難しいのわかる、わかります! ここなんか、段になっちゃうっていうか……あと周辺もくるりと綺麗に線が出ないようにしたいっす」

オレは隣にいる水島さんを見ると、水島さんはうんうんと頷く。

「大丈夫ですよ、幸星君、コレなら優哉君も気に入ってくれますよ。むしろこの上に乗せるデコレーションを考えた方がいいと思うの」


デコレーションか……。

現在部活中。

そして、先輩にテンパリングの特訓を受けて早一週間です。優哉の誕生日が近くなってきてるのでチョコレートケーキを練習してるところです。

バレンタインのチョコに人体の一部を練りこまれたものを送られてくる男だから、チョコは苦手なのかと思いきや、「綺麗で食えるならいい。別にチョコは嫌いじゃない。むしろチョコは艶々したヤツ、セピアの宝石感があるのがいい」との言葉を受けてチョコレートケーキを作ろうと思ったのだった。

「室内の温度管理が重要だよねえ、まだまだ暑いからクーラー使うでしょ、そうするとチョコが固まるからねえ……」

先輩の言葉にオレは唸った。

ショコラティエは熱との戦いなのか……。

「テンパリング練習一週間でこれだけ艶だしできるのはすごいですよ、幸星君」

「本当!? マジ!? そう思う!?」

「うん」

「褒め上手な嫁だねえ」

ちょ、嫁、嫁って! ほら、水島さんも黙っちゃったじゃん!

「あ……そういえば、これって優哉の誕生日用のケーキ練習なんだけど、水島さんの誕生日っていつ?」

「3月14日……」

「え、水島ちゃんの誕生日ホワイトデーじゃん!」

「真崎少年~奮発しろよ~」

先輩達にやいやい言われました。言われなくても奮発しますよ。当たり前でしょ、だってオレの初めてのガールフレンドですよ! そっか、ホワイトデーなんだ……。

そう思っていたら先輩達にがしっと肩を掴まれて、引っ張られる。

「真崎~おまえさ~サプライズでこっそりとか考えんなよ、女の子の欲しいものは事前リサーチが大事よ~」

先輩から小声でそう言われて顔を上げる。

はいっ!? 何それ!?

「そうそう男ってさそういうの多いんだけど……だいたいアウトだから」

「ねー」

「どういうことっすか!」

何それ、サプライズNGって知らないよ!?

オレがあたふたしていると、遠くのテーブルで雑誌めくってた他の先輩が声を上げる。

「真崎の場合、指輪でも送っとけば? それでいいじゃん」

「それな」

待てー! なんでいきなりそんな重いのを送るんだよ!? 男友達から指輪送られたらアンタ達だって困っちゃうだろ!? その意見、ふざけてんのかマジなのかわかんねーよ!

莉奈ちゃんや優哉と相談しよう。そっちの方がまだなんていうか一般的というか受け入れやすい気がするぞ。

「指輪も、あれよねえ高校生価格とデザインと折り合いつけないとねえ」

「それな、へんなのやっぱ渡されてもつけないよねえ、水島ちゃーん」

先輩が水島さんの肩に手をかけてニヤニヤしてる。先輩が女じゃなかったら、その手ぺチンとはたいてますよ?

そっちを気にしながらも優哉のケーキのデコレーションを考える。

ベリーとか? いやいやベリーは莉奈ちゃんの時にとっておきたいんだよね。飴掛けベリーケーキ。白い生クリームに赤いベリーとか女の子らしい色彩がいいじゃないですかー。

オレはテンパリングしたチョコを見つめて考え込む。

どうしたものかデコレーション。


「優哉、女子のプレゼント、サプライズNGって知ってた?」

「はい?」

「今日部活の先輩に言われたんだ」

お前、何言ってんの的な顔やめてください。

「リサーチしてあげた方がいいんだって」

「りさーちってなあに?」

莉奈ちゃん問いに「前もって調べること」と伝える優哉。

「そうなの……お姉ちゃんに何かあげるの?」

「ううん。まだあげない、先に優哉と莉奈ちゃんがいるでしょ」

「え! 莉奈にもなにかくれるの!?」

「そのうちね~」

「そのうち!? いつなの!?」

「先にオニイチャンね~」

「ドレッシングまぜまぜしたよ! なんで優哉お兄ちゃんが先なの?」

莉奈ちゃんが夕飯のサラダ用のドレッシングかきまぜてくれてたボウルをオレに渡してくる。

「オニイチャンの誕生日が近いからだよ」

オレは冷凍庫からタッパーを取り出してレンチンにかける。これは先日ハヤシライスを作った時に残ったヤツです。優哉が完食しそうだったヤツにストップをかけました。これにデミグラスソースを一缶足します。オムライスの上にかけるソースにしますよ。

あとはサラダ。そしてスープはコンソメスープ。ていっても、冷蔵庫の残り野菜を適当に切ってコンソメでコトコトするだけなんですけどね。

「たんじょうびプレゼントのおはなしなの……はるかおねえちゃんのおたんじょうびなの?」

「それはまだまだ先~」

「水島さんっていつ誕生日なの?」

「3月14日だって」

「へーホワイトデーなんだ」

「うん」

「莉奈のおたんじょうびにはなにくれるの?」

「ケーキは作るからね」

「わーい」

莉奈ちゃんのは迷わないよ、ヘアアクセサリーって決めてる。一番最初に水島さんと会った駅ビルのあのショップ。可愛いのまた買い足してあげたい……いや、まて、これがいかんのか?

莉奈ちゃんはきっと何を贈っても喜んでくれる。だからといって、安易なものを決めていいのか?

小さくても女子は女子、部活の先輩が言うように、リサーチをするべきじゃないのか?

優哉の場合は?

「優哉、お前、何か欲しいものある?」

「おいしいもの」

「……」

お前……漠然としすぎだろ、女子、事前リサーチって何!? こいつへのプレゼントはリサーチして渡してるの!?

「オニイチャン、参考までに訊きたいんだが……」

「なんだオトウトよ」

「じょ、じょ、女子からプレゼントもらったことは……バレンタインは除く」

「最近はないな……手作り系は拒否ってるし、あいつらはどちらかといえばオレから搾取したいだけだし」

じょしいいいいいい!!!

「あと莉奈の前ではあんまりいいたくないものとかも押し付けてくれるが、それは別に適当だし」

オニイチャン! 自分を大切にして‼

「マネージャー一同からってことでバッシュもらったけど」

高校生金ないからなあ。このイケメンに豪華一点を複数でカンパでプレゼントか……。だがそれは絶対受け取ってもらえる。考えたな。

やっぱ下手なアイドルよりアイドルだよ優哉。

「最近はそんな感じ?」

「莉奈ちゃん」

「はい!」

「知らない人がお菓子をあげるって言われても、貰っちゃダメだよ!?」

「もらわないもん。だってコーセーお兄ちゃんのお菓子のほうがおいしいもん」

「莉奈ちゃん!」

思わずぎゅーしてしまった。

「感激してるところアレなんですが、オトウトよ、お兄ちゃんは腹減りました」


かしこま。すぐしたくするっす。オレは莉奈ちゃんから離れて立ち上がるけど、莉奈ちゃんはコアラよろしくオレの足にくっついていた。

バカ兄と言われてもいい、オレの妹、超かわゆす。

ああでも、水島さんのプレゼントどういうのがいいのか女子は何が好きなのか聞きそびれちゃったよ。いやいやまだ半年あるからじっくり考えます。それよりも……。


「おー半熟―! デミソース掛けオムライス!」


オムライスを前に10歳ぐらい年齢下がったか? 的な、テンションあげあげの兄の誕プレをどうするかだな。

翌日、水島さんと一緒に学校からの帰り、自宅近くの駅ビル

「小物がいいと思うんだ」

「お財布とか?」

「いや、秋の財布はちょっと……」

「はい?」

「空き財布って言われて縁起良くないとかどっかできいたことがある」

「そうなの!?」

「迷信みたいなものだから、あんまり根拠ないみたいだけどね」

「そうなんだ……」

いや結構これオレ信じてたんだよね。それで春の財布買ってたんだよ。「張る財布」っていうらしいからって。で、今回この件、ググってみたらあんまり関係なかったみたい。

「で、優哉は実用主義のような気がしている。使ってくれるものを贈りたいので、折りたたみ傘なんかどうかなって」

オレがそう言うと、水島さんは顔を輝かせる。

「いいかもです! これから雨の季節だし」

「でしょー? でも、ほら、オレはセンスないので、水島先生お願いします」

「センスないって、幸星君は言うけど、センスありますよ。だって折りたたみ傘にしようっていうところは。お値段も確かにいいものはいいけど、学生でも買える価格もあるし、これからの時期、使用頻度は高いし、それにすぐに壊れちゃうからいくつかあっても困らないし」

「優哉に合いそうな柄とかが……無難に黒い折りたたみとかだと味気ないし、そう考えるとなんかとんでもない柄を選びそうなので」

「一緒に選びましょう」

助かります。ここは女子のセンスに是非お願いしたい。


「ちょっと待て、なんでいろいろ巻き込んでんの? オトウト!」

はい?

だってお前の誕生日にケーキ作ってって言ったのオニイチャンじゃん?


「やりすぎ!」


力作よ!? チョコデコレーション、見てよ、チョコで作ったんだよ!? RX-78ガ〇ダム!

ストライクとかバルバトスとかだとデザイン細かすぎるから、ここは王道の初期を選んだんだよ! ガンプラのノリで頑張ったよ!?

ビームサーベルの右に1と左に6のろうそくがジョイントできるようにしたんだよ。

テンパリングにろうそく16本ぶっさしたら台無しだろ?


もちろん、オカンとオレと水島さんとで作った夕飯も、優哉の好きなから揚げたくさんだよ!


「いやいや、チョコのケーキじゃない。そのデコレーションもガ〇ダムとかっていうのも、アレだけどね、食うよ? 職人芸並みだし、お前のソレは食えるし、けどなによりもゲスト巻き込んでなにリビング飾ってんの?」


あ、オカンと莉奈ちゃん、水島さんがティッシュで作った花なの?

それとも折り紙で作ったモールですか?

もしかして莉奈ちゃんが画用紙一枚一枚に書いたおたんじょうびおめでとうですか?


「オニイチャン、オトウトも頑張ったんだよ?」

「か、勘弁してくれ、16にもなって何故、幼稚園仕様なんだよ?」


そこへ隆哉さん帰宅。


「優哉おめでとう~幸星君、クラッカー買ってきたよ!」

「わー! 買い忘れてたんですー!」

「何故、親父までノリノリ!?」

「え、だって息子の誕生日だから」

「普通でいいんだよ、幸星、お前、悪ノリしすぎるだろ!」


うん、ここまで優哉が動揺するの初めて見た気がする。

やってよかった。大満足です。

みんな協力ありがとう!







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