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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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◆44 二学期のはじまりは文化祭準備




二学期が始まった。

9月の第一週の土日が文化祭なので放課後は文化系の部活に所属している生徒は忙しそうだ。この学校、文化祭早いよ。学校行事巻いて巻いて授業時間をぶち込むスタイルなのか。

うちのクラスはお化け屋敷。劇じゃなくてよかった……でもないらしい。

問題発生の様子。

夏休み中にちょこちょこ準備をするはずなんだけど、担当がぶっちしたそうだ。

でもって、文化祭実行委員、西村君、一人でこつこつやってた。

夏休み初期の補講の時なんかは、まだ誰かが入れ替わり立ち替わりで準備を進めていたけど、後半なんかはひとりでぽつんと準備していたとか。8月下旬二学期になってようやく放課後人材が確保……文化祭実行委員大変だ。

オレも部活の方でいろいろ準備が開始されてる。

スイーツ部としての出店ではなくて、うちの部が喫茶系のクラスにちょこちょこと助っ人に行く形になるとか……。そこでスイーツ部が考案したメニューを各一品出す。オレが以前作ったなんちゃってタピオカミルクティは採用されました。

屋台担当は必ず衛生管理系の指導を受けることに。視聴覚室で、文化祭屋台において衛生管理のVTRを見せられる。

作業は手洗い必須、作り置きはNG、食材の直置きはNGとか……。

参加できなかった人にもこのレジュメがあるので、担当クラス分コピーしたのを配布してもらう。こういう準備はスイーツ部の先輩が率先してやってた。

来年オレもやるのかこれ。

何気にやっぱり忙しいな、文化祭実行委員じゃなくてよかったけどさ。


水島さんと一緒に視聴覚室から教室に戻ると、西村君と他数人がなんか話し合ってる。


「やっぱダンボール足りない……」

「どうする~?」

「ウチ、スーパーが近所にあるから持ってこようか?」

「え、秋山さん……電車通学だよね?」

「うん」

「無理だろ」

「え~でも~足りないんだよね?」


オレと水島さんはその様子を見てた。


「何してんの?」


オレが声をかけてみた。


「あ、真崎君(おかあさん)もどってきたよーおかえり~」


……教室に戻ってきて「おかあさん」言われるの、何故なのか。


真崎君(おかあさん)、ダンボールがないの……」


発言が子供のそれだろ。秋山さんよ。


「もらってくりゃいいだろ」


「生徒会が用意してたのがもうないの。ウチの近くのスーパーからもらってこようかって言ったんだけど……」

「秋山さんは電車通学だし自転車でも危ないよ」


西村君の言葉は正しい。

自宅近くのスーパーから持ってくるってどうなのさ。学校近くのスーパーじゃダメなのか? 近くにコンビニあるじゃんよ。

そう言ったらコンビニは2、3年生がすでにダンボール不足の際はそこからとっていくらしい。

この時期、学校から一番近いコンビニにダンボールのストックはないということか。

オレはこの場に残ってる人数を数える。オレと水島さん含めて7人か……。


「学校近くのドラッグストアをあたろう。トイレットペーパーとかティッシュペーパー類のダンボールはでかいぞ」


オレはそう言う。

ペーパー類はでかいダンボールで店舗に納品されるんだよね。厚紙包装のところもメーカーによってはあるけど。

アラサーの時、家を出る際、荷物を纏める為ダンボールをもらいにドラッグストアに行ったら、馬鹿でかくて、これはいいと思って漫画本をこれでもかと詰めたら底が抜けた記憶がある。

強度はないが大きさは十分で加工にはもってこいだ。


真崎君(おかあさん)!」


そこ五人でオレを「おかあさん」とか呼ばないように。

学校から10分内のドラッグストアをスマホでチェックして7人で学校の正門を出ていく。


「真崎ありがとう」

「はい?」

「もう準備一人でやってきてオレ、メンタルがお豆腐になってて」


うん。気持ちはわかる。

体育祭も最初の時はそうだった。

高校生、自由すぎんだよ、まとまるまで時間かかるよ。それぞれ事情があるだろうけど、幼稚園児の方がまだ団結力あるよ。


「オレも部活の方で出店準備とかあるから……こんなことぐらいでしか協力できないし」

「いや、もう、真崎のオカンな優しさが沁みるわ。秋山さんもありがとね、軽音部なのに手伝ってくれて」

「いやいや、あたしも夏休みは協力できなかったし」

「ううう、みんなありがとう」

西村君が両手で顔を覆う。ガチ泣きじゃないのはわかるけど。

「富原はなんでここにいないんだ?」

こんな時、率先して西村君に付き合いそうなウチの学級委員長はどうした? 富原がいれば男子だってもう少し手伝うだろうよ。

「委員長は……先輩からのお達しで、男子ウォーターボーイズの練習に駆り出されてしまったんだよ……」

あー富原バスケ部かよー。水泳部の指導の元、水泳部の男子人数少ないから、体育会系の有志で行うウォータボーイズ。うちの文化祭がまだまだ残暑厳しい時期だからできることだけどね!

富原の統率力をアテにしてるんだろうな、あいつならクラスにいる参加者を漏れることなく練習に引っ張ってく。

そっかーそっちかよー。


オレ達はドラッグストアに行くと、店員さんがオレ達に注目する。

そりゃそうか、高校生7人、制服姿じゃ目立つもんな。

オレは責任者っぽい人に声をかける。

「すみません、余ってるダンボールって譲ってもらえますか?」

「あーはい、どれぐらい?」

「西村君どれぐらいだ?」

「あればあるだけありがたいです……」

「全部です」

「6箱分しかないんですけど」

お店の人がもう一人加わって、バックヤードからダンボール箱を持ってきた。まだ畳んでもいないやつだ。

箱の状態を見て何人かが「でっか!」と声をあげる。

だよね、あんまりペーパー類のダンボール箱とかみないもんね、ペットボトルケースの箱ならあるだろうけど。

「ほら、みんな畳め~」

オレがそういうとみんなそれぞれダンボールを畳み始める。お店の人が親切にもビニール紐と手掛けを用意してくれた。

「西村君、足りそうか?」

「あともう少し欲しい……」

西村君が言うと、お店の人が言ってくれたのは……。


「折り畳まって箱にすると折線がくっきりしてもいいなら、もう少しありますよ」

オレは西村君を見ると西村君はうんうんと頷いている。

「それもください。加工するんで問題ないです」

「あ、はい、じゃあ、ちょっと外にでて横に回ってください、そこに出すんで」

「ありがとうございます」

業者回収待ちの折り畳まったダンボールをビニール紐でくくって、ドラッグストアの店員さんたちにお礼を言った。

お店から離れたところで、後ろから声をかけられた。


「真崎すげえーおかあさーん!」

「助かった……。ほんとマジ助かったよ、真崎ぃ~」


泣くなよ。


「オレもあんまり遅くまではいられないからさ、ウチのゴハンつくらなきゃだから」

「こ、幸星君、それを言うから、みんながお母さんっていうのかもです」


水島さんにこっそり言われてオレは視線を遠くに飛ばした。


「あ、お母さんといえば、水島さんのお母さんとお父さんは仕事にまた行っちゃったんだ?」

こっそり水島さんに尋ねると水島さんは頷く。

「あ、はい、先日」

「そうなんだ……じゃ今日は、ウチでごはん食べなよ、これちょっと手伝って帰ると時間なくなるし」

水島さんを見るとゆっくりだけど頷いてくれてた。

よかった。また遠慮とかされたらどうしようとか思ったけど頷いてくれて。


「あー何こそこそ話してんの~リア充~」


秋山さんにそう言われて、オレはダンボールを各々持ったクラスメートに振り返る。

もう帰っていいかな!?

オレお仕事したよ!?

ねえ、隣にいる水島さんと一緒にこのままダンボールを君たちに投げつけて手に手をとって夕飯のメニュー考えながら、帰ってもいいかな、クラブ活動のスケジュール確認したり今日の宿題のことを教えてもらったりさ、それをやってこそ真のリア充と言うのではないかな!?


「幸星君は何作りますか?」


水島さんの声を聴いて、いろいろメニューを考える。

まだまだ暑いからなあ。


「サラダは欲しいな、シャリシャリ食感と辛みが残る玉ねぎサラダ。ほんとはちゃんとスライスして水にさらして作りたいけど、今日はもうパックサラダで許されると思う?」

「全然、大丈夫です。トマトと他の野菜を組み合わせれば量は増しますよ」

「あとメインは何にしようか~」

「幸星君は食欲は戻りました?」

「う~ん……まだ暑いから」

「味はさっぱりの方がいいですか?」

「難しいんだよねえ、魚はコスパが悪いからな~肉がな~」

「やっぱり鶏むね肉ですか、さっぱり煮? バンバンジーでゴマみそだれで味を強くするとか」

「バンバンジーいいね! メインそれで、味にガツンとパンチあるし、優哉も喜ぶかな。さすが、水島さん」

「いつもはタレは市販の加工されたものを買っちゃうんですけれど……」

「タレ作ろうよ、うちでは足りないと思うし! 後で調べよう!」

「スープは卵スープにしますか?」

「ニラと卵でいいと思う? 餡にしてみたい。酸っぱ辛いの食べたいけど、莉奈ちゃん向けにも小分けに作った方がいいかな、どう思う?」


水島さんはうんうんと頷く。

水島さんがいつもみたいにニコニコしてくれてるのがすごく嬉しい。

何気ない毎日の食事、一緒に考えてくれるのが、この子で嬉しい。


「じゃ、オレ、リア充らしいので、水島さんとこのまま帰ってもいい?」


オレが割と本気で西村君に言ってみると、みんな一斉に「ごめんなさい、もうからかわないから手伝って」と叫ばれた。

必死すぎじゃね?





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