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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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34/94

◆33 莉奈ちゃんと花火をした。

 




「ふわ~。すごーい。きれいね~」


 オレのスマホで撮影した墨田の花火大会を莉奈ちゃんは見てる。


「でもやっぱり、人もいっぱい~」


 そうなんだよね、動画はブレて、ついでに観客も映っているから。花火以外もいろいろ撮れているのだ。

 莉奈ちゃんがオレのスマホで花火を見ている間に、オレは今、昼飯用の冷やし中華の麺を茹でてます。

 〇ルちゃんの三食冷やし中華……。オカンが買い置きしておいてくれたやつです。

 ちなみに三食麺の量だと優哉には少ないと思われるかもですが、オレと莉奈ちゃんの分量は半玉ぐらいでいいので、その分を優哉にまわしてる。なのでここは結構なんとかなります。

 ちゃんとあとでおやつも出すつもり。

 おやつ作ってる間も持たなければ、いま夏にぴったりの秘密兵器を冷凍庫に仕込んでいる。

 茹でてる間に錦糸卵、ハム、キュウリ、あとカニカマをほぐす。優哉がいるからカニカマつき。(別に優哉はカニカマが好きというわけではなく、どちらかというとボリューム増しの為です)

 優哉と莉奈ちゃんは学校からもどってきているし、オレもそう。今日はバイトも入ってませんよ。

 莉奈ちゃんはリビングのソファに座って、オレのスマホで先日の花火大会の画像を見ている。


「だから莉奈が行ったらつぶれちゃうだろ」

 優哉も昼飯の用意をしながら、莉奈ちゃんが持っているスマホをのぞき込む。

「お姉ちゃんぐらい大きくなったら、莉奈つぶれない?」

「多分」

「そしたら、コーセーお兄ちゃん、莉奈も花火大会につれて行ってくれる?」

「うん」

「ほんと!? 絶対だよ!」


 ここでうんと言って頷いても、きっと莉奈ちゃんの十年後あたりは、「えーお兄ちゃんと花火大会に行くなんて約束してない~うざい~莉奈は彼氏と行ってくるから~」とか言われるかもしれないことを覚悟しておこう。

 本当は今行きたかったんだよね、……今年の花火大会、他はどこでやってるかな。あとで調べてみよう。


「莉奈は俺には花火大会に行きたいって言わないんだな」


 優哉がそういうと莉奈ちゃんは優哉を見上げる。


「莉奈、大きくなってもつぶされたくない」

「は?」

「優哉お兄ちゃん好き好きいってくるお姉ちゃんたちに莉奈つぶされるの、ヤダもん」


 あ、あの莉奈ちゃん……なんで優哉がモテモテなのを知ってるのかな?

 優哉は莉奈ちゃんの瞳をじっと見る。


「莉奈」

「はい」

「なんでそう思うんだ?」

「だって莉奈の運動会が終わったら、みんな優哉お兄ちゃんカッコいいって、上級生のお姉さんたちが、莉奈にいっぱいお話に来たからです」


 莉奈ちゃんピシっと手を挙げてそう言う。

 おおう……すでにそういう状況だったのね莉奈ちゃん……。

 そして小学校高学年女子……こわっ!


「それにはるかお姉ちゃんは小さいし、莉奈つぶされないもん、莉奈のほうがおおきくなるんだも~ん」


 莉奈ちゃんはくるくる~っとその場で回る。

 物理的な意味でつぶされるってこと!?

 最近の女子こわっ!


「莉奈はちっちゃい莉奈のままでいろ~」


 優哉がぷすっと莉奈ちゃんのつむじに人差し指を押し当てる。

 莉奈ちゃんまたぷくっとほっぺを膨らます。

 でもオレは優哉の言うように「小さいまま」で出来るだけ長くいてほしいなあ。あんまり早く大きくならなくていいよ。

 莉奈ちゃんが小さいからオレ自身が身構えないでいられたんだし。

 大きくなったら、きっと美人さんになって、下手な男にうじゃうじゃと群がられるんだろうなあ……優哉のように。

 うん、ダメダメ、しばらくは小さいままでいてください。


「おにーちゃん、莉奈、早く大きくなるからおひるごはんくださいっ!」


 このクソ暑いのに食欲あるとか、うちの兄も妹も元気でいいことです。




 昼飯終わったら、三時のおやつの仕込みをして、買い物にでかけた。

 戻ってくる頃におやつを作れる。だけどこの時間帯が一番暑いんだよな~。

 オカンから最近夕飯用財布を渡されていて、ほんのちょっぴり、夕飯の材料費より多めに入ってる。

 時々これでジャンクなお菓子も買っていいよってことなんだろうけど、オレがちまちま料理してるからか、ジャンクなお菓子はほんとうにたまーにしか購入しない。

 ポテトチップ食いたいとか言ったら、冷凍フライドポテト揚げて普通に出しちゃうし。ぱりぱりが欲しいと言いながらも「でも腹持ちはする。そして美味しい」とか優哉は言うのですよ。

 ちなみに今日のおやつは寒天ゼリー(コーヒー味)を仕込んできました。

 冷凍庫にある例のブツもあることだし大丈夫だろう……多分……。

 炎天下の中そんなことを思いながら、てくてく歩いていつものスーパーに行く。

 自動ドアが開くと、スーパーの中はめっちゃ涼しい~生き返る~。生鮮食料品が自動ドア前にドーンと配置されてるから冷気がすげえ。

 涼しいから今日はやっぱ肉でも焼く? 生姜焼き? から揚げ? どっちがいいかな? とか錯覚しちゃうんだよ。また一歩外に出れば炎天下だからね。

 それに油ものはあんま食べたくないんですよ。夏バテかなオレ?

 うーん優哉を見習って、少しは朝走る? あいつ朝練ないけど(やっぱ進学校の運動部だからほどほどなのかね?)自主的に朝走ってる時あるんだよね。いやーでもほら基本オレ体力ないからな~お散歩? お散歩とかいいかも? 


 よくねーよ……どこのお達者クラブだよ……。


 そもそもオレが早朝散歩していたら不審者扱い間違いなしだろ。

 いいんだよ、オレはどうせ体力ないインドア人間です。逆再生したからってそこまでやったら頑張りすぎ……。

 朝早く起きてゴハン作るので許してもらいたい。

 さて……そんなことより今日のメインはどうするかな? 鶏むね肉いくか……。

 優哉や莉奈ちゃんはもも肉の方がお好みなのはわかってるんだけど、あっさりしたもの作りたい気持ち。

 でもあんまりあっさりしたもの続くと、飽きがくるんだよねえ。

 この鶏むね肉、スティック状カットして下味つけて、片栗粉つけて、焼いて、タレをかけて絡める。

 肉の味はあっさりだけどタレをがっつり系の味にして絡めたらイケるんじゃね?

 あとは卵豆腐とサラダ~お味噌汁どうするかな~タレをみそだれにしたいんだよね~。

 スープ、スープで、ううん……スープもあっさりと、アサリでいこう。お吸い物っぽくね、うんうん、もうこれでいい。決めた。

 夕飯と明日の朝食と昼食分と、おやつ分も購入してレジに並ぶ。

 そしてレジ横においてある棚にふと視線を置く。

 食べ物じゃないけれど、莉奈ちゃんが見たら喜ぶだろうそれを、オレはかごの中に放り込んだ。




「ただいま~」

「おーおかえりー」


 優哉は玄関先まで出迎えて、オレの買い出しに行った荷物をキッチンに持って行ってくれた。ちなみに優哉はちゃんとお洗濯してお風呂を洗ってくれていました。

 優哉曰く「お前が買い出し料理で俺がなんにもしないとかは、さすがにどうかと?」というんだよ。やっぱりこの子は真面目な子だね。

 オマケにイケメンで頭も良くて、本当に将来有望だよ。


「あー幸星―また莉奈に貢いでる~」

「はい?」


 おやつの準備をしてる横で優哉が食材を冷蔵庫にしまってたんだけど、優哉がエコバッグから取り出したのは花火です。

 そうレジに置いてあった手持ちの花火セットがあったので買ってみました。

 スマホで花火大会見てたからやってみたいだろうと思ってさー。


「わー花火だー!」


 莉奈ちゃんは花火セットを手にして目をキラキラさせている。

 三人分の寒天コーヒーゼリーを用意してると、莉奈ちゃんはオレのシャツをつかむ。


「パパとママと、お姉ちゃんにも花火するって連絡して!」

「え? 水島さんも?」

「一緒にやるの!」


 そうは言うけど、水島さんにも都合があるだろうに……。

 優哉が家族のラ〇ンに莉奈が花火をするということをオカンと隆哉さんに伝え、オレも水島さんに連絡をとってみた。

 オカンが水島さんも夕飯に呼んで早めに来てもらえというので、その旨も伝えると水島さんは快諾してくれた。ごめんね、莉奈ちゃんに付き合ってもらって。

 オレはとりあえず、夕飯作るけど、お惣菜を買い足してとオカンに連絡しました。




 まだ日が沈む前に水島さんには来てもらった。


「お姉ちゃんいらっしゃーい! 花火しよー! ごはんもー夏休みだからお泊りして?」


 ちょ、莉奈ちゃん待て! オレも水島さんも明日まだ学校の補講があるから!

 嬉しいのわかるけど!


「莉奈ちゃん。わたし、明日、学校だからおうちに帰らないとね」

「ううう、学校、なつやすみなのに、学校……」

「そうね、でも今日は花火しましょうね」


 がっくりしてる莉奈ちゃんを宥めるように声をかけてくれるので、莉奈ちゃんも元気をだしたようだ。


「はい!」

「それで、幸星君、いつもお招ばれしてるので、これ、莉奈ちゃんと優哉君と幸星君で」

「わー何々」


 水島さんの手土産に飛びついたのは優哉です。

 優哉……食い物になると子供ですかキミは……。


「……水島さん、これ、作ったの?」

「はい」

「幸星、やっぱお前はオカン力はあるが女子力はないな」


 優哉がふうとため息をついて、オレにも箱の中身を見せる。

 水島さんが箱でもってきたのはキウイフルーツのムースだった。

 グリーンキウイの色がキレイ。


「いやオレ男だし、オカン力も女子力もいらないですし。ありがとう水島さん、よかったらこれ食べて待ってて」


 寒天コーヒーゼリーを盛りつけて優哉に運ばせる。

 優哉の言う通り、おばちゃん力が全開な寒天ゼリーですが、ま、まあね、夏場のおやつってことで勘弁してください。

 ていうかこのムースのレシピはあとで教えてください。見た目から絶対に美味いヤツだよコレ!

 そしてオレの寒天コーヒーゼリーより、さらにおばちゃん力のあるヤツが冷凍庫に眠ってる。だがそれは食後に出そう……。

 手伝おうとした水島さんを止めて、莉奈ちゃんとゲームしてもらって、オレはいそいそと夕飯の準備にとりかかるのだった。




「幸星君のおうちにお招ばれすると、体重増えそうなので困ります」

「ボリューム第一ですから」

「それだけじゃなくて、美味しいし、それに……こういうのもあるから」


 オカンと優哉が食後の後片付けをしている時に披露したのは、水島さんが手に持ってる冷凍バナナです。

 そうオレが冷凍庫にしこんでいたのはコイツです。屋台にでているように串刺しで、でも串なんてないから皮をむいたバナナを割り箸ぶっ刺して、そいつをラップに包んで冷凍庫に仕込んでいました。


「ええ~でもコレ、僕には懐かしい感じだけどな~嬉しいよ、幸星君」


 隆哉さんには大うけだ。


「莉奈も好きー! アイスみたいー! また作ってー!」


 うん莉奈ちゃんにも大うけだ。


「おばちゃん力全開だな、幸星……」

「優哉、お前の分は作らないでいいか?」


 オレがそう言うと優哉はあっさりと「ごめんなさい、マジでアイスみたいでコレ好き」と言ってきた。


「じゃ、莉奈ちゃん、浴衣着ようか」


 オカンが洗い物終えて、手をふきながら、莉奈ちゃんにそう声をかけると莉奈ちゃんは嬉しそうに頷いた。

 オカンに浴衣を着せてもらって、髪を水島さんに結ってもらって、ご機嫌。

 うん。小さいままの莉奈ちゃんでいてください。

 もちろん可愛い莉奈ちゃんを撮影しまくりました。隆哉さんと一緒にね! あんまりしつこいので莉奈ちゃんが花火するの~とむくれてしまったので、みんなでマンションの敷地の一角に花火の準備をして向かう。

 管理人さんには優哉が昼間許可を取ってくれてた。


 水島さんと仲良く手持ち花火をしている莉奈ちゃんは可愛かった。

 浴衣を着て、花火を持つ莉奈ちゃんをオレと隆哉さんで撮りまくったのは言うまでもありません。


「いいねえ、浴衣で花火……」


 隆哉さんがしみじみと呟く。

 被写体がフォトジェニックですから!


「パパもコーセーお兄ちゃんも花火するの!」


 莉奈ちゃんにそう言われて、みんなで手持ち花火を楽しんだ。

 もちろん翌日、莉奈ちゃんは夏休み絵日記に、このことを書き込んだのはいうまでもありません。





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