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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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29/94

◆28 バイト決まりました。

 





 期末テスト終了~。結果は知らん……が、夏期講習強制参加メールがなかったということは、そんなに悪い成績でもなかったようだ。

 優哉先生ありがとうございます。テストを無事乗り切れたのは優哉のおかげかもしれない。苦手ポイントとか訊くとすっごくわかりやすく返ってくる。ほんと優哉は頭いいなあ。ていうか成峰高校レベル高いよ。

 逆再生前はそんなにちゃんと勉強してた学生時代ではなかったけれど、この逆再生でいろいろやり直ししようと思って、オレなりに頑張ってるんだよ、これでも。

 でも一応夏期講習自主参加には申し込んでおいた。

 夏期講習の強制参加と自主参加の違いは、強制参加はマジで補習で、自主参加は割と自由度が高く、例えば学校から出された夏休みの宿題とかをやってもいいとか。

 ちなみにキクタンをはじめとする運動部系に所属する生徒はもれなく強制参加メールが配信された。

 アラサーの時は、子供って夏休みあっていいなあとか思っていたけど。今時の子供、小学生から夏休みのスケジュールびっちりだよ。

 莉奈ちゃんなんて二週間ぐらい学校プールに行かなきゃいけないらしいよ?

 オマケにうちの学校も優哉や莉奈ちゃんの小学校も、夏休み終了8月31日じゃないからね。

 8月下旬から2学期ですよ!

 漫画やアニメやラノベだとさ、花火大会とか友達同士でバーベキューとかそういうのあるけど、実際は結構忙しくてそれどころじゃないな。ていうか友達って言っても、友達の範疇になるか? キクタンや委員長。学校以外でそういうの集まったことないや。運動会とかの打ち上げとか期末の打ち上げとか莉奈ちゃんと遊ぶから不参加だったし。

 それに、派手な感じではないんだよね。大学生はバイトで軍資金それなりにあるから仲良しグループが集まってウェーイな状況とかありだろうけど、大学受験が三年後という高校生にはまだまだ枷があるということか。進学校だとバイトしてるヤツ自体が少数派だし。優哉やキクタンみてると体育会系部活に所属している奴はそっち集中ですし。


「幸星、バイトまだ探してる?」

「探してる」

「オレのクラスメイトの奴が行ってるバイト先行く?」

「どんなん?」

 この際業種はなんでもいいけど時間の条件が厳しい。

 オカンが看護師だからさ、夜勤シフトの時は夕飯の支度とかオレがやるし、週二回ぐらいがギリギリだ。

「輸入食料品雑貨の個人店舗」

 コンビニじゃないんだ!? 小売店でもマニアックなところにバイトに行ってるなあ。

「親戚がオーナーやってて、そこで手伝ってる感じなんだって」

「へー」

「だから週二ぐらいで土日は日中だけど、学校あるならってことで土曜日は免除される。日曜祭日は混んでるとヘルプの電話入ったり、だいたい夕方から夜9時まで?」

 ふむふむ。理想的じゃね?

「うん、いいね。ただなあオレがバイトしたら夕飯……」

「大丈夫じゃん?」

 そうはいうけど、外食冷食お惣菜っていうのも……まあ……毎日ってわけじゃないし週に二回だしオカンも日勤の時もあるし……莉奈ちゃん寂しがっちゃうかな……?

「うん、じゃあ、オカンと隆哉さんにも相談してみるよ、OKが出たら繋いでほしい」

「じゃ、そう知らせておく」

 オカンと隆哉さんからも了解を得て、オレはバイト先に面接に行くことにした。


 輸入食料品雑貨店とか、つまりは小売店で接客バイトってことだよね?

 主な業務はレジ品出し清掃しか想像できないけど、なにより接客か……やったことないから不安だけど、頑張ってみよう。逆再生の15の時よりコミュ力はついてる気がするし。

 バイト先は現住所の、最寄り駅と隣駅の中間にある商店街の中にあった。

 オカンが再婚する前に住んでいた場所は本当に下町って感じだったけど、現住所は結構お洒落なイメージで学生街よりの場所。商店街っていっても、家電屋とか八百屋とかよりカフェやアパレル系店舗や雑貨屋なんかが軒を連ねてて、そこにある輸入食品雑貨店もやっぱり小洒落た感じでした。店内イートインはないけど、屋外にテラス席(?)があって、そこでイートインができそうで、若い女性がお買い物に来てちょこっとお茶する感じなお店の造りになっていた。

 お店に入って、店員さんに声をかけたが、振り返った彼は高校生っぽい眼鏡をかけたひょろっとした子だった。

「あ、もしかして、優哉の弟!?」

「あ、はい」

「俺、優哉と同じクラスの西園寺っていうんだ、よろしく」

 おお、やっぱ頭よさそう。インテリ臭がにじみ出てる。

「よろしくお願いします」

「店長に知らせてくるから、そこで待っててくれる?」

「はい」

 こういう輸入雑貨より本屋にバイトにいそうな感じのインテリっぽいイメージ。成峰に通学してるって言えば頷ける。

 店長はまだまだ若い女性だった。

 逆再生する前のオレと同じぐらいのアラサー女子。

 そんな年齢の人が、都内のこのエリアで店一軒持っちゃうのか……すごいな……。

 履歴書を見せて(これめっちゃ書きなおした。特に生年月日間違えちゃってね!)面接受けることに。

 といっても、すでにバイトしてる親戚の子が間に紹介に入ってるからか、もう最初から採用前提な感じで話が進んだ。入ってもらうなら週二でいいかとか、土日祭日は混んでたらヘルプいれるけどいいかとか、給料日はこの日で入ったら日雇い計算だから、振り込みは今月は日割りに出されて現金渡しになるけどいいかとか。

「えっと、何か質問あるかな?」

 と聞かれて、営業時間とか、今現在バイトに入ってる人は優哉のクラスメイトの他にいるかとか尋ねてみた。

 優哉のクラスメイトの他に大学生の男子と、いろいろ掛け持ちしてるフリーターの男性が土日メインで入ってくれてるようだ。こういう店舗って男性よりも女性が働いているイメージがあるんだけどな……珍しいな。

「こじんまりしてるけど、土日の日中、あと木金の夕方が混むのよね、和希も学校があるから日曜日に入ってもらってる。定休日は水曜日だけど、第二、第四は火、水が連続で店舗の定休日。でも文英か~結構進学校じゃない。木金で出勤してもらっていいかな? そして和希と同じで日曜日と祭日は日中にヘルプにはいってもらう感じで。土曜日は授業の日とかもあるでしょう?」

「はい」

 夏休み明けの9月なんて全部土曜授業埋まってるもんなあ。そうしてもらえると助かる。

 本当にあっさり採用されて拍子抜けした。

 挨拶して店舗を出る時、優哉のクラスメイトの西園寺君に声をかけられた。

「じゃ、来週からよろしくな」

「よろしくお願いします」

「料理好きなんだって? 毎朝優哉の弁当作ってんだろ? あいつめっちゃ自慢してる」

 わー優哉お前、何オレの知らないところで持ち上げてんの!?

 知ってるところで持ち上げられても照れちゃうけどさ!

「ま、毎朝ってわけじゃ、うちもいろいろ都合があるから、その都度で、ついでにって感じですけど」

「敬語いいよ、タメなんだから」

「あ、はい……じゃあ、来週からお願いします」

 西園寺君は、手を振ってオレを見送って業務に戻って行った。

 ともかくバイト決まってよかった。


 家に帰ると、莉奈ちゃんがウサギのぬいぐるみを片手に玄関先で仁王立ちしていた。

「莉奈ちゃん?」

「あるばいときまっちゃったの!?」

「うん」

「なんようびなの!?」

 何だろう……オレ怒られてるのかな?

「木曜日と金曜日……だけど?」

「莉奈と一緒にあそんでくれないの!?」

 うう、そこか……。

「ごめんね」

「莉奈、幸星が家を出るわけじゃなくバイトだろ、ちゃんとおうちに帰ってくるんだから、そんなに拗ねるな」

 優哉が助け船をだしてくれる。

「今度俺と幸星がバイトしてる先にお買い物いこうな?」

 莉奈ちゃんはタオル地でできてるウサギのぬいぐるみを抱きしめて、優哉を見上げる。

「お買い物……」

「どんな感じよ?」

 優哉はバイト先のことをオレに尋ねる。

「うん、なんか想像よりお洒落な感じなお店だった」

「西園寺は外見あんな感じだけど、結構気さくなヤツだから、なんでも聞けよ」

「うん。でもすごいね、アラサーだろ店長、あの年齢で店一軒持っちゃうなんて」

「西園寺の家は資産家だから、本家とか分家とかあるような」

 へえ。まあそうだよね、資本がないとなかなかあの立地で店一軒ってわけにはいかないもんね。

「そんで、従業員が男ばっかりっていうのも珍しいよね」

「……それな、いろいろあったらしいんだよ」

 実は女性従業員もいたらしいけれど、それがちょっと問題ありの人物だったようだ。

 まだ若いフリーターだったらしいけれど、その従業員の一人に片想いして告ったら思いっきり振られて辞めてしまったとか。

「片想いされてた人って、西園寺君?」

「大学生バイトの人だって」

「あ、そう」

「そんで店長がその女に八つ当たりされてて、西園寺が実質追っ払った感じで……」

 うわーお、そんなことがあったのか~。

 店長に八つ当たりとかってまた……。

「もう女性じゃなくて男を雇っておいた方がいいと従業員と店長で話し合って決めたらしい。で、西園寺も探してていい子がいたらってことでお前を紹介してみた」

 若い女性が働きそうな場所なのにな~。

「客が若い女性が多いから、逆に若い男性従業員で固めてみてどうだろうと」

「ホスト的な!?」

「言い方! まあ近いけどな」

 えええ~よくオレ採用されたな~。

「大丈夫、お前、年下可愛い系だから、西園寺とタメに見えないだろ」

「まあ、背が高くてヒョロっとしててインテリ系だったね」

「実際頭いいし、そういうの考えたのあいつだし」

 店長じゃないんだ。

「店長の人が従姉だからいろいろ相談に乗ってるっぽい」

 なるほどね~。

「もーお兄ちゃん!」

 あ、莉奈ちゃんがオレの足にぎゅーしてきた。

 オレは莉奈ちゃんを抱っこする。

「バイトのお金入ったら、お出かけしようね」

「お出かけ! ほんと!?」


「夏休みになるしね」


 莉奈ちゃんはようやくニコニコしてくれた。






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