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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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21/94

◆20 体育祭準備、スイッチ入ったらやる時はやる子よ? 

 




 一学期の間だけでいいと逆再生前に言ってた後輩の言葉。

 体育祭実行委員はその仕事の期間が短いが、内容は濃いと実感する。

 各学年において応援フラッグの作成をクラスの生徒に依頼したり、プログラムの編制もそうだし、生徒会やPTAとのつなぎもやらなければならない。

 クラスでリレーの競技者を選抜させるだけじゃなかったよ!

 体育祭一か月を切ったころから慌ただしく、放課後も残ることが多かった。

 それでもオカンが夜勤の時は免除してくれたから、ブラック企業とは違うな。

 ただ、学校終わって料理したり莉奈ちゃんとゲームしたりする時間が減ってしまったよ。

 なによりも、オレの心を重くするのは、クラスの演目練習がおろそかになっている。

 オレの性格上、教壇の前に立って何か言うのは苦手なのよ……。

 陰キャコミュ障ボッチの弊害がここに……。

 いやいや、それだけじゃないですよ。あいつらどーまとめればいいの?

 一学年スクールカースト最上位女子。

 対立するように、大人しめ真面目、お勉強できます系女子。

 男子は男子でキクタンはじめ結構フリーダムな感じ。

 そんなカオスなクラスで実行委員とか……逆再生したからってコミュ力上がってるわけでもねーだろオレ。

 そして今時の高校生、自由すぎるだろ。

 富原委員長……スゲーな……これを常時まとめてるってちょっと尊敬。

 そんなある日、オレはオカンから聞かされた。


「え……再来週の土曜日が莉奈ちゃんの授業参観?」


 莉奈ちゃんの授業参観お知らせを聞いた。

 ちょっと待てよ、オレもその日、土曜授業が入ってる日じゃねーか……。そんでもって放課後委員会の用事で手弁当持ちで居残りだよ!

 あと小学生、本当に行事みっちりだな。


「オカン……是非莉奈ちゃんの様子を撮影してオレのスマホに送って……」

「それがねえ、お知らせにはビデオの撮影禁止なの」


 ああああああ、なんだよ、それ、ひどい。おじいちゃんおばあちゃんに一年生になった孫の授業風景を撮影して送ることすら禁止ってことかよおおおぉ!

 それもこれも児童の安全を守るため学校側のセキュリティっていうんだけどさ。

 しかもこの日は土曜日だけど給食が出て、莉奈ちゃんは給食当番というじゃないですか!

 ちっちゃい莉奈ちゃんが給食当番の白衣着て白いお帽子被ってる姿、見たいじゃないですかあああ!

 もうオレのSAN値ゼロですよ。

 自室に戻ってフテ寝してたら莉奈ちゃんが起こしてくれたんだけど……。

「コーセーお兄ちゃんおつかれなの?」

「莉奈ちゃん~~ちょっとお疲れかも~~」

「えっとね、莉奈ね、コーセーお兄ちゃんに相談があるの」

「な、何かな?」

「パパの日にパパに贈り物したいの」

 ……6月、暦の上では祭日なんかありませんが、イベント意外と多くね?

 ちなみに母の日は無難にカーネーションでした。

 スポンサーは隆哉さんでした。


「ケーキに『パパありがとう』の文字をいれたいの」


 隆哉さん……付き合いで酒もたしなむが、マジたしなむ程度で宅飲みなんてビール350ml缶一本で終了する人です。

 スイーツも出せば食べる人。

「ケーキか……わかった。一緒に作れるヤツ考えておくね」

「うん! 咲子ママがね、ごはんですよーってお兄ちゃんをおこしてきてくださいって」

「うん、ありがとね、莉奈ちゃん……オレ、莉奈ちゃんの授業参観に行きたかったよ……」

「莉奈のじゅぎょうさんかん、見たかったの?」

「うん。給食当番で白衣とお帽子被った莉奈ちゃん見たかった……ちっちゃい一年生の莉奈ちゃんは今だけなんだよ」

「うーん……よくわからないけど、莉奈わかった!」

「?」

 莉奈ちゃんはオレの部屋から出ていくと洗面所の方へパタパタと走り出す音がした。

 ああ、オカンを手伝わないとな。

 オレは自分の部屋を出てリビングのドアを開けてキッチンへ向かう。

 今日はサバみそ……和食だ。イカと里芋の煮物とほうれん草の胡麻和え。

 玉ねぎと揚げのみそ汁……。

 イカ捌きたかった……。なんか魚介料理って男の料理っぽくてかっこいいじゃん。今度やろう……今日はゴメンねオカン。後片付けはするからね。

 だが、そんなオレにご褒美ありましたよ!

「莉奈―どうしたー、そんなの着て」

 優哉がリビングに現れた莉奈ちゃんを見てそう言った。

 オレは莉奈ちゃんを見て、ダイニングテーブルに両手をついて勢いよく立ち上がる。


「莉奈のクラスは人数少ないからすぐに給食当番まわってくるの、今週は給食当番だったの、コーセーお兄ちゃんが莉奈の白衣が観たいって言ったから着てみたの!」


 莉奈ちゃんの説明の間、もちろんスマホで撮影しまくりましたとも!

 可愛い~。

「コーセーお兄ちゃん、席についてください」

 いやいや、もうちょっと! もうちょっと撮影させて、今度は動画で!

 お茶碗持ってね! そうそう!

 オカンはオレを窘めるどころか一緒になって撮影始めた。

「咲子さん……」

 優哉がやや呆れ気味の声を出しているが、お前、この可愛さがわからんのかああ!

「だって、優哉君! 割烹着を着てお帽子被っての写真、授業参観じゃ撮影できないのよ⁉ 

 撮影禁止なの! レアなの!」

「そう! レアなの!」

 オレも叫ぶ。あ~眼福~。

 隆哉さんにも送っちゃおう。白衣着た莉奈ちゃんの写真を家族のグループラ〇ンに流し、

「ぱぱ、きょうのばんごはんは、さばみそです」のコメントもつけてやる。

 隆哉さん帰宅途中なのか、すげえいっぱいスタンプ送ってよこしてきたよ!

「あとね、コーセーお兄ちゃんの運動会がんばってね!」

 あ~~癒された~~。



 週明け月曜日。

 オレは洗顔後、パンパンと両手で自分の頬を叩く。

 学校行事系のイベントがどんなもんじゃー! 

 スクールカースト最上位JKがなんぼのもんじゃあああ!

 こちとら元アラサーで取引先クレーム対応やサビ残もやってたこともあるんじゃー!

 やってやらあああ!

 逆再生前、ガチで高校生の頃におぎゃあと生まれた奴等ばっかりだろうが、ビビッてどうする。そういうことだよな!


「ザッキーの気迫が怖い。先週までグダグダ言ってたのに……なんだその変化」

 キクタンが呟く。

「オレにクラスを煽動させて大縄跳びの練習させるとか、体育祭実行委員の仕事を何気に振られてる」

 いいや、違うよ? 煽動させてとかいうなよ? 言葉を選ぼうか。

「キクタン、大縄跳びはこの学校の伝統じゃなかったのか?」

「伝統らしいです。オレを使うのはまだいい……クラスの女子のヤル気が怖い。あのザ・JK集団といっていいダンス部がクラスの連中に声かけ練習するとか……お前、兄貴を売っただろ!」

 人聞きの悪いことを言うなよ。

 莉奈ちゃんの白衣を撮ってた時に振り向いて、優哉が苦笑してるところをパシャリとしただけですよ。

 まず、そいつを例のカーストトップの女子にちらつかせた。


「渡瀬さーん、体育祭のことなんだけどー」

「あー? なーにー?」

「渡瀬さんダンス部でしょ? 集団ダンスのフリを放課後とかにみんなにも教えてほしいんだよね。体育祭も近いし」

「えー体育の時間だけでいーじゃーん」

「まあまあ、それで一発で覚えられるとは思えないからさー」

「あたしら、放課後いろいろ予定があるんだけどー」

「そうだよねえ、でもさーお願い!」

「真崎が合コン組んでくれんの? 例の成峰の男子とか」

「いやー合コンはセッティングできないけど、コレならどうよ」

「何それ! 成峰の例のイケメンの写真じゃん! 私服じゃん!」

「激レアですよ協力してくれるなら、この画像を……」

「うーん、でも~それだけじゃ~」

「夏休み明けの文英祭に、来るように誘ってみるけど?」

「マジ?」

「マジマジ」


 お代官様のお好きな金のお菓子でございます。越後屋~お主も悪よのう~いえいえ、お代官様には敵いますまい……的なやりとりを、ちょーっとやっただけですとも。

 ちなみに優哉はオレが屋台系やるなら絶対行くと公言しているから大丈夫。

 ダンス部女子はスクールカースト上位女子が占めてるからな。そこが練習するから居残れよと鶴の一声を上げてくれれば、みんなその気になるというもの。

 オレがただクラス全員に通達しても、グダグダで終わってしまう可能性が高いのは最初からわかっていた。

 餌が必要だっただけだ。

 もちろん優哉の許可はとっている。オレがやってることなんて可愛いものだ。恐ろしいことに、あいつの場合は、すでに無断で撮影されて無断でSNSに拡散されてる可能性があるイケメンだからな。いや拡散されてるだろアレ。

 ともかく、体育祭の為に練習~準備~と取り掛かってしまえば、あとは目的すら忘れて学校行事に取り組んじゃうだろ、途中でだらけねえよ。基本的にこの学校に入る子はそういう傾向があるからな。

「真崎君って……可愛い系の顔してて意外と腹黒?」

 そこの腐女子。可愛い系も腹黒も、オレにとっては誉め言葉ではない……。

「やだなあ、草野さん、草野さんだって期待でしょ」

「イケメンは至宝です」

「だろ?」

「渾身の一枚を描かせていただきます。イケメンの為だけに! 遥香は衣裳をよろしくね!」

 ブレねーな草野さん……。草野さん初め、サブカルチャー好きなヤツや漫研部員にクラスフラッグを任せ、準備をちゃくちゃくと進める。

「水島先生、衣裳担当よろしくお願いします」

 オレはちゃんとみんなにお願いしてるよ? 今水島さんに声かけたみたいに。

 キクタンの発言は誤解だよ?

 水島さんも手先の器用さを見込んで衣裳作りで戸惑ってる子に声をかけて、当日まで仕上がるように促してもらってる。

 もちろん、ダンス部の女子が衣裳作りを丸投げしないように目を光らせてますけどね。

 そしてクラス全員にフリを教えるのもちゃんと見てますよ。

「真崎君、何人か衣裳作り間に合わない子がでるかも……おうちにミシンない子が……」

「OKわかった、ちょっと交渉してくる」

 オレは職員室に走って、家庭科の先生に被服室の空きとミシンの使用許可をもぎとって、その場でクラスラ〇ンに流す。

 よっしゃ、最初はどーなるかと思っていたが、リーダーポジションを決めて声かけしてもらったら、それなりに準備をクラスで進めてくれるようになってきたぞ。

 そもそも、この学校に入れる時点で、持ってるポテンシャルは高い奴ばっかりだろ、あとは当日だな!




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