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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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◆19 コーセーお兄ちゃんの手は魔法の手(莉奈視点)

 



「ねえねえ、5、6年生の人たちが騒いでいたのって、あの二人じゃない?」

「誰のお兄さんなのかなー」

 運動会のため、教室で使っている椅子を校庭に運ぶと、同じクラスで仲良しのみほちゃんとかすみちゃんが保護者の席の方を振り向いている。

 二人の見ている方向を見てみたら、優哉お兄ちゃんとコーセーお兄ちゃんがいた。

「……あれは……うちの優哉お兄ちゃんとコーセーお兄ちゃんです」

 莉奈がそう言うと、二人とも莉奈を見る。

「え⁉」

「うちのお兄ちゃんたちです」

「ええー! 莉奈ちゃんのお兄さんたちなの!?」

「5、6年生の人たちは……なんて言ってたの?」

 ちょっと気になるな。

 なんて言われてるのかな? 

 でも優哉お兄ちゃんならだいたい莉奈にも想像ついちゃうけど。

「カッコイイ人がいるーって」

「うんうん。えっとねJ系アイドルよりもカッコイイって」

 うん。多分カッコイイって騒がれてるのは優哉お兄ちゃんだよね。

 でも莉奈はどっちもカッコイイと思うんだけどな。

 優哉お兄ちゃんはすごーく頭良くて、スポーツも万能で、都内でも有名な公立の進学校に通ってるし、女の子が見た感じは確かにモテモテかもだけど、コーセーお兄ちゃんだって負けてないんだよ。

 コーセーお兄ちゃんは見た目はかわいいけど、優哉お兄ちゃんよりもしっかりしてるし、いろんなことができるんだから。それに学校だって、優哉お兄ちゃんよりも有名じゃないけど、でも割と進学校に通ってるって聞いたもん。

 コーセーお兄ちゃんの通ってる学校は、都内生徒最大数で、一学年300名以上もいるのに、この間のテストで100位以内に入っていたらしいんだよ。

 だから、頭もいいよ。

 莉奈も、コーセーお兄ちゃんが通っている高校には入れるように頑張らないとね。優哉お兄ちゃんの学校は難しそうでお勉強ばっかりなイメージだけど、コーセーお兄ちゃんの学校はなんか自由な感じがするから、そっちがいいな。

 それにね、コーセーお兄ちゃんはすごーく優しいし、器用だし、おうちのことをたくさんやってくれるんだよ。優哉お兄ちゃんはお料理できないけど、コーセーお兄ちゃんは咲子ママと同じぐらいお料理上手で、今日のお弁当だって咲子ママと作ってくれたんだよ。

 莉奈の髪もお団子にしてくれたのはコーセーお兄ちゃんだし。

 もうたくさん自慢したいけど、きっと優哉お兄ちゃんのことをカッコイイって言ってる5、6年生の人たちには、伝わらないかも……。

「莉奈ちゃん、今日はお団子にしてるんだねーいいなー」

「これはコーセーお兄ちゃんが結ってくれたの」

「え? カッコイイお兄ちゃん?」

「ううん、カッコイイってみんなが言ってるお兄ちゃんは優哉お兄ちゃんなの。優哉お兄ちゃんの隣にいるのがコーセーお兄ちゃんなの」

「イケメンって感じじゃないけど、優しそうだね」

 かすみちゃん! わかってくれるのね!

「すごーく優しいよ! 莉奈も優哉お兄ちゃんも、コーセーお兄ちゃんのことすごいって思ってるの。お料理作るの上手でね、今日のお弁当もママと一緒に作ってくれたの!」

「いいなーあたしとおねーちゃんなんてわりとケンカばっかするよー」

 みほちゃんのお姉ちゃんは3年生だ。うちのお兄ちゃんたちは高校生だから、莉奈相手にケンカとかしない。もしもケンカっぽくなったら、莉奈とお話してくれなくなっちゃうと思うから、それはヤなの。

 莉奈はパパと咲子ママと優哉お兄ちゃんとコーセーお兄ちゃんと仲良しでいたいもん。

 けど……莉奈もしかして、コーセーお兄ちゃんを困らせちゃったのかもしれないの。


「莉奈はコーセーお兄ちゃんも参加してるのみたい」


 お弁当を食べ終わる頃、コーセーお兄ちゃんが、優哉お兄ちゃんにPTA競技に参加しろって言ってたんだけど、莉奈はコーセーお兄ちゃんにも参加してほしかったの。

 だって、莉奈のお兄ちゃんは二人ともすごくカッコイイんだよって、みほちゃんや、かすみちゃんだけじゃなくて、みんなにも自慢したかったんだもん。

 優哉お兄ちゃんは嬉しそうにコーセーお兄ちゃんを引っ張っていっちゃったけど、コーセーお兄ちゃんはちょっと困った顔をしていたから、莉奈わがまま言っちゃったかな……。


「莉奈、余計なこと言っちゃった?」


 咲子ママとパパに訊いてみると、咲子ママはニコニコ笑ってる。


「幸星は、運動苦手なところがあるから。でも、逃げ足は速いから、意外と大丈夫かもしれないわね」

「逃げ足……」

 パパが呟く。

「空気を読んでその場を去るみたいな逃げ足もあるにはあるけどそれよりも、実際に危険を察知して逃げる方の逃げ足かな」

「きけんをさっち?」


 どういうこと?

 パパはなんとなくわかってるのかな……なんか心配そうなお顔になったみたいだけど。


「莉奈は幸星君に頑張れって応援してあげないと、莉奈が言ったから、ちゃんと参加してくれるんだよ」


 パパもコーセーお兄ちゃんが心配なのね。

「うん! わかった! 莉奈応援する!」


 スウェーデンリレーに参加してくれた幸星お兄ちゃんは、運動が苦手と咲子ママから聞いていたけど、全然、違った!

 ものすごく足速かったよ! お兄ちゃん達のチームは一番最下位だったけど、コーセーお兄ちゃんが二人も抜いたの! 速かったよ! かっこよかったよ! 

 コーセーお兄ちゃんが一人目を抜くとき、みんながわーわー言ってたの! リレーの時は順位が変わるとみんな声をあげるもんね。

 二人目の時も抜く直前にみんなも「がんばれー」って声をかけてくれてたんだよ!

 ゴール前で走ってる人がいっぱいになったけど、バトンの受け渡しだって、お兄ちゃん達は上手だったもん。

 優哉お兄ちゃんが走ると、女の子のキャーキャーって騒ぐ声が大きくて、一位でゴールした時、ちょっとうるさいくらいでした。



「パパ、こんどの土曜日、みほちゃんとかすみちゃんと莉奈のおうちで、学校のしゅくだいしてもいいですか?」

 いま学校で、かべしんぶんを作ってます。

 みんなノート二冊分並べたぐらいの大きさの紙を配られて、それに一学期にあったことを書くそうです。お絵描きもしてもいいけど、ちゃんと行事のことも文字で書くんだって。それを班の紙に張り付けて新聞みたいになります。廊下や教室の後ろにはるみたいです。

「いいよーでも咲子さんはお仕事お休みかな……」

「いや、オカンは日勤ですよ、隆哉さん。オレも学校。でも午前授業だから、お昼過ぎ午後からだったら簡単なおやつも作れますよ」

「ありがとう幸星君、でも無理しなくてもいいんだよ、予定が入ればそっちにいってくれても大丈夫、市販のお菓子を普通に用意できるし」

 パパは普通に土曜日はお仕事お休みだもんね。

「バイトでも入ってたら難しいですけど、それもないですし」

「幸星君バイトしたいんだ」

「いろいろ行きたい場所もあって」

「え? 旅行!?」

「まさか、普通に気になる博物館とか美術展とかあと映画はアニメ」

 コーセーお兄ちゃんアニメ映画みたいんだ……莉奈もみたい。

「博物館⁉」

「えーとね、博物館系は都内で無料のところとかワンコイン以内の入館料のところはピックアップしてて、あとは交通費ぐらいなんですが。まー博物館系は比較的安いけど、映画と美術展がそれなりなんで」

「意外~気が向いたら僕も休みで暇そうにしてたら誘ってよ、面白そうだ」

 面白そう! 莉奈も行きたい! 楽しそう!

「いまどこから行くか調べてるから、莉奈ちゃん待っててね」

「莉奈も一緒⁉」

「え、一緒に行かない?」

「行きたい! コーセーお兄ちゃん大好きー!」

 莉奈がコーセーお兄ちゃんに飛びつくと、お兄ちゃんは嬉しそうだった。



 土曜日、午後からみほちゃんとかすみちゃんが莉奈のおうちにきた。

 玄関のドアを開けると、二人とも並んで声を揃えて挨拶してくれた。

「おじゃましまーす」

「いらっしゃーい、莉奈のお部屋でやる?」

「うん」

「コーセーお兄ちゃん、パパ、莉奈のお部屋でしゅくだいしてるね!」

 パパはタブレット持ってリビングで何かお仕事してるみたいだから莉奈のお部屋でやることにした。

「莉奈ちゃんのおうち広いね」

「家族が多いからだよ。パパがリビングでお仕事してるみたいだから……」

「莉奈ちゃん、このテーブル使う?」

 コーセーお兄ちゃんが納戸からテーブルを引っ張り出してくれた。

「わー! ありがとうコーセーお兄ちゃん」

「冬用のこたつで長方形のサイズだから、これならみんなで一緒に新聞作れるよね」

 天板に足を組み立ててくれて、天板を拭いてくれた。

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」

 みほちゃんとかすみちゃんも嬉しそう。

 リビングのテーブルと同じぐらいの大きさだからお部屋の中で組み立てると、お部屋ちょっぴり狭くなった。

 でも、折りたたみテーブルよりこっちの方がみんなで出来るね!

 お兄ちゃんはテーブルを組み立ててくれると、キッチンの方へ戻って行った。

 なんかお料理してるっぽかったから、もしかしておやつ手作りかも!

「あ、いまジュース持ってくるからね」

「はい」

 お兄ちゃん、用意していてくれたみたい。

 すぐにオレンジジュース持ってきてくれて、また部屋を出てっちゃった。

 コーセーお兄ちゃんがお部屋から出ていくと、みほちゃんとかすみちゃんは学校で配られた紙とか色鉛筆とクーピーをカバンから取り出した。

「莉奈ちゃん、ママはもしかしてお仕事なの?」

「そうだよ、でもお兄ちゃんがいるから大丈夫。優哉お兄ちゃんが言うには、コーセーお兄ちゃんは主婦だから。ねえねえ、なんの行事にする? 運動会? 遠足?」

「遠足もたのしかったよねー」

 莉奈はあんまり楽しくなかったな。ゆはら君が莉奈の髪引っ張って痛かったし。お団子にした運動会だって、お団子ヘアーをぐちゃぐちゃにしたし。

 みほちゃんとかすみちゃんが、かばってくれなかったら莉奈泣いてたよ。

「莉奈は運動会にするー」

「莉奈ちゃんのお兄ちゃんたちかっこよかったもんね」

「だって遠足はゆはら君が莉奈の髪をぐちゃぐちゃにしたし、運動会はコーセーお兄ちゃんがいたから、お団子ヘアーも無事だったもん」

「あー……ゆはら君~」

「かずきのやつねーあいつほんと莉奈ちゃんにひどいことするよねー」

「こんど、ひどいことされたら帰りの会で言っちゃえ」

「でもあいつ、日直が『これからはやめてください』って注意して、その場で『はい』っていうかもだけど、ぜったいやめないよね!」

 鉛筆で下書きしながら、しゅくだいをすすめる。

「あたしはやっぱり遠足かなーパンダかわいかったし」

 遠足は上野動物公園に行ったんだよね。

「かすみちゃん動物好きだもんね」

「ライオンとかもかっこよかった。うちは猫がいるからライオンとかトラとか同じ猫の仲間なんだよね」

「うんうん」


 一学期の学校行事についていろいろ書いてしばらくすると、ドアがノックされた。

「お勉強すすんでますかー? おやつだよー」

 コーセーお兄ちゃんがトレイになんか乗せてもってきてくれた。

「今日のおやつはバナナパウンドケーキです」

「わー!」

「こっちの方がお土産です、時間を置いた方がしっとりするんだって」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「じゃ、続き頑張ってねー」

 お兄ちゃんはおやつをおいていくと、すぐに部屋を出て行った。

 ドアを開けた時に、玄関の方から「ただいまー」って優哉お兄ちゃんの声がした。

「もう一人のお兄ちゃんはお外に行ってたの?」

「部活なんだって」

「そうなんだー」

 ドアが閉まってるけど、廊下の方から声がする。

「優哉、おやつはバナナパウンドケーキ、今焼きたて」

「幸星―! お前マジで神―!」

 その会話がみほちゃんたちにも聞こえてたみたいだった。

「莉奈ちゃんのところって、お兄ちゃん同士も仲良し?」

 みほちゃんが羨ましそうに尋ねる。

 お兄ちゃん達と莉奈はケンカしないのは年が離れているからかなって思ってるけど、コーセーお兄ちゃんと優哉お兄ちゃんも同じ年なのに、ケンカしないよ。

 でも優哉お兄ちゃんなんてパパより少し背が高いし大人みたいな身体だから、クラスの男子がやってるようなケンカとかはしないと思うんだ。

 もしあんなケンカしてたらおうち壊れちゃうよ。

 それにコーセーお兄ちゃんが「優哉お兄ちゃんのゴハン作らない自分でやりなさい」とか言った場合、優哉お兄ちゃん絶対勝てないもんね。

 見た目は優哉お兄ちゃんが強そうでなんでも出来そうだけど、コーセーお兄ちゃんはそういう意味なら強いと思うんだ。そしてなんでもできるのはコーセーお兄ちゃんのほうだったりするんだよね。

「多分、仲良し」

「莉奈ちゃん! パウンドケーキ、おいしい! 何コレ‼ 手作り⁉ さっきのお兄さんが作ってくれたの⁉ みほちゃんも食べてみなよ」

「ほんとだ! おいしい! バナナの味がするー!」

 あとでコーセーお兄ちゃんに訊いたけど、このパウンドケーキにはヨーグルトも混ぜていたんだって。

「莉奈ちゃんの髪もくるくるお団子にしてくれるし、おやつもつくれるし、すごいね!」

「いいなーみほもお姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんがよかったよー」


 莉奈はちょっと自慢してもいいかな。


「コーセーお兄ちゃんは、なんでもできる魔法の手を持ってる気がするの!」





活動報告にも別途で書きますが、図々しくも宣伝させてください。

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