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アラサーのオレは別世界線に逆行再生したらしい  作者: 翠川稜


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11/94

◆10 JKと寄り道してみた!(だがなんとなく方向が違う?)

 




 焼きあがったチーズケーキを持って下校した。

 ちなみに水島さんも一緒です。最寄り駅が同じだし。この人可愛いから、またナンパされかねないし。

 最近の女子はいろいろ強くて、男子顔負けの言葉を使う子もいるのに、水島さんは今時珍しい敬語JKですよ。

 だからかもしれないけれど、安心して会話できる気がする。

 優哉も気に入ってたみたいだし。

 優哉の代わりと言っちゃなんだけど。お前がこんな可愛いJKのボディーガードができるのかよ⁉ というツッコミがあればごめんなさいと言うしかない。かっこよく助けられないだろう。だが、肉壁ぐらいにはなれる。ここはオレに任せて先に行け(逃げろ)ぐらいにはなるはずだ。


「真崎君、スーパーに寄りますか?」

「寄る、寄ります」


 学生服姿で駅前の食品スーパーでプチシューを買う。「すみませんちょっと寄りたいところがあるので」と、洋菓子コーナーから店舗真ん中の方へ水島さんが行くので付き添う。

 水島さんが足を止めたのは製菓コーナーだった。

「チョコレートを融かして上に掛けるとより一層、豪華感がでます……ただし……」

「言わなくていいです。わかります。ハイパーカロリーです。だけど絶対旨いだろ!」

「なので、参考までに」

「チョコ融かすのか~」

「こういうのもあります」

 水島さんが指で示したのはチョコペンというやつだった。

「アイシング用の名前を書いたり飾りをつけたりするやつですが」

「うーん……これぐらいなら……いいか」

「あの……自分の食材も買いたいので、真崎君は先にお会計してきてください」

「え、カゴ持つよ? ていうか水島さん自炊?」

「はい、事情があって、一人暮らしです」

「マジか! 大変じゃん」

「料理は好きですから」

「えーでも家事やってるんだろ? 料理だけじゃなくて」

 掃除洗濯も、オレはそこんとこはまだやってない。ただし、莉奈ちゃんがいるので、前回の時よりも汚部屋にはしてないつもりだ。

 莉奈ちゃん無邪気に「コーセーお兄ちゃんと遊ぶ~遊んで~」ってオレの部屋にやってくるので多少は片付けている。「お兄ちゃんの部屋汚い」とか言われたくない。

「でも、真崎君もお料理してるじゃないですか、家族のお弁当作ったり……」

 水島さんにそう言われてはっとした。

「やべ冷食! 弁当用! オレも買わないと! 水島さん、ちょっと待って」

「はい」

 今日はオカンも日勤だから、すでに帰宅してるかも? オレは買い忘れた食材がないか連絡すると、案の定お弁当系冷食を忘れていたようだ。

 むむ、やはりバイトしたいな、買い物するとお小遣いがなくなる……。オカンに申告すると戻ってくるけど。料理器具とかも百円ショップでちょろちょろ揃えてると、結構な金額になるんだよね。

 水島さんは慣れた感じで店舗内にあるカゴをとって食材を物色し始める。

「カゴをわけましょう」

「カート持ってくる?」

「いえいえ、そこまでは、ちょっとですし」

「えー今日は何にするの?」

「炊きこみごはんと……カツオのたたきが切り落としで安価なのがあるのでそれを、それぐらいですか……炊き込みご飯はお弁当用に使うので少し多め」

「タケノコ?」

「はい」

「いいねえ……炊き込みご飯か~」

「一人暮らしですからこういうパックを使いますけど、食材ちゃんと加工して作ってみたいです。でもタケノコ……下処理が手間がかかるんですよね……」

「そうなの?」

「糠いれて煮込んで放置っていう感じではあるんですけど、量が多すぎて」

 一人暮らしをしていた記憶もあるから、自炊の量の問題! そういった感じわかる! だからコンビニとかお惣菜の出来合いを買っちゃうんだよな~。社会人だと外食で済ますし、ほんとオレとオカンが真崎家に来る前の生活、パパンと優哉の生活まんまだったし。

「水煮でも量が多いし」

「わかる……タケノコって旬の野菜だけど、炊き込みご飯以外だとどんなのにするの?」

「お味噌汁にも入れたり、ちょっと煮てみたりします。あと中華ならチンジャオロースとか?」

「煮物! 水島さん女子力すげえ! 和食煮物! 男の胃袋がっちりキャッチだね! チンジャオロースも捨てがたい! 市販のソースで大丈夫だよね⁉」

「はい」

「細切りの水煮だとなんか保存液がとり切れないというか」

「細切り、使いますよ。便利ですから。安価ですし。保存液が取れない感じはよく洗って水にさらしておくとあのえぐみがとれます」

「マジ!?」

 オレがテンション高めにそういうと、水島さんは噴き出す。

 クック〇ッドでレシピ検索していろいろ試してるとオレがいうと、水島さんも頷く。

「はい、わたしも参考にしていますが……」

「問題は量だな」

「その通りです」

 うちみたいな大家族……5人は大家族? 今のご時世じゃ多い方だよな。大家族ならあっという間になんとかなる。主に優哉が、あいつバスケ部だから、結構食うし。好き嫌いないから助かるけど。

「水島さんレパートリー広そう、今度レシピ聞いていい?」

「はい、わたしでよければ」

 お互い目的の商品を購入したのはいいけど……水島さん……アナタ、サッカー台で商品詰める時、リュックのサイドバッグからおもむろにエコバッグ取り出したね。

 見た目美少女で声もよくて料理も自炊で、エコバッグ持ちですか……。

 この人、女子力というより主婦力が高いんじゃね?

 ていうかエコバッグ、オレも欲しい! リュックのサイドバッグに仕込んでおきたい!

 お前、逆再生して何で主婦力上げてんだと言われるかもしれないが、オレはこの逆再生は概ね今のところ順調だから、主婦といわれようが構わない。

 だって嬉しいじゃん。

 以前なら会話もなかったけれど、ちゃんと家族できてる。作った料理を美味しいって言ってくれるなら、褒めてくれるなら、嬉しいじゃないか。

 スーパーを出て料理の話をしながら水島さんを送ることになった。

 驚いたことに同じ町内だった。

 莉奈ちゃんの通う小学校の近くのマンションにお住まいでした。めっちゃ近所じゃん。

 前回駅ビルで買い物した時は、水島さん立ち寄るところがあるって言って、駅ビル出たところで別れたから知らなかったけれど……。

 あの時もきっと食材を買いにスーパーに立ち寄ったんじゃないかと尋ねると、水島さんは照れたように笑って「そうです」と言った。

 まあ、何事もなく無事に送り届けられてなにより……。

 さて。

 莉奈ちゃん! お兄ちゃん帰るよ! チーズケーキもあるよ!




 その日の夜。

 チーズケーキで莉奈ちゃんの歓心を買うことに成功した。

「コーセーお兄ちゃん、すごーい! おみせやさんのケーキみたい!」

「アンタ……前から料理はちょろちょろしてると思ったけど、なんかすごいの作ってきたわね」

 スイーツ部で作った例のチーズケーキを夕食後のデザートにだしてみた。

 水島さんの言うようにプチシューで盛ってみたら、やっぱり横で見てた莉奈ちゃんの目がキラキラしてんの。可愛いーなー。

 真崎ファミリー勢ぞろいでオレ作チーズケーキにフォークを突き立てる。

 オカンは珍しく日勤だったから夕飯はオカンにお任せでした。

「美味い……」

「悔しい……息子が……ここまでのモノを作ってくるなんて……」

「おいしーのー!」

「うっま、何コレ」

 うむ、みなさんから美味しいの言葉いただきましたと思っていいのかな。

「ところで幸星、お前、セミナー合宿どこ?」

 優哉がチーズケーキを食べつつ尋ねる。

「箱根」

「俺と同じじゃん」

「幸星、アンタ優哉君と同じよ、セミナー合宿のホテル」

「え、そうなの⁉」

 ……どうだった、15年前は。合宿セミナーのホテルに入ってたのは確か別の学校だった気がするぞ。

「がっしゅくって、なに?」

「学校のみんなでお泊りしてお勉強です」

「えー。いーなー莉奈もがっしゅく行きたいー」

 うん。絶対その発言あると思ったよ。

「莉奈はパパと咲子ママとで合宿行こうか」

「ほんと⁉」

「ネズミーランドだぞー」

「行くー」

 さすが真崎さん。考えてくれたんだね。

 オレ等が合宿同日だと莉奈ちゃん一人だからな。

「私服必要? アンタたち、下着とか私服とか用意してんの?」

「私服いるのか? ジャージと制服のみじゃねえの? 一泊だし」

「タオルとかバスタオルとか必須?」

「や、そういうのは多分向こうにあるかと……」

「とにかく、新調してらっしゃい、はい」

 オカンがオレと優哉に封筒を渡す。うわーお、どうすんの、こんなに渡して。一人につき諭吉一人ってどうなのさ。確かに再婚するまでは結構節約生活だったような気がするんだけどなあ。

「絶対レシートとおつりこの中に入れて返してね」 

 あ、はい。使い込んだら一発でバレるってやつですね。

 うちの経済状況イマイチわかんないんだよね。

 なんか15年前とは違うのか? どうなの? 前はこんな家族で夕食後に手作りスイーツを食すなんて場面、絶対になかった。まず会話自体ないから情報が不明瞭。

 子供の頃のオレが……そう、莉奈ちゃんぐらいのオレが望んでいた家族団らんの風景だよな。

 これ、オレが15年前と同じように家族とコミュとらなかったらどーなってたかね……。

「明日、駅ビルで買い物しねえ?」

 優哉がそう言うと、俺は返事をする。

「……オニイチャンのセンスに丸投げしていいですか?」

 俺が自作のチーズケーキをつついていると、優哉はニヤリと笑う。

 うわー、お前の今の顔、正面から写メっていろいろ拡散していいですかね? クラスラ〇ンに流したらバズるな確実に、特に女子から。


「いいぜ、オニイチャンが可愛いの選んでやる」

「やっぱいいです。ジャージと制服しか着ないんで」

「いや、幸星君のそのルームウェアはどうかと思う」

 パパンからダメ出しが出た。

「え?」

「中学校の時のジャージをルームウェアという感覚はいかがなものか」

 え、だってまだコレ着られるよ。

 動きやすさ一択なんですが……外に出ないし。

「幸星、俺からもお願い。それヤメテ、なんか学校にいる気分になる」

 おうふ……。そうかよ。

「そーなのよー、あんまり外に出ない子だからーわたしもスーパーの衣料品フロアで下着とか適当に買うけど、この子文句言わずに着用するし」

 いや、文句は言ったことがある、確か中学の時、下着はトランクスにしてくれと。

 ブリーフだと弄られそうで怖かったし。体育の着替えの時とかね。

 でもそれはもう過去のこと。


「学生は学生服があればいいんじゃね?」


 オレがそういうとパパンと優哉の目からハイライト消えてます?

「優哉。ウチの料理男子の見た目をなんとかしろ。モテないじゃないか」

 パパンはおもむろにチーズケーキにカツっとフォークを突き立てて優哉にそう言う。

「それな。見た目で損とか……絶対させねえ。というか、コイツ、スペックはいいよ。なんとか手入れしてやる。莉奈」

「はーい」

「幸星お兄ちゃんカッコいい方がいいよな」

「コーセーお兄ちゃんはカッコいいよ、莉奈大好き」

 莉奈ちゃん! オレも莉奈ちゃん大好き!

「お友達家に呼んだら、幸星お兄ちゃんが中学のジャージだとヤだよな?」

「莉奈はいいよ」

 莉奈ちゃん! どこまでもオレの味方!

「友達が、莉奈ちゃんのお兄ちゃん高校生なのに、なんで中学のジャージとか言われたらヤだよな?」

「ヤダ」


 莉奈ちゃん……めっちゃ即答ですか……。


 こんな会話を耳にしながら、今頃水島さんは一人でご飯を食べてるのだろうかと、オレはふと考えてしまった。






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