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蛍雪の美男美女を決めるのは君だ!

誕生日を祝うのを忘れてしまったかわりに

家に呼ばれた柴乃は

なんやかんや馨の自由に振り回される。


そして時は過ぎ、いよいよあれが

開催される・・・

校庭に咲くアジサイが、様々な色に色づいている。

しとしとと雨が降る外の音が、窓越しに聞こえてくるこの季節―


「なあ、高橋。お前、誰に入れた?」


「んなの、柴乃様一択だろ! 宮ケ瀬は?」


「俺も柴乃さん派かなあ~あ、でも姫野様も隅に置けねぇんだよなあ」


通りすがっていく男子達が、口々に感想を言っていく。

私―渕脇柴乃は、その様子をじいっと見つめていた。

もちろん誰にもばれないように、こっそりと。

名前が出てきた回数を正の字で数えながら、にやりと笑みがこぼれる。


「うふふふふ……この調子……この調子で行けば、初の一位が狙える……!」


「お待たせ柴乃~。ジュース買ってきたよ~」


「あ、ありがとむぎちゃん」


「相変らずのぞくのが好きだよね、柴乃は。そうやってると、いつか疑われるよ?」


呆れたようにあんちゃんが言い、ジュースをむぎちゃんが差し出してくれる。

ここ、蛍雪高校では現在待ちに待ったイベントが開催されている。

それはもちろん、美男美女コンテストだ。


私の苦労のかいあって、やっとこの日を迎えることが出来た。

美男美女コンテストでは各学年、各クラス男女二人ずつ選ぶことになっている。

それぞれ自分が可愛い・かっこいい写真を持ってきてそれをポスターのように張り出していいと思った人に投票するのがコンテストの仕組み。

選び方は他人からの推薦でなることの方が多く、自分で立候補するような人は数少ない。


当然私は立候補したからここにいるし、それなりに有名だ。

同じくらい目立つのが、妹にいるせいだとも思うけど。


「で、さっき一位を取れるって言ってたけど、どうだったの? 盗み聞きの結果は」


「変な言い方しないでよ、あんちゃん。当然! 私の方が票が多かったに決まってるでしょ!」


「ほんと、すごいよね。念願の一位を取れるんじゃない?」


「それが……そうもいかないのよね~」


自分が聞いた集計の結果を見ながら、はあっとため息をつく。

今日は投票最終日。すべてが今日で決まる。

確かに姫野には、わずかながらも勝っている。

問題は、そのほかの面子にあった。

なぜなら……


「うおっ、この子やばくね? めっちゃきれいなんだけど!」


「この先輩好きだわ~俺、この人にしようかなあ」


「他の人とは違う魅力を感じるよな! よし、オレもそうしよっと!」


通りがかる人達の決意を、揺らぐような美しさを持つ彼女に一票、また一票と入れていく。

各クラス男女二人ずつ、そのことで選ばれたのは他人の推薦で一番多かったむぎちゃんだった。

昔からスタイル抜群だし、みんなが口をそろえて言うのは分からないでもないんだけど。

去年はいなかった分、今年がどうなるか少し怖い……


「そういえば二人は誰に投票したの?」


「そんなの馨君に決まってるじゃない! ね、あんちゃん!」


「まあ……私がいれなくても、圧勝しそうだけど。紬ちゃんは?」


「私は隼人君。浅沼君のこと、あまり知らないから」


私達が言う投票、というのはもちろん男子部門へのことだ。

うちのクラスにいる不動の一位、馨君は女子からの強制でコンテストにエントリーせざるを得なかった。

私とは違ってめんどくさがってた彼は、代わりに隼人君をあげ、イケメンツートップが並ぶこととなった。

まあ私がいれるとしたら、断然彼なんだけど。


「浅沼君とか誰に入れるのかな? やっぱり柴乃?」


「当たり前じゃない! 私じゃなかったら、他に誰がいるってのよ!」


「でも彼女だからって、入れないって選択肢も考えられるでしょ」


うぐっ……ここで反論できないのがつらい……

あの人ならやりかねない……

確かに前は、お前が一番って言ってくれたけど。

私がこれにかけてることを知ってる分、素直に入れてくれるとは思わないなあ。

意地悪で姫野なんかに入れてたらって思うと……


「うわあ、結構入ってる! 馨も隼人君も、すごい人気だね?」


「ほんとだ~どっちが多いんだろうねぇ、馨君」


「集計するやつの気持ちも考えてほしいもんだがな」


聞き慣れた、声がする。

きゃーきゃー言う女子に囲まれているのは、言うまでもなく馨君たち三人組だ。

エントリーしている二人とは違い、寺濱君は皆のお手伝いがしたいとの理由で係も申し出た。

つまりすこぉし先に結果もわかることが出来るわけで……


「あっれ~? 寺濱君じゃなあい、係の仕事か何か?」


「柴乃さん。ええ、まあ。もうすぐ時間なので、回収しようかなって」


「へぇ~~そうなんだああ? ちなみにぃ、今の段階で一位ってだあれ? 私ぃ?」


「えっ、いや、それは……」


「柴乃ちゃ~ん、そんなげすいこと言って人気下がっても知らないよ~?」


「隼人君は黙ってて!!」


やれやれと肩をすくめる隼人君に、困ったように寺濱君が笑っている。

ちぇっ、そう簡単にはうまくいかないか。

締め切りはなんといっても今日がラストまで。つまり、ここでダメ押しするしかない!


「ねぇ~隼人君に寺濱くぅん。入れる人決まってないんなら、私に入れてくれたりしな~い?」


「あっ、すみません。僕、初日に入れちゃいました」


「なんですって!!!?」


「おい柴乃、頼む相手間違ってるだろ。直樹だぞ? 聞かなくてもわかるだろ」


今度はさぞうれしそうに、照れくさそうにえへへと笑う。

ええ、ええ。分かってたわよ。どうせこいつは姫野だってね。

そして同時に、隼人君が私に入れるわけがないのもまたわかってはいるけど……


「オレは今入れに来たけど、柴乃ちゃんに入れるつもりはないよ~一位になったらなったで、うるさそうだし」


「な、なによ! どーせ最初からむぎちゃんにいれるつもりで……!」


「柴乃ちゃあん。それ以上言うと、その口つぶすよ?」


むぐっと口をつぶされる。

にこにこと笑みを浮かべる彼は、怒っているようにもみえた。

そういえばここには本人もいたことを、あとから思い出す。

持っている紙きれをいっこうにいれないのも、むぎちゃんに見られたくないから……とか?


「あ、もう時間なので僕行きますね。柴乃さん、健闘をお祈りします!」


ぺこりとお辞儀しながら、寺濱君が二つの箱を重ねて持っていく。

他の箱は二人が持つのを手伝いながら、三人は去っていったのだったー


(つづく!)

二年生編では結果だけしか取り上げていなかったので

こうしてちゃんとコンテストが描けて

少し安心しています。

ちなみに私がこの高校の生徒だったら

間違いなく隼人君とむぎちゃんに一票ずつ

いれたいのですが・・・皆さんは誰にいれますか?

生徒になったつもりで考えてみてくださいね♪


次回、栄えある一位は誰の手に!

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