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コンテストで一位を取った柴乃と馨は
その景品で付き合ってから初となるデートへ!
幸せすぎる時間を共にした柴乃に、
また新たな試練が・・・?
時計の針が進むのが、今日は遅く感じる。
何度見たかわからないくらい時計を仰ぎ見ながら、私はまたため息をつく。
「それじゃあ先生、失礼しますぅ。あらぁ、柴乃ちゃぁん。久しぶりねぇ」
教室から出てきた女性が、私を見てたちまち笑顔になる。
こんにちはと小さな声であいさつをしながら、会釈をして見せた。
「見ない間に美人さんになってまあ。すっかり一人前って感じねぇ」
「そんな、言うほどじゃないですよ」
「聞いたわよぉ、美女コンテストで一位なんだってねぇ。杏珠も出なさいっていったんだけど、柴乃ちゃんの応援がしたいの一点張りでねぇ」
「お母さん、余計なこと柴乃に吹きこまないでよ。お待たせ、柴乃」
女性より遅れて教室からあんちゃんが、ため息交じりに出てくる。
すごくおしゃれな服装をしているこの人こそ、実はあんちゃんのお母さんだ。
中学の時からあんちゃんのお母さんとは顔見知りで、よく二人の写真を撮ってくれる。
まあ、あんちゃんついでなんでしょうけど。
「本当のことじゃなあい。杏珠は宇宙一かわいいってパパも言ってるのに」
「またそればっかり……人前で言うのやめてって言ってるのに。ごめんね、柴乃」
「大丈夫よ、私ほどじゃないけどあんちゃんかわいいもん」
「もう、柴乃までそういうこと言わないでよ……」
はあと深いため息をつくあんちゃんの親は、自他ともに認める親バカだ。
一人娘であるあんちゃんが、かわいくてかわいくて仕方がないらしい。
彼女自身はすごく嫌がってるけど、私的にかわいい言われるのはまんざらでもないんだけどなあ。変なの。
「じゃあ柴乃、私先行くね。大変だろうけど、頑張って」
「うん、ありがと」
「柴乃ちゃぁん、お母さんにもよろしくねえ~」
ひらひら手を振る二人を見送りながら、私ははあっとため息をつく。
三者面談。この響きだけで、嫌いな行事だと答える人は何人いるんだろう。
私も、すごく嫌いだ。
だって……
「あっ、お姉ちゃ~~~ん! お待たせ~❤︎」
「姫野……それにお母さん……」
「久しぶりだというのに、その態度は何ですか柴乃。まったく、相変わらずね」
私と姫野の生みの親である、母。
体育祭や文化祭。すべてのイベントに顔さえ出さない人。
にもかかわらず三者面談、PTAなど親が参加しないと悪く思われそうなものには決まって参加する。
私は来ない方がよかったから、あえて連絡さえしなかったというのに……
「それにしても姫野、ママが来てくれて嬉しい~❤︎ パパも元気?」
「ええ、元気よ。仕事休んで姫野に会いたい、とも言っていましたね」
「も~パパったらぁ❤︎」
「おしゃべりは後でもできるでしょ、姫野。先生待ってるから、行くわよ」
二人を連れて、重い足取りを教室へと向かう。
うちの母は多忙だ。
世界を駆けまわって、何をしているのかは私には教えてくれない。
無自覚な金持ちと、前馨君に言われたけどまったく実感がわかない。
そのせいなのか、三者面談で二人もしている時間はないと言い学年主任の先生と私と姫野の四者面談をするという。
なんともまあ、迷惑な話よね。こっち側としたら。
「先生、お待たせしました」
「どうも渕脇さん。わざわざお忙しい中ありがとうございます」
「いいえ、私こそ無理を言って申し訳ありません。二人の近況を、簡単でいいので教えていただけますか?」
お母さんがそう言うと、先生はにこやかな笑顔で私達のことを話しだす。
この前あったテストのことや、最近で言うと美男美女コンテストのことまで包み隠さず話しだす。
私達は極端に点数が低いわけではないが、いいと言える部類でもない。
まったく、こんなにかわいいんだから知能も分け与えてくれてもいいのに。神様ってホント使えないんだから。
「二年の時の進路調査なんですけど、少し意外でして……お母様は、何か聞いていますか?」
「いいえ。そのような話は全く……」
「柴乃さんがデザイナーを専門に学ぶ、専門学校志望……なんです」
そ、そうだったぁぁぁぁぁぁぁ!
一年前のことだというのに、すっかり忘れてしまっていた。
やりたいことなかった私にとって、進路希望なんてどうでもいい。
そんな私を導いてくれたのが、馨君だった。
初詣の時に私の服を見た彼が、コーディネートの才能があるんじゃないかと言ってくれた。
彼にとっては何気ない言葉だったのかもしれないけど、私にはそれが刺激的ですごく印象に残ってて。
だから書いてしまった。デザイナーの専門学校の名前を。
特に何も、相談もせずに。
すっかり忘れてた。三者面談は、主に進路の話をするところだということを!
「二年の頃から就職と聞いていたものですから、ちょっとびっくりしたというか……」
「……柴乃。あなたは、勉強が不得手だったのではないんですか?」
「せ、成績だけの問題じゃないでしょ! ダメもとでって、ていうか……やってみたいって思っただけよ!」
つい怒気が含まれてしまうのは、私の悪い癖だ。
私だって、譲れない何かがある。
人の意見なんて聞く気ない、私は私の道を行きたい。
今まで放任しておいたくせに、ここぞとばかりに口を出してくる親が嫌い。
やってみたら楽しそう、という気持ちだけで始めた学校調べだったけど。
見るうちにすごく楽しそうだって思ったし、何より自分で衣装を選んだり買ったりするのが何より好きでー
「……デザイナー、ですか……昔、人形のお洋服を自分で考えていたのを思えば、その答えは正しいのかもしれませんね」
「おかあ、さん?」
「あなたの好きなようになさい」
その言葉が、私の心を溶かすように入ってくる。
今までむけられたこともなかった、母からの優しい言葉。
私に対しての、母への言葉―……
「お姉ちゃんらしい考えだよね~姫野も、いつかお洋服作ってもらおっかな~❤︎」
「のんきなこと言ってるけど、あんたはなんて書いたの?」
「姫野?? 姫野はねぇ、お嫁さん❤︎」
「はぁぁぁぁぁ???」
「子供の時からの夢なんだ~ねぇ、ママ❤︎」
相変らずの彼女に、呆れて声も出ない。
言われてみれば、幼稚園の時も小学校の時もお嫁さんになるとか言っていた気がする。
そのたびにオレとだの僕とだのと、男子がわんさか寄って来てたっけ。
どっちにしろ……
「姫野らしい答えですが……漠然としすぎてませんか?」
「い~い~の❤︎ 姫野、尽くされたいタイプなんだも~ん❤︎」
「まったく、変わりませんねあなた達は……何かあったら、先生や私に相談しなさい。二人とも、まだ子供なんですから」
いつにもまして、優しく感じるのはどうしてだろう。
やっぱり久しぶりに会うから? それとも、なにかあったから?
聞きたくても、母は仕事があるのでといって私達より先に行ってしまう。
それにつられて姫野もまたね~と言いながら、部屋を後にする。
私も帰ろうかと、先生に挨拶をしつつ外に出るとー
「なんなのよ!!! あんたって子は!!! 誰がここまで育てたって思っているの!」
私のクラスから、甲高い声が聞こえる。
時間帯的に、まだ三者面談をやってるんだろうとは思うけど。
今の時間って、誰だっけ。寺濱君や隼人君は、明日だとか言ってたし……
「来なさい!! 勝手は許さないわ!!」
ものすごい怒った様子で出てきたのは、すらりと背が伸びたお母さんと同じくらいの年代の女性だった。
つかつかと歩いていくハイヒールの音さえも、怒っている様子を物語っている。
一体誰の母親だろうと出てくる人を待っていると、教室から姿を見せたのはー!
「ってぇ……まったく、人前だっつうのに容赦ないのは変わらないな……」
「……馨、君?」
「よお、柴乃。三者面談、うまくいったのか?」
出てきたのはまさかの、馨君だった。
彼の頬には、はたかれたような赤い痕が残っていて、にもかかわらず相変わらずの涼しげな表情を浮かべて見せた。
「うまくいった……はいったけど、どうしたの? それ」
「まあちょっとな」
「あの人がもしかして、馨君の……?」
「柴乃」
私の言葉を待たずに、馨君はそっと口をつぐませる。
彼は優し気な微笑みで、私に
「大丈夫だから」
と額にキスをして見せた。
優しさと強さが見せるその笑みのかっこよさに見とれて、私は気づいていなかった。
彼の笑みがしぐさがそのやさしさが、私に対して見せた彼の強がりだったということにー
(つづく・・・)
初登場、双子のお母さまですが
きっとものすごい美人なんだろうなって思います、はい。
三年生といえばやはり進路、ということで
実は双子姫のキャストにはかなり悩みました。
将来が想像できない子ばっかりだったもので・・・
他の面子がどうなるかも妄想しながら読んでくれるとうれしいです。
次回から夏休み編です。
季節は九月になっちゃいましたが、
双子姫の夏はこれからですよ!




