始まる非日常1
時間が空いて申し訳ごさいません!
澄みわたる美しい、しかしどこか冷たくて儚い声が響きわたった。「もう一度問います。何故あなたが襲われているのですか?」
「ア、アイラさん?なんで君がここに?!」
「私のことはアイラと呼べと言ったはずです。そして先に私のといに答えてください。」
「今日は実に素晴らしい日だ。まさか一日に二つも古代神具が手に入るとは。
ゆけ!デーモン達よ!古代神具を奪い取るのだ!」
俺とアイラさん(アイラ?)と話しているうちにオックスフォードが攻撃してきた。
「うわ!」
俺はその攻撃をギリギリで避け、アイラに呼びかける。
「何故アイラがここにいるのかは知らないけど、今はとにかく逃げるぞ!」
「古代神具が二つ?
なるほど、理解しました。良明は私の後ろに隠れてなさい。」
俺は既に呼び捨てなのか、と思う暇もなくアイラが取り出したのは昼間に見たリボルバー式の拳銃だった。
「そんなおもちゃの拳銃で何をするつもり何だよ?!
とにかく逃げるぞ!」
「ですからおもちゃではないと言ってますのに......」
そう言いながらアイラは赤い銃弾を銃に装填し、目にも止まらぬ速度で早撃ちする。
「本物かよ!」
俺は大声で叫びそうになるが、次の瞬間におきたことによってうち消された。
ボッ!
なんと、周囲のデーモンが炎によって焼き払われていったのだ。
「ななな、何がおきて!」
「さすがは古代神具、デーモン如き相手になりませんか。
ならばこの数ではどうでしょ」
オックスフォードの不気味に笑いながら指をならすと、回りにデーモンが現れた。その数は先程とは比べものにならず、二十は軽く超えているように見える。
「一体何がどうなってんだよ!」
「危ないです、もっと私の後ろへ」
動揺する俺にたいして、アイラはいたって平然として指示を出す。
そしてアイラは裏路地に積んであった鉄鋼に赤色の銃弾を撃った。
だがさっきのように鉄鋼が燃える様子は無く、だがかなりの高温のようで、鉄鋼全体が熱せられ赤白くなっている。
「どうしました?
自暴自棄にでもなったのですか?」
するとアイラはため息をついた。
「水と言う液体は、気体、つまり水蒸気になる時に体積が膨れあがります。」
言いながらアイラは青色の銃弾を取り出し、拳銃に装填する。
「その時、水の体積は1700倍となります。そして大量の水を一気に熱した時におこる水蒸気の肥大化が......」
そしてアイラは銃を撃った。
「水蒸気爆発です」
轟音、そして目が焼き付くような光、そして何よりも全てを焼き尽くすような熱と爆風が、同時に一気に周囲に広がった。
(あっ、これ死んだかも)
俺は心の中でそう呟く。
アイラが起こした現象は要約するとこうだ。
さっき使った、理屈は分からないが熱を操る銃弾を、鉄鋼に撃ち込み高温度まで熱し、おそらく、あの青色の銃弾で水を生み出し、鉄鋼にかけることで水蒸気爆発をおこしたのだ。
(てか、水蒸気爆発を起こす程の高温って、馬鹿げてる......)
通常、水蒸気爆発がおこるよう温度となると、最低でも800度以上、そんな温度を一瞬で生み出せるなんて、まるで魔法だ。
「って、なんで俺生きてんだ」
そろそろ体が高温に耐えられず焼き尽くされてもいい頃だが、一向に死ぬ気配がない。
「安心してください、私の後ろから出なければ安全です」
アイラの声に、俺は胸を撫で下ろすと共に、(なんでもありかよ)と、少しだけ心の中で思った。
そしてしばらくして、爆発の余波はあらかた収まり、辺りを見渡すと、爆心地と思われる場所は円形に大きなクレーターが出来ており、あたりに居たはずのデーモン達はことごとく地面に倒れふし、見るにたえない状態になっていた。
「まさか私のデーモンがこうもあっさり殲滅されるとは......」
そんな中、爆心地のすぐ側に居たはずのオックスフォードは平然としてこちらに話しかけてくる。たが、流石に顔は憎々しげに歪んでおり、相当お怒りのようだ。
「次は貴方の番です」
アイラはそれを予期していたのかオックスフォードに向かって銃を撃った。
アイラの拳銃からは高圧の水が放たれる。
「なめるな!」
オックスフォードがそう叫んだとたん、目の前に巨大な3mはある黒い岩のようなものが現れ水砲を弾き飛ばす。
「まさか、私の古代神具の力があの程度とも思ってたのですか?」
オックスフォードそう言うと不敵に笑った。
「何だ、あれ......動いてるぞ!」
「まさかあれは......」
アイラの顔がだんだんと蒼白になっていく。そんなにまずい物なのだろうか......
「そう。北欧神話に登場し、主神オーディンの右腕を噛み砕いたと言われる伝説の狼!
フェンリルです!」