終わる日常3
「というわけで文化祭のクラス代表実行委員は良明君に決まりました。」
クラスの人気者である宗茂がその人望を発揮したことにより多数決で文化祭のクラス代表に選出されさそっく夜中まで遺された。
「クソ、宗茂、あいつ明日あったらしばき倒してやる!」
すっかり日が落ちて暗くなった道を俺は走って帰っていた。あいつへの文句も口走りながら。
「折角今日父さんが早く帰るからうまい飯屋が食えると思ったのに!」
普段俺は父の帰りが遅いので自炊しているが父が早く帰ってくる日には父に料理をつくってもらっている。これが馬鹿みたいにうまい。
「それにしてもおかしいな、人が少なぇ」
いつもそれなりに人がいる道なのに今日は特別人が少ないと思っていたら前から人が歩いてくる音が聞こえた。
自然と足が止まった。嫌な汗が吹き出す。これ以上進むなと脳が言い、足がこれ以上歩くことを拒否しているようだ。
「あなたが広内良明さんですね。」
前方から急に名前かが呼ばれる、相手が自分の名前をなぜ知っているのかなどどうでもいい。ただ本能的に逃げなくてはと思った。
「お初にお目にかかります。私はオックスフォード、急で誠に申し訳ないのですがこちらも急いでますので直球に。その首から下げているペンダント、いただけますでしょうか?」
「き、急に出てきて人の物要求するとか何考えてんだよ、やる訳ねえだろ。」
声が震える。一言発する事に喉が枯れ、口が乾いてく。
「そうですか、ならば仕方ありません。広内さん...死んでください。」
死という言葉が発されたと同時に二つのことが起こった。
一つは俺がとうとう我慢出来なくなり、その場から逃げ出したこと。
そしてもう一つは
「何だよこいつら!」
ゲームによく出てくるゴブリンのような緑色をした気味が悪い奴らに囲まれていた。
「彼らはデーモン、足の速さは人並みですが力の強さと体力は人を軽く凌駕しますよ。」
とりあえず逃げたがどこへ逃げるべきか考えなかった。
(警察の所!この辺に交番あったっけな。人が多い所に出れば人混みに紛れ込めるか、もしくは騒ぎになって相手が引いてくれるか?)
この時俺は相手より自分の方が有利であると思っていた。一年間高校に行くために往復したみちだ、人混みが多い場所や繁華街などへの近道もわかるし、と。
そして俺はいつも人でごった返している通りに出た...はずだった。
「何で人が一人もいないんだょ!?」
「人払いなど基本中の基本でしょう。」
追いつかれていた?と脳が認識する前に背中に衝撃が走った。
「痛っ」
木刀か何かで思いっきり背中を叩かれたような感覚にあった。何故かはわからないが人がいないということを認識させられた俺は背中の痛みを我慢しながら路地裏へと入っていった。
「この路地裏は複雑だ。俺でも迷っちまう。相手が俺を見失うのが先か俺が道に迷うか」
賭けの結果、本日の運勢、今日の占いの結果は凶だったらしい。
角を曲がったところで行き通りにあってしまった。
「残念ながらもはや逃げ道 は無くなってしまったようですね。では、そのペンダントをいただきます。」
「何でだよ!?俺が何かしたのかよ。いつも通り朝起きて友達と喋って、クラスの美女の変なとこを知っただけのいつも通りの日常だったのに。なんでなんだよ!なんで命狙われてんだよ俺!?意味わかんねぇ。」
背中の痛みがひどくなり、この世の理不尽さに目頭が熱くなってくる。何で何でどうして、何故!
「どうしてあなたが襲われているのですか?」
どこかで聞いたことのある冷ややかな声が聞こえてきた。