狙われた王女 6
投稿が遅れてしまい度々すいません。
時は少し遡る――――――――――――――――――――
乳白色の城壁に背中をひたりとくっ付けながら周囲を見回す影があった。
朝日に照らされ眩しそうに顔をしかめる。
涅色の髪が風に揺れ濃い緑色の外套をはためかぬ様に押えた。
慎重に歩みを進め、内心は真逆に足を速く動かせと叫んでいたが。
気取られてはいけないのだ、余計な心配をかけたと思わせたくないのであれば。
本の少しの音でさえ拾われてはならない。
息を押し殺し更に先の進もうとした矢先、カサリと芝生を踏みしめる音が背後から聞こえた。
不愉快だと見て取れる様に顔を歪めて少年は振り返る。
そこには少年にとって見慣れた真っ赤な癖毛に覆われ顔半分が見えない男が立ち尽くしていた。
いつもは癖毛を押さえつける様に被っているフードが今日は取り払われている。
風によって外されたのだろうか。
「・・・・・わざわざわかりやすい顔をしなくても結構ですよ。こんな所で何をしているんです?」
やや気まずそうに話しかけてくる従兄に言われた通りに表情を真顔に戻すと少年は呆れた声で話し出す。
「顔に出すって疲れるよね・・・兄様はこそここで何をしてるの?」
お互い相手の考えを理解しているにもかかわらず何故か問う。
少しの沈黙の後、共通の認識であることを確認した二人は揃って歩みを進める。
この二人の会話はほとんどが無意味な単語の羅列になってしまうので、特にお互い以外に誰もいない場合は喋らないのが得策だった。
「ルーン王国現王子息、第一王位継承者様の出る幕はないと思うんだけどなぁ」
「我が叔父上にして現宰相の息子の方が出る幕はないと思いますよ?貴方はまだ子供ですしね」
子供という言葉に反応し髪と同色の多多とした猫耳をピクリと動かす。
隣を歩く従弟の微々たる変化に目鋭く気が付いた従兄、シャオフェン・ルーン・カロスは心中で自分自身に毒突いた。
従弟の傷を抉ってしまったからだ。
シャオフェンとラグリアは六つ歳が離れており、他の兄弟達とも四歳程差があった。
成人すれば大した事のない差になるかもしれないが、未だ大人に成り切っていないラグリアからすればその差は埋められない溝となる。
大人達はもちろん、兄弟達もラグリアに対して幼子に接する様な態度を取ってしまう。
ラグリアの能力を信頼していない事は無いのだが、言動が幼すぎるのだ。
それ故か厄介ごとが起こってもラグリアにそれが伝わるのは他の家族が知った後だった。
ラグリアからすれば当然面白くない、いつでも自分を一番に頼ってくれるアルコルに懐くのは当り前の事だったのかもしれない。
(はぁ・・・どうして私はこう・・・・・・余計な事ばかり口走るのか、こんなだからラグリアに嫌われて・・・・・・うぅ“っ)
「兄様どうかしたの?」
気が付けばシャオフェンの足取りは酷く重たい物になっておりそれを見たラグリアが歩みを止め声をかけて来たのだ。
無表情に見えるが自分に向けられた眼差しと声色には心配されている事がよくわかり、シャオフェンは口角を少しだけ上げた。
「・・・・・・・・・・頭でも打った?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
怪訝な口振りのラグリアに、上がりかけていたシャオフェンの気分は一気に降下した。
立ち止まっていた体がへたり込みそうになり、余程衝撃的だったのだなと他人事のようにシャオフェンは感じた。
昔はこんな嫌みたらしい会話等していなかったのに、何時からこうなてしまったのか。
「へばってるなら部屋で休んでた方が良いんじゃない?姉様の所なら一人で行けるもの」
「私の事なら心配なさらなくても結構です。貴方は機転が利きますがあの子の事になると頭に血がのぼって何をしでかすかわからないでしょう?一人で行かせる訳にはいきません」
「顔色が悪い兄様を連れて行って何が出来るのさ?」
「・・・・・私の顔色等見えないでしょう、適当な事を言わないで下さいっ」
「・・・・・・・・・・それ、本気で言ってるの?兄様にはちゃんとラクアの顔が見えてないんだねぇ」
苛立ちを隠さず(無表情ではあるが)話すラグリアに、シャオフェンは何も言い返せなかった。
会話が途切れ、風に揺れる芝の音だけが辺りに響く。
「・・・・・・行こう兄様、姉様の所に」
先程迄の苛立った様子はなく穏やかな声で言われ、シャオフェンは無言でうなずいた。
諸事情により投稿がまた大幅に遅れます。
次の投稿は11月中頃に出来れば(頑張ります)と思っています。
度々投稿が遅れるというのに、すいません
見て頂いている方々興味を持って頂いた皆々様ありがとうございます!!!
本当にありがとう(≧◇≦)!!!