第14話 : この世界について・2
日刊ランキング3位に入りました。驚きで声が出ません……。
はい?
どうしてここが地球なんだ?
俺の記憶が間違ってなければ、地球にいる人間って手から炎出さないよな。いや、手品師は別だけど。後、太陽が二つあるのとか。もしここが異世界ではなく俺達の地球であれば一体何で異能力が存在してるのか、俺には皆目検討がつかなかった。
「そのセンスのない名前は誰が付けたの?」
時雨が俺を見て言ってきた。こいつ絶対分かって言ってる。
「俺だよ。俺の言葉を借りればって言ってるし」
「まぁ、やっぱりあなただったの。センスの無いところがよく似ているわ」
グサグサ容赦なく刺してくるなぁ。
「はいはい。ネーミングセンスのない俺が悪かったよ……」
てか、宇宙船地球号は経済学者のボールディングが考えたからな。つまり俺じゃなくてボールディングをディスってることになるから、そこんとこヨロシク!と内心で注釈つけた。口には出さない。
「さっきの『もぉ』とか言ってた可愛いお前はどこいったんだ……」
あっ。
その代わり、もっと余計なことを口走ってしまった。
「」
時雨が絶句する。ヤバい雰囲気。言い訳しないと取り返しがつかなさそう。
「冗談だよ。冗談」
「」
聞いてなくて、完全に意識が何処かへ行ってる。何か嬉しそうな顔をしているように見えるが、まぁ俺の思い込みだろう。嫌いなやつに可愛いとか言われてもただのセクハラだよな。
「あ~、イチャイチャするのはそこまでにして話続けていいかい?」
「イチャイチャしてないけど、どうぞお願いします」
ミルが話を進めたそうにしていたので、そちらに意識を向けた。時雨のことは今は置いておこう。後々時雨との関係に響きそうなので気が重い。
「僕自身、君たちが地球から来たかどうか確信はなかったんだ。だから昨日の夜に宇宙について詳しく聞いたんだよ。宇宙なんて言葉、異世界に有るわけないでしょ」
あぁ、なるへそ。
「さてと、質問はいっぱい出ると思うけど話が進まないから後回しにするね。
この世界がどうして地球だと言えるのか、何で君たちがここに来たのかを説明するには、まずギフトについて話さないといけない。ギフトカードは持ってる?」
ギフトカード?そういや昨日変なカード貰ったなってポケットを探った。見覚えのない感触があった。そのまま中から取り出す。血がこびりついてパリパリになっていた。隣の時雨は机に突っ伏してバタバタやってた。普通に怖い。
ミルが手を差し出していたのでその手に載せる。
「はい。アウト」
「は?」
「ギフトカードは簡単に人には見せていけない。これ、この世界で生きていく大切なルールだから。ちゃんと覚えといて」
「あっ、そうなんですか」
「僕は悪用なんてしないけど、悪いやつは腐るほどいるから」
そう言ってミルはギフトカードなるものを手で少し払った。多分血粉を払ったのだろう。そして暫し見詰めた。
「へぇ、『沸騰』ねぇ。なるほど。昨日のグリズリーはこれで死んだのか」
グリズリーってただの熊じゃねえか。ハイイログマ。凶悪な魔獣とか考えてた俺が恥ずかしくて死にたくなった。死なないけど。
「はい、ここ見て。数字が書いてあるよね」
椅子から身を乗り出してあるところを指で示した。
そこには太文字で、『沸騰』と書かれてあり、横にはlev,1と記載されていた。
「これが全ての元凶。こんなちっぽけな数字のせいで、元々治安の悪い世界はもっと狂ってしまった」
「はぁ。どんな地球でも一緒ですね」
「そうだね、人間なんてそんなもんだよ。じゃあギフトにまつわることの中でも、ギフトが出現した理由について話そうか」
◇
今から五百年ほど前の十六世紀初頭、当時発見されて間もない新大陸に突如として全く見たことのない力や技術を持った生物が現れた。
それらは強力な力を使って世界を侵略し始め、人類は出来たばかりの銃や火器などで対抗したが一向に効果が上がることはなかった。されるがままの状態で、蹂躙されていくのを市民はただ見ているしかできず意味のない血と涙が流れた。
人々はその侵略者を恐れ、それらの持つ技術や力に絶望した。まさに悪魔だと。そう感じるのも無理はない。それぐらいの圧倒的な力の差があったのだ。
人類は侵略者を総称して魔族、その眷属を魔獣、魔物と呼び、奇妙な力を魔法と呼んだ。
このままでは人類はなす術もなく全滅してしまう。
そんなギリギリの時に生まれたのが『ギフト』だった。
魔族と同じような物理法則を無視した力が使えるようになり、人類を取り巻く状況は一変する。
魔族の一方的だった戦場は拮抗するようになり、やがて魔族に勝利する戦場も出始めた。
そして何十年という時が流れ、人類、魔族共に人的また経済的、政治的損害が無視できなくなり一時的な休戦状態に入った。
その時結ばれた休戦協定は、土地の名前から『ラバル協定』と呼ばれ魔族、人類双方の手によって厳重に保管されているらしい。
休戦状態は二十一世紀となった今でも続いていて、人類と魔族との関わりは事実上ないとされている。
そんな人類の窮地を救った『ギフト』だが、発生原因は今でも不明である。
◇
「どう?今のがギフト出現した理由だよ」
「やっぱり、魔物はいるんですね……」
ちなみにラインハルトの森は今のヨーロッパにもあります。