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第11話 : 「お前の彼女今俺のベットで寝てる」

 味わったことのない強烈な不味さで、俺は本日3度目の気絶をしかけた。まさに死ぬほど不味い。

 口の中から、鼻にかけて青々とした草原(虫付き)が出来た気がした。

 俺は男が右手に持っていた水を引ったくり、残り香を喉に流し込む。

 それでも、粘着性が全然取れない……。

 俺は、恨みがましく男を見て、


「おぇっ」

 

 口を開くと猛烈な吐き気がした。

 それでも俺は言わなければいけないことがある。


「ありがとうございます……。腕治療してくれたんですね。でもこの薬だけはお礼言いたくないです……」


「あ、うん。気にしないで~。でもあんまり動かさない方が良い。神経痛めてるかもしれないし。僕は医者じゃなくて、物理学者だから、専門外なんだ」


 そう言ってニコッと笑った。

 そして、化膿止めなるものが入っていた皿を眺めて、


「このラジウムフラワーの薬って人間に使ったことなかったんだぁ。実験できてよかったよ」


 ん?二つぐらいアウトな言葉が入っていたんだが?

 今こいつ実験って言ったような気がした。


「えっ、実験?」


 すると男は焦ったようで、


「はっ!ち、違うよ?……あっ、そう研究だよ!薬の研究!」


「もう無理ですよ」


 研究も実験とほぼ一緒。研究の中に実験がある。取り繕うのはもう無理だ。


「はぁ……。それで、いっぱい質問したいことがあるんすけど、良いですか?」

 

 俺は諦めの溜め息をついて、男にそう問うた。


「もっちろん!全然構わないよ!僕もするし。ギブアンドテイクさ」


 お前もするんかい。


「君の隣にいた女の子はここに来るなりすぐに寝ちゃってて、まぁ疲れてたんだろうけど、話出来なかったんだよ」


 その瞬間脳に電撃が走った。そんな感じ。

 大切なことを思い出した。

 そう、時雨の存在。


「そうだ……あいつ、時雨って今どこにいるんですか?」


 男はさっきとは違ってニンマリと笑い、


「ふっ、僕のベッドで寝てるよ」


「なっ……なんですと!?」


 まさかの「お前の彼女~?あー俺のベットで寝てるわ」発言!いや別に時雨彼女でもなんでもないけど。

 嘘だろこいつやべぇヤりチ○じゃないか……。

 時雨も時雨だな。初対面の男に体を許すなんて……。

 若干、時雨の本性が垣間見えた気がして、同じだけ若干引いた。いいや、これからあいつのことビッチだと考えておこう。

 俺は男を何故か暗い瞳で見つめてしまった。

 

「うん、というか、僕のベッドって、君が今寝てるやつだけどね」


「は?」


 男はさも当然といった感じで、


「当たり前だよ。だって、僕独り暮らしだしベッドなんて一個しか必要ないから」


「あ?」


 ドウシヨウ。急展開すぎて、一単語しか喋れない。

 隣を見たら俺の体に密着する形で時雨が寝ていた。

 クークー寝息を立てていて、不覚にも、グッときてしまった。

 てか、この男の言い方に悪意があったよな。

 うん。絶対そうだ。勘違いした俺は悪くない。


 時雨に勝手に幻滅してごめんぬと内心だけで謝った。


(『ごめんぬ』とは、謝りたくない時に使う言葉であり、一瞬だけ『ごめんね』に見えるので余計に鬱陶しく、さらに相手を挑発する効果もある。つまり反省してない。ごめんぬ!)


 ◇


 隣で気持ち良さげに寝ている時雨を起こさないように、少し小声で、


「てか、あなた誰ですか?」


「あーそういや、君にはまだ言ってなかったね。僕の名前はミルグラム・ビュッセル。ミルさんとでも呼んでくれ。別にミルでもいいよ、東雲宗くん」


 この白髪まじりの丸眼鏡、ミルグラムが俺の名前を知っていたことに、かなり俺は驚いた。


「ぇ、なんで俺の名前を知ってる……」


「それはこの子が教えてくれたよ?何か不都合でもあった?」


「いや、こいつ俺の名前知らないはずなんだけど……」


「ふ~ん。あっそ。この子が起きたら自分で聞けば?」


 ミルは心底興味無さそうに言った。

 そりゃそうだけど、ここまで明け透けに興味ないって言われると傷つくものがあるような、ないような……。


「ところでさ、君達ってどこの人?見た感じ王国の人間じゃないよね。服装もだけど、まず顔の作りが違う」 

 

「いきなり、質問ですか……」


 切り替えが早い。早すぎる。

 てか、バリバリ質問する気満々だ。

 窓の外は触れたら吸い込まれそうなほどの闇。

 絶対に遅い時間だ。


「ゴメンゴメン。本当に色々聞きたいことが有ってさ、時間が惜しいんだ」


 ミルは顔の前で手刀を切って、謝る素振りを見せた。


「明日じゃダメですか?俺疲れてるんですよ」


 心から俺はそう思った。いいじゃん明日で。

 するとミルは頭を振って否定する。


「ダメだよ!生まれた疑問はすぐに解決するべき!悶々として眠れなくなっちゃう」


「……あー」


 理系あるある。

 疑問を疑問のままにしない。

 いや、この場合は意識高いと言うのか。

 まぁ、どっちでもいっか。

 理系に疑問を与えてはならない。


「あの、質問したいのは俺も同じっていいましたよね。けど、質問をするだけ~とかされるだけ~なのはフェアじゃないですから交互にしましょう」


「うん!そうだね。それがいい」


 ただ、俺が楽したいだけの提案にミルは大きく頷いた。


「じゃあ、さっきの質問に答えます。俺と時雨は宇宙船地球号日本支部から来ました」


 端から真面目に答える気がない俺の回答。

 命を助けて貰った人への仕打ちじゃねえ。

 反応を見るためにミルの方を向くと、ミルは腕を組んで、ぼそぼそと独り言を呟いていた。


「宇宙、地球、日本。多分この順番に大小関係があるのだろう。日本を仮に最小単位『国』として置くなら、地球は『大陸』いや、ニホンが島国で在る可能性も含むと、海洋の名前か?なら、宇宙とは一体……」


 今俺はクッソ余計なことをしたんだと心から思った。深夜テンション、かつ貧血気味の脳はアホすぎた。

 さっき自分で言ったじゃん。

 理系には疑問を与えるなって。

 宇宙なんて永遠の謎解きだし……。

 ゴキブリ体液よりよっぽどロマンだから。


 さっき、頭良くて性格悪いやつっぽいなんてミルのことを予測したが違うかった。

 第三勢力。頭良くて純粋バカだった。

 ハイブリッドとかホント面倒くさい。



宇宙って漢字で書いたのにはちゃんと理由があります

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