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【短編】大好きなキミと〇〇したい

【短編】[NL]初めてのキスは思い出に残るように

作者: 小池りん

「カナ・・・」

そう言って、優しく手を握ってきたのは彼氏のソウヤ。


「・・・?どうかしたの?」

ソウヤを見つめて言うと、彼はまっすぐ私を見て言った。


「今日は楽しかったね。」

彼は優しく微笑んだ。


今日はホワイトデー。

バレンタインのお返しにと、彼がデートに誘ってくれた。

2人で見た夜景はとてもロマンチックで、ディナーも美味しかった。

後から気がついたけど、あのレストランは、なかなかのお値段のようで、私の為に予約してくれたと聞いた時は心底嬉しかった。


「うん。楽しかった。色々準備してくれてありがとう。ソウヤ。」


「そう、喜んでくれたみたいで良かった。」


「もう一生忘れないよ。いや、ソウヤのおかげで忘れられない日になった。」

そう言って、手をきゅっと握り返す。


「あ、あのさ・・・、もっと忘れられない日にしてみない?」

顔を赤くして言う彼。


「もっと忘れられない日にする・・・?」

私がきょとんとする。顔赤くしてどうしたんだろう。


「あー・・・、だから・・・、その・・・」

何か言いづらそう。


「ねぇ、ソウヤ。今日なんか変じゃない?」


「そ、そうかな・・・」

彼がぱっと背を向けた。


私は回り込み、またソウヤの前に立つ。

「そうだよ!優しいのは変わらないんだけどね、なんだか今日は、積極的というか・・・、いい意味で強引というか・・・」


「まったく、カナは本当に思ったことをなんでも言うよね。

でも、まぁそこが好きなんだけどな。」

はにかむ彼を見て、少し顔が赤くなった。


「・・・ほら。いつもなら『好き』なんて(ほとん)ど言わないのに。」


「なんだよ、失礼な。好きくらい何度でも言うよ。・・・好きだよ、カナ。大好き。」

私を愛おしく見つめて言ってきた。


「〜っ!・・・ばか。」

恥ずかしくて視線を逸らす。


「目、逸らさないで。カナ・・・こっち向いて。」


2人で見つめ合う。

何故だか、2人だけ時間の流れが遅く感じる。


「カナ、いつもありがとう。カナと出会えて、俺幸せだよ。」


「私こそ、いつもありがとう。大好きだ・・・」


私が言い終わる前にぎゅっと彼が抱き寄せた。


「!!ソ、ソウヤッ!?」


「そんなに驚くこと?」

ソウヤは涼しい顔をして言う。


「で、でも、急だったから・・・っ!」

私は、ますます赤面する。


「その反応すっごく可愛いよ。ふふっ。」

やっぱり今日のソウヤ変だ・・・!


そして、私はソウヤのある言葉を思い出す。

「そういえば、さっき言ってた『もっと忘れられない日にする』ってどういうこと?」


「あ、あぁ。」

何故はぐらかすんだろう。


「なになに?気になるじゃん。」


するとソウヤは耳元で

「ねぇ、カナ?」

なんだか、くすぐったい。


「ん?なーに?なんか、耳元で囁かれるとドキドキする。んふふっ。」

恥ずかしくて笑って誤魔化す。


「ねぇ、カナはさ、キス・・・したことある?」

『キス』と言う単語に心拍数が上がる。


「へっ!?」

いきなりすぎて変な声が出てしまった。


「その感じは・・・ないの?」


「なっ、そそそ、そんなこと・・・」

耳まで真っ赤になったから、彼の胸元に顔を(うず)める。


「もう本当に可愛いよな。」

ソウヤは私の頭を撫でる。


「カナ、顔上げて。」


「やだ。恥ずかしい。」


「・・・、あっそ。じゃあ、今日はもう帰るか。」


やだと、声に出す前に顔を上げるとソウヤの顔がキス出来てしまう距離にあった。


「っ!ご、ごめん・・・!」


「なんで謝るの?」


「顔近かったし・・・それに、まだ帰りたくない・・・」


「あたりめぇだろ。あと・・・」

そう言うとさらに強く抱き締めて耳元で囁く。


「・・・まだ帰さねぇから。」


「カナ、こっち向いて?」

彼の要望に応える。


「カナ、大好きだよ。カナの初キス、俺が貰っていい・・・?」


私がこくんと頷くと2人で見つめ合う。

ソウヤがそっと私の頬に触れる。

この時間がとてももどかしい。

ゆっくり近づく彼の顔。

こんなに近くで見たことは無くて、全身心臓になったみたいだった。

目を閉じる。


―・・・コツン。


驚いて、お互い目を開ける。


「歯当たっちゃったみたいだな・・・。言ってなかったけど、実は俺も初めてなんだ・・・。だから、すっげぇ緊張してて、手めっちゃ震えててさ笑」


「・・・全然分かんなかった。私も、全然余裕なくて・・・」


「もう1回しよ?・・・やり直し。」


「うん・・・。」


もう一度目を閉じる。

彼が近づいてくるのを感じる。


唇が優しく触れ合う。


唇が離れて、お互い顔を見合う。

私は自分の唇を指で触る。


「今、本当にキスしたんだ・・・。」


「カナ、顔真っ赤だよ?」


「分かってるよ!ソウヤも人のこと言えないからね!」


「俺も分かってる。」


「ソウヤ・・・。」


「ん?」


「初めてのキスがソウヤで良かった。えへへ・・・ありがとね。」


「俺もカナで良かった。だいす・・・」

私は、ソウヤが最後まで言う前に、胸ぐらを掴んで引き寄せる。

もう一度キスをした。


「んっ!?」

ソウヤがとても驚いてる。


離れて私が言う。

「もう1回ちゅーしたかったの。」

照れ笑いをする。


「あ〜・・・、本当カナ可愛すぎだから。」


「そんなに可愛い可愛い言うな。・・・恥ずかしいじゃん。」


「しょうがない。可愛いカナが悪い。・・・さ、今日はもう帰ろうか。」


「うん、そうだね。本当に今日はありがとう。」


「俺の言った通り、忘れられない日になっただろ?」


「うん。死んでも忘れないよ。きっと。」


「ふふ、良かった。・・・んじゃ、またな。気をつけて帰れよ。」


「分かった。ありがとう。」

私が背を向けて歩き出すと


「待って!」

ソウヤに呼び止められる。


「?」

振り返ると、ソウヤが近づいてくる。


「どうしたの?」


「やっぱり、今日家まで送ってく。」


「え、でも、家反対方向だし・・・、悪いよ。」


「俺が送ってくって言ってんだから、いいの。」


「でも・・・」


「その優しさは嬉しいけど、今日はどうしてもなの。」


「なんで?」


「それは・・・っ、・・・少しでも長く傍に居たいんだよ。ばーか。」

少し顔を赤らめて言うソウヤを見てキュンとする。


「ばかって言うな!・・・もう、しょうがないんだから。・・・ほら!」

手を差し出す。


「手、繋いで帰ろう?」


「あぁ。そうだな。」

ソウヤは微笑んで手を繋ぐ。



手から伝わる温かいぬくもりをこれからも大切にしたいと思った。

今日は私たちにとって、忘れられない、いや、絶対に忘れない日になった。

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