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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
エルフィン族の武道大会
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ローラン・テルロ登場

「な、なに?どういうこと?」

 突然の相手選手退場にエマは全く状況が飲み込めずにいた。

「相手選手の試合放棄でレイさんが勝ったのよ。」

 さすがのエマにもそれは分かる。

 わからないのは何故あのピクシーの選手が試合を放棄したのかだ。

 

「とにかくレイさんは勝ってこれで本戦出場は決定したわ。」

 しかしあれだけの体格差を物ともせずに戦って勝ち上がって来たであるから場内はいまだにざわついている。

「そっかーっ!これでようやく皆で本戦に出れるのね。」

 状況は飲み込めないがとにかく結果は出たのだ。

 

「今度はマイリージャの選手の試合ね。」

 見るとゲルド・ミシュラーが試合場に上がってきていた。

 相手はやはり人族の剣士らしい風体のごつい体をした男であった。

 

 会場の進行係の席で本戦出場の登録を終えたレイがこちらに向かって手を振る。

「あたしレイさんの所行ってくるなの。」

 ラフレアがそう言い出した。

 そうだねレイさん試合も終わったし別に試合を見るよりレイさんのお祝いに行かなくちゃ。

 

「私は次の試合を見てから行くわ。これが男子の最終戦だから。」

「そうね一緒に見て行きましょう。」

 アイーラがそう言うので子供達と一緒にレイのいる控室に向かった。

 5人が控室に着くとレイはまだ控室に戻っていなかった。

 控室の前の廊下にはなぜかエルフィン族の娘達が何人もがたむろしている。

 

「何なのかしら?この娘達達は?」

 そこにようやくレイが試合場から戻ってきた。

 女の子達は口々に何かを叫びながらレイの周りに集まって手に持った物をレイに手渡そうとしている。

 レイも面食らったようであるが女の子達囲まれて嬉しそうに笑っている。

 

「レイさんプレゼンといっぱいーっ。」

「すごく嬉しそうに笑ってるー。」

 だめだよ、二人ともラフレアちゃんの前でそんなこと言っちゃ。

 

 ラフレアちゃん暴れたらどーすんの。

 

「むむっ!」

 あ…、やっぱりなんかラフレアちゃんの顔が怖い。

 会場係らしい人とモイエラが女の子達を制しながらレイとガルドを控室まで誘導する。

 両手に山盛りのプレゼントを受取りながらレイは控室に入っていった。

 

 アタシ達も入ろうとしたら会場係の人に止められる。

 止めてよその辺のミーハーと一緒にするのは。

 ラフレアが本戦出場証を見せるとアタシ達も通してもらえた。

 

 控室ではモイエラがレイの汗を拭いている。

「レイさん!おめでとうなの!」

 ラフレアがレイに抱きつく。

 スイカが邪魔してるけど思いっきり抱きしめてる。

 

 あ、レイさんのアバラが折れる。

 

「ラ、ラフレアちゃん少し力を抜こうね。」

 かなり息絶え絶えな感じでレイが優しく制止する。

「あ…、レイさんごめんなさい、ラフレア嬉しかったなの。」

 慌ててレイから離れるラフレア。

  

「いやいや、僕もこんな熱い抱擁は初めてだったよ。」

 レイは大きく息を吐いた、実際はかなり痛かった様だ。

 うんうん、真っ赤になっちゃって、分かりやすくてすごく可愛いよラフレアちゃん。

 

「ゲルド・ミシュラーはどうなったんでしょうね、僕の後の試合でしたが。」

「アイーラさんが見ているから後で聞けばいいわよ。」

「レイさんに早くおめでとうが言いたくてラフレア急いで来たの。」

「あろがとうラフレアさんこれで皆で本戦に出られますね。」

 レイがニッコリ笑ってラフレアを見つめる。

 

「ラフレア優勝するの今年こそ絶対に優勝するの。」

「そうですよ、ラフレアさんも昨年だってアクシデントが無ければ絶対優勝出来ましたからね。」

「その点は私も否定できないわね。でも今年勝ち上がって来ても絶対に負けないからね。」

 おお、二人とも燃えている。あたしはラフレアちゃんに勝てる自信はないなーっ。

「去年の様なアクシデントは絶対に起こしません。私が研究に研究を重ねましたから。」

 

 おいガルド、あんたそんなに何度もラフレアちゃんの胸にサラシを巻いたのか?

 いやそういう意味じゃなくてさ、スイカだからさ~。

 

「レイさんおめでとうございます。」

「エルーラちゃん達も見ててくれていたんだね。」

「レイさんすごーくかっこよかった。」

「ありがとうティンカー、君も来てくれて嬉しいよ。」

「最後の人強かったのにどうして帰っちゃったの?」

 

「うん、それは分からない。僕が勝てる要素が有ったのかどうかすら分からないんだ。君たちはどう見たのかな?」

「私はずっとセコンドとしてあの人を見ていましたが、ジャルガ選手には試合をやっている間全く必死さを感じませんでした。」

「必死さ?」

「相手に勝とうと思えばどんな選手も必死で戦うものです。ところが彼にはそのような感じはなく、はっきり言えば余裕を持って戦っていました。」

 

「モイエラ、君もそう思ったのか。」

「これは推測ですが彼には本戦に出るつもりが無かったと考えられます。」

「もしかして自分の実力を確かめて見てレイさんと戦って勝てると感じたので十分と思ったのかもしれません。」

「ガルド酷いなの、レイさんは負けていなかったなの。」

 

「たしかになあ、あの剣は暗殺剣だから本来試合なんかする剣じゃない。相手を殺して剣技の秘密を漏らさないようにするような剣だったね。」

「あれ以上やると本当の殺人剣が出てしまうのを危惧したのかもしれませんね。」

 重苦しい空気がその場を支配した時にアリーナさんが戻ってきた。

 

「どうしたの?皆黙り込んじゃって、あのマイリージャの人本戦出場になったわよ。」

「結局ゲルド・ミシュラーが本戦出場に決まったのですか。」

「すごかったわよ同じ剛剣の使い手だったから剣の打ち合いと言うより完全などつき合いと言う感じになっちゃってんね、最後には相手の剣が折れちゃって判定負けになっちゃったの。」

「なんちゅう試合だったのよ?」

 

「まあ、ちょっとああ言う試合にはしたくはないわね。」

「それでは皆さんの試合も終わったことですし、私の道場でお食事に致しましょう。」

「ゼンドレ、私も同行させてもらいます。」

 モイエラ?お前もか。

 

 その時控室の外が騒がしくなった。

 

「何かしら?」

 ドアをノックする音が聞こえたのでアリーナがドアを開ける。

 黄色い声が一気に激しくなる。

 

「な、なに?」

 ドアの所に背の高い痩身の男が立っていた。

 背が高いと言ってもレイほどではなく、体も相当に細い。

 その後ろには何人もの女が押しかけており入り口に立っていた男が女たちを押さえている。

 

 男はエルフィン族では有ったがエマの基準からしてもかなりの男前だった。

 まあレイも結構な二枚目だけどね。

 

「ローラン・テルロ。」

 男を見てレイが前に進むと女の声が更に大きくなる。

「やあ、一年ぶりだね。」

 ローランと呼ばれた男は急いでドアを閉める。

 

「相変わらず女の子に人気が有るね。」

「ま、まあ大会の間だけだよ。これも有名税と言ったとこかな。」

 ぱっとその長い髪を振り上げる。金色の髪に通った鼻筋の彫りの深い顔。凶器になりそうな長いまつげ。

 

 うん、文句なしの美男子だね、アタシの好みじゃ無いけど。

 

「おお、これはかわいいお嬢さんたちだ、君たちもレイさんのお友達かい?」

 エルーラとティンカーに向かって微笑みかける。

 コラコラ、子供に手を出すんじゃないぞ。

 

「は、はい。エルーラと言います。この子はティンカー。」

「お兄ちゃん、格好いいです~っ。」

「ありがとう、僕とレイさんの対決をぜひ見て下さいね。」

 あ~あ、二人とも赤くなっちゃって、この女たらしが。お前のストライクゾーンは無制限か?

 

 未来に対する営業だという事でしょう。

 どこからかシドラの声が聞こえる様な気がした。

 

「だれ?あの人?」

「ああ、貴方は知らないわね。あの人は去年レイさんと決勝を争った人よ。」

 去年礼を破って優勝したエルフィン族の選手はこんな優男だったんだ。。

「そうは言うが君の人気も大したものなんだぜ。女の子が結構追っかけていただろう。」

 

 どうも去年の結果で女の子の追っかけがレイにも出来たらしい。

 確かにレイはエルフィン族と並べても十分顔で戦える。

 ただレイ程太い人間はエルフィン族には少ないみたいだ

 

「それで?女の子自慢がしたくて来たわけじゃなかろう。」

「もちろんだ、君が本戦出場を果たしたのでお祝いに来たんだよ。」

「そうか、今年もまたよろしく頼むよ。」

「去年の君との試合は楽しかったよ。本当に紙一重の勝利だったからね。」

 ふたりはガッチリと握手を交わす。

 

「あの人強いの?」

「強いわよー。過去10年以上の中で彼ほどの才能の有る人はいないわね。」

「ふーんそうなの?」

「やっぱりさあ、格好の良い男同士の決勝戦の方が絵になるからね。今年も決勝で会いたいね。」

 

 なに?コイツのその言い草は?

 

「そこで勝ってまた女の子の人気を高めたいのか?」

「そんな邪心は持ってないよ、ただ役得は有ってもいいじゃないか。」

 だめだコイツ剣は強いも知れないが邪心が負けず劣らず強い。

 

「アリーナさん、なにあれ?」

「ま、まあ、あの人は欲望に忠実なだけよ、特に悪い人じゃないから。」

 アリーナさんの頬が少し引きつっている様に見えたのは気のせいか?

「まあ、僕は君の引き立て役になるつもりは無いから。」

「もちろんだ、自分が負けてもおかしくない程の実力の有る好敵手だからこそ、勝利に意味が有るのさ。」

 

 言ってる事は同じだろうが。

 

「僕よりももうひとり人族から本戦出場が決まっただろう。」

「え?ああ、あのゴリラかい?いやいや、あんな力だけの選手じゃ美しくないよ。やっぱり君のように力と技に長けた選手じゃないとね。」

「レイさんは貴方なんかにまけないなの。」

 後ろからラフレアが声を荒らげる。

 もっとも荒げても声が可愛いので荒げた感じが全くない。

 

「おや?君は確か去年の大会に出てなかったかな?」

「ああ、この娘は去年の女子の格技の準優勝者よ。」

「ああ…?あの試合放棄した……。」

 エマは思いっきりローランの足を蹴ってやった。

 

「あたたた、何をするんだい?」

 人の気にしてる事をほじくる馬鹿が。

 ローランは睨みつけてくるエマを見て、蹴られた意味に気がついたようだ。

 

「ああ……今年は頑張るといい……それにしても去年より大きくなっていないかい?」

 ラフレアはレイの後ろに隠れる。

「彼女の事はいいだろう。」

「ああ、そうだな。それにしても……。」

 ローランはエマの方を流し目で見るとキラリと光る笑顔をエマに向けた。

 

 この馬鹿はっ倒したろか?

 

「これはこれは人族にしては可愛いお嬢さんだね。君もレイくんのファンなのかい?」

「彼女は女子徒手の部門の本戦出場者だよ。」

 レイがすごく嫌そうな顔をした。

 

「なんと!君のように可愛い人族が本戦出場とは素晴らしいね、僕はてっきりドワッフ族の女性が出てくると思っていたのに。」

 ローランはエマの手を取ると手の甲にキスをする。

 エマの背筋にぞわっと悪寒が走る。

 

「それはどうも。アタシはラフレアちゃんの親友だかんね。」

 後ろに手を回すとスカートでゴシゴシと手の甲を擦る。

「ああ、そうだったのか、君の友人を侮辱するつもりは無かったんだよ、申し訳なかった、その点は理解してほしい。」

「いいわよ、彼女は今年こそ優勝するから。」

「おや?君は優勝するつもりが無いのかい?だって本戦で勝ち進めばどこかで彼女と当たるんだよ。」

 

 やめてよ~っ、それは思い出させないで~っ。

 

「ま、まあ、後は気合と根性で。」

「そうですかそれならがんばって下さい、でもそのきれいな顔を傷付けない様にして下さい、世界中の男が悲しむからね。」

 きらっと歯を輝かせて微笑みを送る。

 

 うげ~~っ、なんつー浮ついた発言、言ってる自分が恥ずかしくないのかね?

 

「それじゃあ僕はこれで失礼する、本戦を楽しみにしているよ。」

 ローランがドアを開けると黄色い声が一斉に高まる。

「はいはい、押さないでね、ここじゃ周りに迷惑だから外に行ったら順番にサインをしてあげるからね~。」

 凄まじい喧騒が去ったあとはひどく部屋に静寂が訪れた様な感じがする。

 

 あいつは一体何しにここに来たんだ?

 

 ラフレアはまだレイにしがみついている。

 エルーラとティンカーはまだ頬を染めている。

 いかんな、この子達をあの男の毒牙から守らなくては。

 

「それじゃあ皆さんこれ以上邪魔が入らないうちに私の道場の方に移動しましょう。」

 ゼンドレに促されてみんなで道場に移動した。

 その日の晩餐はとても楽しいひとときだった。

 

 ただ、なぜかゼンドレにシドラ、ガルドに加えてモイエラまでがアタシの周りに座っていた。


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