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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
ドワッフ族の迷宮
73/211

シドラは執念で逆さ吊り返しました

 崩れてくる天井はあらゆるものを下敷きにしてゆく、ザルディは滅びたのであろうか?

 

「ぶわっ!」

 広間から吹き出してくる土煙によって何も見えなくなる。

 ゲンナイがかろうじて転がりだしてくる。

 みんなをシドラが手を引いて安全な場所に誘導してくれた。

 

「扇子は?」

「姿が見えない、ザルディと運命を共にしたのだろうか?

「オーッホホホ、お呼びになりまして?」

「出たな、扇子!」

 

 いつの間にか扇子はシドラ達の背後についてきていた。

 

「まあ、ウィザーはしぶといですから。」

 背後からシドラが扇子をぐるぐる巻きにして縛る。

「あんたどこからその縄を出したのよ。」

「はい、もちろんアナタを逆さ吊りにするために隠し持って来ておりました。」

 

 割りと執念深い。

 

 広間は完全に崩れると共に明かりも無くなり中を伺う事も出来なくなっていた。

 ゲンナイはへたり込み大きく肩で息をしていた。

「ゲンナイさん大丈夫ですか?」

 ゲンナイは黙って何かを取り出し口に含むと飲み下した。

 

「エマ殿、大丈夫であるよ。子供は無事であろうな。」

「うん、もう外に出ている頃だから大丈夫だよ。」

「一宿一飯の義理、果たし申したな。」

 

 一宿一飯に命掛けるんか?この人は?

 

「それじゃ外に出ましょう。外に出たらエスペランを高い木の天辺に吊るしてウィザー通信で全世界放送ですから。」

 そんな事を言いながら最初の部屋に着くとお母さんたちがいた。

 なんか骸骨たちが着ていたコートを羽織っている。

 

「ゲンちゃん!良かったーっ、無事だったんだねー。ものすごい爆発音と地響きが激しくて心配していたんだよー。」

 お母さんがゲンナイさんに飛びつこうとした。

 ふわっとゲンナイさんはエマの後ろに回る。

 

「あのブルマー男はどうなったんだい?」

「すごかったのよゲンナイさんとぶるまー男の決戦は。最後にあのぶるまーは自爆しちゃったの。」

 エマは手短に戦いの状況を語った。

 

「ホントかい?すごいねー、ゲンちゃんありがとう。」

「それでぶるまーは死んだのかな?」

「いや、部屋が崩れてきたので確認はしていない。我々も逃げるので精一杯だったのでな。」

 

「ま、二度とアタシの前に現れなきゃいいさ。」

「ゲンちゃ~ん。あんたには大きな借りが出来ちゃったね~っ。」

 すすっと距離を取るゲンナイさんで有る。

 

 ゲンナイさんそんなにおびえなくてもお母さんは感謝してるだけですから。

 

「一宿一飯の義理である、礼には及ばぬ。」

「そんな訳にはいかないよーっ。何日でも家に泊まっていっておくれな。足りなければアタシの体で払ってあ・げ・る。」

 

 やめなさいお母さん、ゲンナイさんの顔が引きつっておびえているじゃない。

 

「せっかくの申出でであるがそれがし集合時間が迫っておりましてな。」

「そうかい?残念だねえ、時間が出来たらいつでも泊まりに来ておくれな、待っているからね。

「うむ、その節には是非……。」

 

 かなり無理して言葉にしたのが丸わかりだ。

 

「二人共どうして外に出なかったの?」

「いや、この先は例の罠の有る所だから。」

「ああ、そうか。だから此処で待っていたんだ。」

 

「それよりその服は?」

「少し寒くなってね、着させてもらったよ。」

「ああーら、うれしいわーっアタシのコート気に入ってもらえたの?」

 

 ベルトラも扇子のコートを着ていた。

 無論袖は長すぎるので折り返してはいたが、二人共背が高いのでウィザーのコートでも丁度良い大きさだった。

 

「うん、すごく着心地いいよ。」

 ベルトラは少女の様にぐるっと回って見せた。

「ベルラにも持っていってやりたいんだが構わないかな?」

「オーッホホホ、いいわよーっ破れてないのは全部持っていって頂戴。」

 

「いいの?ウィザー製じゃないの?」

「いいのよーっ、生地は街で買ったものだし刺繍はアタシの手製だもの。」

 

 全員で顔を見合わせる。

 

「アンタ以外に器用なのね。」

「それはもう、ウィザーですもんねー。」

 何故かやたらと明るいやつ。

 

「それじゃ遠慮なく。」

 ベルトラは散らばっているコートの中から傷んでいないものを選んで集めていた。

 

 ちなみにこの後このコートは村で人気が出て街で売りに出される事になる。

 扇子は狂喜乱舞して新しいファッションを次々と作り出した。

 そしてドワッフ族の住む田舎のドームが一大ファッションの発信地になるのはかなり先の話であった。

 

「それで帰りの罠が仕掛けてある通路はどうやって通るの?」

「はい、もちろんエスペランに解除してもらいましょう。」

「ホーッホッホッホッ、いいわよー、全部アタシが解除してあげる。」

 

 なんでコイツこんなに明るいんだ?

 

「ほれっ」

 エマは扇子を罠の仕掛けてある通路に蹴り込んだ。

 

 ズバッ!

「ひえええぇぇぇ~~~っ。」

 

 ゴロゴロッ!

「ぐぎゅうう~~~っ。」

 

 ずきゅっ!

「ぐぎゃっ!」

 

 カポっ!

「ほげええ~~っ!」

 

 ズゴン!

「ぶほっ!」

 

 扇子は次々と罠に掛かって罠を解除してくれた。

 

「いや~っ槍とかに突かれて斧に切られて石に押しつぶされて、もーっボロボロよー。オーッホホホ。」

「本当にボロボロになっちゃってるわね。どうして死なないのかしら?」

「元々ボロボロですもの、この位なーんでもないわよ。オーッホホホ。」

 やっぱり相当逝っちゃってる奴みたいだ。

「それじゃ早くドームの中に戻りましょう。」

 

 なんとか全員は彫像の乱立するドームの出口からドームに戻って来た。

 

「カルラちゃんは?」

 ようやく子供の状態を気遣える余裕が出来る。

「まだ寝てるよ今朝から昼寝をしていなかったんだろうね。」

「そりゃそうよずっとアタシのお尻に噛み付いたままだったんですもの。」

 

 エマは黙って扇子の頭を蹴飛ばすと3回転して地面に突き刺さった。

 

「それはそうとエスペランを逆さ吊りにする前に戒律を破った事に対する制裁をさせてもらうことにします。」

「あーらアタシ戒律なんか破ったかしら?」

「はい、私の保護対象者を危険に晒し、無関係の人間の幼体を拐かしました。」

 

 なに?珍しくシドラがシリアスモードに入ってる。

 

「それって戒律に反するの?」

「我々の存在目的を考えれば十分に戒律に反すると結論付けられます。あなたにそれが理解出来ないと?」

「おっかしいわねえ、アタシの判断では戒律の中だったんだけど?」

 

 しばらくシドラは考え事をしているように黙っていた。

 

「アナタは判断基準が変えられたとは思わないのですか?」

 そうシドラに言われると扇子はそこで黙り込んでしまった。

 

「解らないわねえ、それだと我々の判断基準を変えられる存在がいると言うことになるわね。」

 重苦しい沈黙があった。

 

「ま、それはそれとして、結論から言えばあなたの作ったあの洞穴は破壊させてもらいますからー。」

 シドラが楽しそうな声を上げる。

 

 アンタのシリアスモードを信じたアタシが馬鹿だった。

 

「オーッホホホ、何を言ってるの?ドームの外なのよ。あなたにアレを壊せるほどの魔法を使える訳ないじゃないの。」

「おーや?意外とあなたも甘いようですね、私には『星屑の矢』《スターダストアロー》が有るんですよ。」

 何格好の良い事言ってんのよどうせいつもの通りロクでもないものでしょ。

 

「ば、馬鹿言わないで、あんなもの使ったらドームが消滅しちゃうわよ。」

「大丈夫ですよ、出力を抑えますから。」

「や、やめてよこんなドームから至近距離で使う魔法じゃないわよ。」

 

 なに?それなに?何でそんなに扇子がうろたえるの?

 

「それじゃ行きますよ。『星屑の矢』《スターダストアロー》」

 シドラは両手を上げて魔法を詠唱した。

 

 や、やめなさいよ、ものすごく嫌な予感しかしないから。

 

 いきなりドームの外が強い光で輝くと、大きなな爆発音と共に下から突き上げる様な揺れが起きて全員がひっくり返った。

「ひえええええ~~~っ。」

「だ、だから言ったじゃないの。」

 

「あああ~ん」

「カルラが驚いて起きちゃったじゃないか!おお~、よしよし婆がいるから大丈夫だからね~っ。」

「いやああはははっ、少し大き過ぎましたかねえ。」

 

 シドラが恐る恐る外を覗くと直径500メートル位のクレーターが出来ていた。

 

「見なかった事にします。」

 シドラは慌てて扉を閉めると知らん顔して言った。

 

「あんたこんな所でどんだけの事するつもりなのよ?」

 エマはシドラの首根っこをつかんで振り回す。

「すいませ~ん。」

 

「ああ、せっかくの彫刻が全部倒れてしまいましたね。」

「知らないわよ、アンタのお陰で出入り口施設の再建をしなくちゃならないのよ。その間どれだけ人々が迷惑すると思っているの?」

「それもこれも、あなたが変な物を作るからですよ。」

 

 あ~あ、醜い争いをしているよ。

 

「いやあああ?っ。」

 突然エマが叫び声を上げた。

「どうしました。」

 

 これ幸いとシドラがエマの所に行く。

 そこには倒れた銅像達の中にあってもしっかりと倒れずに残った銅像が立っていた。

「アタシの銅像だけビクともしていない。」

 

「良かったではありませんかこれだけでも無事で。」

 シドラが嬉しそうに言った、結構コイツこの銅像が気に行ってるのか?

 

「ゲンナイさん!」

「なんですか?エマ殿。」

「これ、ちょんぱして!」

 

「この銅像であるか?いや、しかし。」

 ゲンナイさんもこの銅像だけは評価が高かったな。

「いいの!ちょんぱして!」

「む、確かにパンツまる出しの自分の姿が此処に残るのも心の重い話ではありますな。」

「パンツではありません、ブルマーです。」

 

 シドラが、余計な事言うんじゃねーよ。

 

「ますます心の重い状況であるな。……委細承知した。」

 ゲンナイは銅像の前で刀を構えると叫んだ。

「ちょんぱっ!」

 ブォンと言う音とともに赤い光が流れると銅像はバラバラと崩れ落ちる。

 

「ふんっ!いいもん。また作るから。」

 何やら扇子がつぶやいている。エマの額からビキッと言う音が聞こえた。

 

「ゲンナイさんその扇子の首、ちょんぱしてくれる?」

「ひええっ?」扇子が悲鳴を上げる。

 

「はあっ?……い、いや流石にそれは……。」

「そお?じゃ刀貸して。アタシがちょんぱしてあげるから。」

「ぎょええぇぇ~~っ。」

 扇子がコソコソとシドラの後ろの隠れる。

 

「いやいや、エマ殿目が本気であるな。」

「だめ?どうせウィザーは死なないんでしょ。」

「流石にまずいのでは無いかと思うのだが。」

 エマは心底残念そうな顔をした。

 

「シドラ!」

「はい!なんでしょうか?エマさん。」

「逆さ吊り!」

 

「はいはい、分かりました。」

 シドラが嬉しそうに答えた。

 

「いやああ?ん景色が逆さになっちゃってる。」

 近くに有る中で一番高い木のてっぺんに扇子を逆さ吊りにしてやった。

 一応お腹のあたりにはしっかりと扇子を括り付けてはおいてやったのだ。

 

「すごく見晴らしがいいわよ~ん、オーッホホホ。」

「なんか、すごく喜んでるわよ。」

「まあ……あの人は…そう言うウィザーですから。」

 

「これでシドラの憂さも晴れたの?」

「はい、この姿をウィザー通信の全世界中継で放映で実況中継していますから。」

 

「キュッキュキュ~ッ♪」

「おまたせキューちゃん。」

「それじゃあ帰りましょうか?」

 

「ちょっと待って扇子はあのままでいいの?」

「大丈夫ですよそのうち磨き虫が助けに来ますから。」

それがしは此処で失礼する。このまま集合場所に直行するがゆえ。」

「ゲンちゃん、時間が有ったら絶対来てね、家族ぐるみで歓迎しちゃうから。」

 

 それって親子どんぶりって事じゃないよね。

 

「ははは、期待しておりますゆえ。」

 いや、ゲンナイさんもベルトラも顔が引きつっているから。

 

 キューちゃんが走り始めてしばらくするとエマはふと気配を感じて後ろを振り向く。

 下がってきていた磨き虫に目が合うと磨き虫はすすすっと上に上がっていく。

 

 前を向いていると再び何かを感じて後ろを振り返ると磨き虫が扇子の所にいた。

 目を合わせると磨き虫は慌てて上に上がっていく。

 

 今度は後ろを振り返らないようにしていたら声が聞こえた。

 

「あらあああぁぁ~~~っ。」

 

 ドスン!

 

 振り返ると磨き虫が慌てて下に降りていく。

 あ、なんか一生懸命掘っている。

 エマは見なかった事にきめた。

 

 

  ◆

 

 

 みんなと別れたゲンナイは一人街道を歩いていた。

 

「二人とも無事だったか。」

 ふっとゲンナイの後ろに2つの人影が現れる。

 2つの人影は共に白い装束に覆面をかぶっていた。

 

「父上。」

「お父様。」

「ハヤトにカスミ。ご苦労だった無事でなにより。」

 二人は覆面を取る。二人共まだ若い。黒髪の男と長い髪をした女であった。

 

「ウィザー並の相手が召喚されたと言う情報だったが確かに恐ろしい相手であった。」

「倒せたのでしょうか?」

「いや、たぶんあれでは死ぬまい。ただ傷を治すのにそれなりの時間は稼げるだろう。」

 

「あの男、私と兄様が隠れていることに気づいておりましたな。」

「うむ、それ故最後にあやつの誘いに乗った振りをしてお前たちに背後を突かせたのだ。」

「はい、父上の指示を見誤らずに傀儡を使いました。」

「ワシの背後に回ったのはハヤトか、良くためらわずに父の背中に槍を打てたな。」

「父上を信頼しておりましたから。」

 

「あやつとんでもない怪物でしたが、ドーム内での戦いはどのような事になるのでしょうか?。」

「それはかなり熾烈な物になるだろう。ウィザー達がどのように応ずるかで決まるだろう。」

「此処に来る前にあの男の情報が有ったと聞いておりますが。」

「うむ、あの男は元マイリージャの兵士だったらしい。」

「人間がウィザーに?」

 

「いや、人間はウィザーにはなれん。あやつはウィザー程の知能の持ち合わせは無かった。」

「それならさほどの脅威では無いのでは?」

「いや、戦いの直感と言うか本能はウィザーには無い物だ。侮ってはならん。」

「「はいっ!」」

「さて、取り敢えず帰って母さんの飯でも食おうか?今回は二人共良くやってくれた。」

 

 3人はかき消すようにその場から消えた。


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