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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
ドワッフ族の迷宮
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リザードマンのケツを穿つ

「まて、エマ殿!」

 ゲンナイがエマを止める。自分が戦おうと言うのだろう。

 

「大丈夫よお母さんの仇は私が取って上げるから。」

 リザードンは黙って鞘に入った刀を上げて見せる。

「武器?武器の事なのね、いいわよあんたはその刀を使っても。私の武器はこの手足に付けた防具よ。」

 リザードンは刀を下ろすとそのまま下に投げ捨てる。

 

「わかったわあくまでも正々堂々と戦いたいのね。」

 エマは一歩前に出ると右手を開いて差し出す。

「あたしのドームでは戦いの前に手を握りあってお互いの健闘を称え合うのよ。」

 リザードンはしばらくエマの手を見ていたがやがてためらいながらエマの手を握る。

 

 エマは強くリザードンの手を握ると更に左手を添える。

 リザードンは手添えられた途端にビクッとなる。

 

 その目は驚愕に見開いていた。

 一方エマは悪魔のような笑みを浮かべる。

 

「かかったわね。」

 慌てて手を振り払おうとするがエマは握ったまま離さない。

 リザードンの腕は既に棒の様な物に変化していた。直ぐに変化は体の方に及び上半身は樽のようなものに変化していった。

 

 変化が終わるとエマはリザードンの上半身から大きなハンマーを持ち上げる。

 リザードンは下半身だけがその場に残る。

 直ぐに変化は始まり残ったリザードンの下半身はそれに見合った大きさのリザードンに変わり、小学生位の大きさになった。

 

 リザードンはエマに向かって何やらアピールしている。

 

「エマさん『卑怯だぞ小娘!』と言っておりますが。」

「知ったこっちゃないわよ。」

 エマは思い切ってハンマーをリザードンに叩きつける。

 

 ドカン!

 

 リザードンはかろうじてハンマーを交わすと逃げ始める。

「こら待てこのちびリザードン!」

 ドカン!ドカン!と逃げ惑うリザードン容赦なくハンマーを振り下ろす。

 

「こうしてみると子供を襲っている鬼女のような所業であるな。」ゲンナイは眉をひそめる。

「エマさんもすごい力であるな。あれではまるでドワッフ族の女みたいである。」

「やっちゃえーっお母さんをこんな目に合わせたトカゲ野郎を潰しちゃえーっ。」

 

 リザードンは逃げながらも刀を拾うと果敢に反撃してくる。

 

「そんな体で大きな刀を振り回せるわけ無いでしょ。」

 エマが大きくハンマーを振り回し刀をなぎ払う。

 しかし大振りになった隙きを狙ってリザードンは飛び上がりざまエマに向かって刀を振り下ろす。

 

「かかったわね。」

 

 そう言うとエマは1回転してハンマーの勢いを殺すこと無く空中にいるリザードンにハンマーを向ける。

 リザードンは空中にいるために猛烈な勢いで迫って来るハンマーを避けることが出来ない。

 ハンマーに当てられたリザードンの体は大きく吹っ飛んで壁に激突する。

 グシャッとなって地上に落ちたリザードンめがけて更にエマのハンマーは振り下ろされた。

 

 グシャッ!

 

 ピクッとゲンナイは頬を歪める。

「よっしゃ!やったーっ。」

 リザードンはハンマーの下でチリになって飛び散っていた。

 

「すごいわエマさんあんな強敵をかんたんにやっつけちゃった。」

「うう?む、武士もののふにもまさる勇気と知恵、ゲンナイ感服つかまつる。」

 

 ゲンナイの背中にさっきから冷たい物が流れ続けて止まらない。

 

「いや~っ、エマさん素晴らしい攻撃でした。ただ、残念なことにまだトドメは刺されていませんね。」

「え?まさか!?」

 叩き付けられたハンマーがゆらゆらと揺れている。

 

 いつの間にかハンマーの下に向かってチリが集まって来ているではないか。

「こいつ最後の力でコアだけは守ったのね。」

 エマは素早くハンマーを持ち上げもう一度潰そうとしたが集まったチリは形を持たないまま素早くハンマーの下から移動する。

 

 エマたちから少し離れた位置でチリは急速に成長するとだんだんリザードンの形を作り始めた。

 

「貴様ら良くも我を騙してくれたな。」

 エマは驚いてシドラの顔を見るがシドラは頭を振ってイエイエをしている。

「なんという卑劣なる所業われは正々堂々たる戦いを所望したのに奸計にてだまし討をするとは卑怯千番なり。」

「アンタ喋れんじゃない。何をカッコつけて喋れない真似をしてんのよ。」

 

「うるさい!これはギミックだ、ギミック!」

 

「な~にが卑怯よ切られても潰されても死なない奴が生身の人間相手に負けてるくせにアンタが言う言葉じゃじゃないわよ。」

 その間にもリザードンはどんどん大きくなり最初の大きさを超える。

「今度こそ容赦はせんぞ、徹底的の叩き潰してやるわ。」

 

「エマ殿下がられよ試合に負け勝負に負けて人外の力に頼る、この様な外道に用いる言葉など不要。それがしが一刀のもとに斬り伏せてやるわ。」

「はーはっはっはっ、この我を切り伏せるだと?切ろうが突こうが死なぬわれに対して戯言をいうな。」

 既にリザードンは3メートル近くなっており切り伏せる事すら難しい大きさになってきていた。

 

「さあ、われの力を恐れよ、理不尽なる力の差に絶望するがいい。」

「ホーント、只のデクノボウのくせに目一杯突っ張っちゃってみっともないったらありゃしないわね。」

「何をいうか!この我は悠久の歴史の中で伝説となった竜の勇者であるのだぞ。」

 

「だから何なのよ尊敬してほしいの?わーい、みんなー拍手拍手ーっ」

「うぬぬぬ、おのれ小娘バカにしおって我の恐ろしさをいま……うげっ。」

 

「むむっ!」

 

「あやっ?」

 

 ゲンナイとベルトラは目線をそらす。。

 

 いつの間にかリザードンの後ろに回ったシドラはリザードンのお尻に腕を肘まで突っ込んでいた。

「あがが……があっ……。」

 リザードンは天を仰いだまま硬直している。

 

 ズボッと抜いたシドラの手にはコアが握られていた。

 それと同時にリザードンは崩れ落ち始めた。

 リザードンが形をなくすとエマの武器もチリに帰ってしまう。

 

「アンタそれ以外の攻撃方法を知らないの?」

 エマはいかにも嫌そうな顔をしてシドラを見る。

 

「いえいえ、お母さんが頭と胴を破壊してくれましたし、手足や尻尾にはコアを入れる筈もありません。エマさんは相手の上半身を武器に変えました。残るのは腰の部分と言う事になります。」

 

「それにしても腕を突っ込むことはないじゃない。」

「あの大きさでしたからね。手を突っ込まないと届きませんでした。コアを無傷で回収したかったのです。」

「しかしこれを作った奴もワンパターンよね。」

「ま、ウィザーですから。」

 

 そう言ってシドラはコアを両手のひらを合わせるようにして持つ。

 しばらくそうしていると手を開いてエマの方にコアを差し出す。先程の骸骨のコアより一回りおおきい。

 

「な、なによ。」

 エマはコアを見たが出てきた所が所なので少し引く。

 

「汚くはありませんよ生き物の体内から出て来た訳ではありませんから。」

「そ、そうだけど。」

 ためらいながらエマはコアを受け取る。

 

「コアを握ってリザードンの事を考えて下さい。彼が私達の仲間になると。」

「リザードンが?私達の?」

「はい、そうです。」

 

「わかったわ。」

 エマが言われた通りに念じ始めるとエマの周囲にチリが集まってくる。

「チリの中に落として下さい。」

 エマがコアを落とすとチリが集まってきて盛り上がるとやがてリザードンの姿になる。

 

 しかしリザードンはそのまま動こうとはしなかった。

「どうしたのかしら動かないわ。」

「リザードンはエマさん使い魔になりました。」

 

「使い魔?キューちゃんみたいな?」

「いいえ、キューちゃんは使い魔と言っても眷属のような物ですから自分で考えて行動します。しかしこの使い魔は只の道具ですから自分では考えません。命令の通りに動くだけです。」

 

「どうやって命令するのかしら?」

「試して見てください。」

「右を向きなさい。」

 リザードンは右を向いたがそれ以上は動こうとしなかった。

 

「おすわり。」

 リザードンはしゃがんだ。

「お手。」

 リザードンはエマの手を握った。

 

「この辺を片付けて。」

 リザードンは自分の周りに散らばっていたチリの残りを片付けた。

 

「ふーんこのまま外に持って行けるの?」

 一瞬エマはこんな便利なものが有ったらいいな、などと思ってしまう。

 

「残念ながらこの洞窟内だけです。ですからこの次のぶるまー男との戦いに役立ててください。」

「残念、外に持っていければこき使ってやろうと思っていたのに。」

 

「なる程コアにはこの様な使い方も有るのか。貴公もなかなかやるではないか。」

「あたしたちには使えないのかい?」

 ザルエガが起き上がって来る。

 

「もう元気になられたので有るか。」

「当たり前さ、あんなことでドワーフ族の女がくたばってたまるかい。」

 ザルエガはゲンナイに媚びを見せるがゲンナイは何気にスルーを決め込む。

 

「エマさんは皆さんとは違う才能をお持ちでしたのでこの様な事が出来ましたが、皆さんには残念ですが使えません。」

「別にいいさどんな才能か知らないが村じゃ使いみちが無いからね。」

「それでは次に参ろうか、今度はあのブルマー男が相手であるからな。」

 

 今度こそ自分が主役だと胸を張るゲンナイであった。


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