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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
ドワッフ族の迷宮
55/211

覗きの罰は逆さ吊りです

「結構あったまったし体でも洗うか?」

「そうだな。」

 

 二人は無造作に湯から上がると前を隠すことなく洗い場に向かう。

 

「どうしたエマ?髪も洗っていいんだぞ。埃だらけだろう。」

「い、いや。なんだか嫌な感じがする。」

「どうした?エマらしくもない。」

「感じない?何かねめつけるような視線の感じを?」

 

 エマはタオルを取ると体に巻き付ける。

 

「そうですね、明らかな視線が感じられます。

 サツキもタオルを体に巻き付ける。

 

「そういわれれば何か見られているような…。」

 ベルラ周りを見渡す。確かに誰かの視線を感じる。

 

「やべっ感づかれただ。」

「て、撤収だ、撤収だ。」

 

 覗いていた男が後ろの男に合図して二人一斉に後ろを振り返る。

 

「うおっ。」

「うわっ。」

 ドワッフの二人が振り返った処に目の前に状況を全く理解しないシドラの顔があった。

 

 ごつっと大きな音を立てて3人が頭をぶつける。

 

「ぐわっ!!」

「あがっ!!」

 強烈な衝撃に二人はひっくり返ると衝立に体をぶつけて転がり出る。

 

「ほほ~う。こんな処にいやがったか。」

「なかなかいい度胸をしてるじゃないか、お前ら命がいらんみたいだな。」

 

 ベルトラが指をポキポキ言わせながら、体を全く隠そうともせずに3人の前に歩み寄ると二人の前に仁王立ちになる。

 

「へへへええ~~~~っ。ご拝顔頂きましてありがとうございま~~す。」

「ありがたや~っ、ありがたや~~っ、観音様~。」

 

 二人は床に頭を擦り付けて平伏する。

 

「ほれ、おめえさんもお礼を申し上げるだ。」

「ほえっ。」

 

 ドワッフはボケっとしてるシドラの頭をつかんで床に押し付ける。

 

「シドラ~ッ!?あんた~っ、なんでこんな処にいるのよ~っ!」

「こ、これはエマさん、このようなところでお会いできるとは思いもよりませんでした。」

 

 頭を押し付けられたシドラは平伏したままで答える。

 

「し、シドラさんまで覗きをするなんて。」

 サツキはタオルをぎゅっと掴む。

「本当はスケベだったんですね。」

 

「なんのお礼だって~っ?あんたっつ~人は~っ。」

 エマはこぶしをプルプル震わせながらシドラを見ていた。

「人の体を魔法で見るのに飽き足らず生で見たいとぬかすか~っ!!!」

「いえいえ、そのようなことはひとかけらも考えては……。」

 

「問答無用!!」

 

 エマは大きく足を跳ね上げるとシドラの頭に踵落としを食らわせる。

 ベルラ姉妹もドワッフ族の二人の頭を思いっきり上からぶん殴る。

 3人の頭は見事に床にめり込み杭を打ち込んだように垂直に逆さ立ちになった。

 

「どうする?こいつら。」

「まあ、旅館の管理人に引き渡すけど、その前に。」

 

 ベルラはドワッフ族の男の頭を引っこ抜いて自分の顔の前に持ってくる。

 

「おめえそんなに命を懸けてまであたしの胸が見たいんか?」

「は、はい。それはもう女神のように美しいそのお胸を拝見させていただき感激の極みでありますだ。」

「そうかい、それじゃあ目の前で見せてやるから堪能しな。」

 

 やっぱりそう来ますか。

 

「な、何をするんですか?エマさん。」

 サツキはドワッフ女性の真の恐ろしさをまだ知らないようだ。

 

「まあみてな、至福の拷問という奴を。」

 ベルラはドワッフの男の頭を自らの胸の谷間に埋め込んだ。

 

「うぎゃあああ~~~~~っ。」

 酒瓶を胸の谷間で砕く力のあるドワーフの女である。

 頭を締め付けられた男の口から断末魔の悲鳴が発せられる。

 

「な、なんて恐ろしい事を?」

 男は空中に浮いたまま手足をバタバタさせる。

 

「あんたも地獄に送ってやるよ。」

 ベルトラも胸の谷間に男の頭を突っ込み締め上げる。

 

「あぎゃあああ~っ。」

「うげえええ~っ。」

 男たちの悲鳴がひとしきり続いた後二人の胸に頭を埋めたまま男たちは力なくぶら下がった。

 

「ううっなんという恐ろしい荒業。」

 エマの背筋に冷たい汗が流れる。

 ベルラ達の胸の力を抜くと二人は力なく床に崩れ落ちる。

 

「なんか……幸せそうな顔して気絶してるわ……。」

 男たちは目じりを下げ笑ったような引きつりを口元に浮かべ白目を向いていた。

 

「なんだこいつらまた覗きに来たのか。」

「ああ、管理人さんか、こいつらの始末をたのまあ。」

 ドワッフ族の女の管理人がふんどしにはっぴを着て現れる。

 

「三助さんて男だけじゃないんだ。」

「いやいや、浴場の管理人で三助じゃないけどね。」

「お前ら何度捕まったら懲りるんだ?」

 管理人が男の頭を掴み上げる。

 

「「いや~っははは~っ、毎度お世話を掛けます。」」

 息を吹き返したドワッフ族が嬉しそうに答える、相変わらず不死身のドワッフ族だ。

 

「これで何回目だったっけ?」

「3回目になりますだ。」

「あんましやるとと簀巻きにして川に放り込まれるぞ。」

「はいはい、ほかの連中にもちゃんと順番を回しておりますから。大丈夫ですよ。」

「いや、そういう意味じゃ無くてな。」

 管理人は頭を掻いた。

 

「はい、ゴウコン祭りの影のイベントという事で……。」

「お前絶対に結婚できねえぞ。」

 女の管理人は軽々と二人を担ぎ上げる。

「お前はそっちを頼むわ。ウィザーが来るのは久しぶりだからな。」

 

 おい、待てっ!他のウィザーも覗きをするのか?

 

「ウ、ウィザーも覗きに来るの?」

「ああ、ごく偶にね。」

 エマは頭を抱える。ウィザーの信頼がどんどん地に落ちて行くのを感じる。

「それでその3人はどうするの?」

「簀巻きにして宿の前に逆さ吊りにしておく。覗きの罰だからね。」

 

 また逆さ吊りかよ。

 

「じゃシドラ、頑張ってね。あたしらはゆっくり酒を飲んでくるから。」

「はい、エマさんも飲みすぎないように。」

「うるさいよお前は。」

 シドラは女の管理人に頭を殴られて静かになった。

 

「全くドワッフ族の男共がスケベなのは予想がついたが、シドラまで覗きをするとは思わなかったわ。」

 3人が連行されるのを見送った後エマはいささか落ち込んでいた。

 

「ん?」

 外に出ていて湯冷めしたのかエマは腰がスースーすることに気が付いた。

「ま、まさかあいつ………?」

 

 エマは股の部分を抑えてぶるぶる震え始めた。

 

「ん?どうしたんだエマ。」

 相も変わらずスッポンポンのまま堂々と胸を張るベルラ姉妹。

 

「いやあああああ~~~~っ。」エマの絶叫が風呂場に響いた。

 

 

 

「ゴウコン祭りの間おとなしくここに吊るされとるだぞ。」

 

 宿の呼び込みをやっていた男が3人を門型の梁に逆さ吊にして吊るす。

 店の真ん前で逆さ吊にされているのだがいつもの事らしく、歩いている人も一瞥するとそのまま去っていく。

 中には何人吊るされるか賭けをしていた人もいるらしく金ののやり取りをしている。

 

「あれ?俺たちゴウコンでられねえでねえか。」

「覗きをやった奴がいっちょ前のこというでねえ。」

「私は無罪で~す。風呂場を覗いてなどいませ~ん。」

 

 シドラは必死で無罪を主張するもまるで相手にされない。

 

「おめえさんもええ加減往生際悪いだな。」

「覗いていなくても最後にはちゃんと見たべ。」

「な、なにをですか?」

「とぼけるでねえ、スッポンポンの女に決まっとるべ。」

 

「………………。」

 

「あなたもいきなり露骨な言い方をしますね。」

「とにかくおめえらはおとなしく吊るされとるだ。」

 管理人達はそう言い残して行ってしまった。

 

「いや~っまた吊るされちゃいましたね~っ。」

「前にもやったことが有るのですか?」

「な~にこんな事、いつもの事だで、大したこっちゃねえだ~。」

「んだんだ。いつものこっちゃから~。」

 

 いつもの事ですか~?とても大胆ですね~。

 

「いやいや、まずいでしょう、犯罪ですよこれは。」

「何を言っとる、毎回ゴウコン祭りの間は裏門には鍵を掛けねえ事になっとるだ。」

 

 なんですか~?旅館公認ですか~っ。

 

「ゴウコンは結婚相手を探す祭りだで、その間は見つからなければ旅館公認だで。」

「見つかったら逆さ吊だどもな。」

 

 なるほど~っ、ここに堂々と吊場所を作っているのはその為ですか~っ。

 

「相手はドワッフ族の女だぞ。おら達ドワッフ族の男以外はこんな事したら命がねえだ。」

「んだ、覗いたモンは失敗しても祭りの英雄だべ。」

 

 なんか、理解できたような気がします~。

 

「だどもな~っ。くっくっくっ。」

「んだな~っ。ぐふっぐふっぐふっ。」

「何か?良いことでもあったのですか?」

 

「見ただか?」

「うん、うん見た。」

「何を見られたのでしょうか?」

 

「いや、いやっむふふふふっ。」

「いや~っ、へっへっへっ、今回は大きな収穫だったべ。」

「もしかしてこれのことですか?」

 

 シドラは簀巻きの間から手を掲げると手の平の部分に人の姿が浮かび上がる。

 

「げっ。」

 それを見たドワーフたちは慌ててバシバシッとシドラの手を抑える。

 

「あの、簀巻きから手が出ていますけど。」

 

「そんただら細けえ事はどうでもええだ。」

「ええだか?こんな画像を女に見られたらおまえさん今度こそ本当に命がねえだぞ。」

「な、何かまずいのでしょうか?」

 

「これは人族の女に蹴られた瞬間の画像だべや。」

「見るだけならともかく証拠を残しちゃいけねえ。」

「んだ、画像など以ての外だべ。」

「ドワッフの女は団結力が強いだ。あの女たちが見逃していてもほかの女に殺されるべ。」

 

 何やら恐ろしいほど物騒な発言が聞こえて来ますね~。

 

「ええだか?ぜってえ見せたらいかんで。」

「わかりました。それではこの事は私たちだけの秘密ということで。」

「ええだよ。んくっくっくっ。」

「むふっむふっむふっ。」

 

 何がおかしいんだろう?この人たちは。

 

 そこに何人かのドワッフ族の若者達がやってくる。

 3人は慌てて簀巻きの中に手を入れる。

 

「どだ?見たか?」

「見た、見た。」

「で?どの娘がええだ?」

 

「そりゃあ何といっても巻き毛の姉妹だべ。」

「大きさと言い、形と言いありゃ絶品だべ。」

 

「ピクシーの娘はどうだった?」

「うんうん、あの何にもない所がたまらんべ。」

 いったいどんな情報交換をしているのか知らないが結構盛り上がっている。

 

 やはり変態なのはこの二人だけではなさそうである。

 

「これはこれはみなさん。逆さになっているのに楽しそうですね。」

「おや、いったいどなたでしょうか?」

 

 そのウィザーの仮面には赤い三つの扇子が重なる模様が入っていた。

 手に持った扇子で口の部分を隠しながら話す。仮面ですからもともと口は見えないんですけど。

 

「あなたは?」

「私はこのドームにウィザーギルドのギルドマスターのエスペランですわ。」

「あ、初めましてシドラです。逆さのままで失礼いたします。」

「いいえお気になさらずに。時々逆さ吊りにされるウィザーがいますので覗きに来ていますの。」

 

「はあ、それは恐れ入ります。」

 シドラはどういう意味か測りかねてあいまいな挨拶を行う。

 

「今回はシドラが吊るされていると聞いたので実物を見に来たんですのよ。」

「いやあ~っ私も有名になったみたいですね。」

 

 何でしょうかこの私を知ってるぞ発言は?

 

「ああ~ら、シドラさんは最初から有名人でいらっしゃるのよ。ご存じなかったかしら?」

「へ?それはまた何故ですか?」

「シドラさんはピクシー村に続いてまた覗きをなさったみたいですねえ。」

 

「げげっ、どうしてその事を?」

 突然告げられる秘密の行状に狼狽するシドラ。

 

「いいえ~あなたの活躍はウィザーネットで配信されてますから。」

 

「おお、ウィザー同士が連絡を取り合うというウィザーネット!」

「どんなに遠く離れていても一瞬で情報の共有が可能となる伝説のウィザーネット。」

 突然ドワッフの二人がウィザーネットの解説を行う。

 

「解説ありがとうございます。」

「いやいやそれほどでもねえだ。」

 何でドワッフ族がウィザーネットを知っているんでしょうかねえ?

 

「ままま、まさか私の行動はすべてウィザーに筒抜けとか?」

「ああ~ら、基幹知識データベースに接続していれば皆さんご覧になれますのよ。」

 

 シドラは全身から汗が噴き出すのを感じた、これまでのシドラの行動は全世界に筒抜けで有る事に初めて気が付いたからだ。

 

「わーっ、ウィザーが吊るされている。」

「いやなの。不潔なの。」

「先生顔にいたずら書きしていい?」

「おやめなさい、スケベがうつりますよ。」

「わっ、だめよ近寄っちゃ。」

 

 数人の子供が周りではやし立てる、ウィザーギルドの孤児院の子供であろうか?

 

「あなたなら絶対に吊るされていると確信してあざ笑いに来ましたのよ。」

「あなたよっぽど暇なんですか?それとも底知れない悪趣味なんですか?」

「その両方ですの。さ皆さんこの恥ずかしいウィザーを笑ってあげなさい。オーッホッホッホッ。」

 

 かなり性格の歪んだウィザーですね、このウィザーは。

 

 いつかこのウィザーを吊るすことを心に誓うシドラであった。


アクセスいただいてありがとうございます。

ドワッフ族の趣味は逆さ吊りの様です。

それにしてもエマを上回る鬼畜のウィザーが出現です。

果たしてエマの主役の座は守り切れるのか?  以下次号。


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