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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
木こり達のドーム
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恐るべきドワッフ族の奇習

 エマとラフレアは同じ部屋に布団を敷いて寝る事になった。

 

 スカウスは別の部屋をと言ったがなぜかラフレアが強硬に主張したからだ。

 ドワッフ族の村では床に植物を編んだ分厚い敷物が敷いて有りそこに直接布団を敷く生活をしていた。

 その為同じ部屋に何枚でも布団を敷くことが出来たのだ。

 

「ラフレアちゃん何をしているの?」

 エマ達の寝床の横に何枚ものゴザと荒縄が置いてあった。

 そしてラフレアが荒縄を適当な長さに鎌で切って幾つかに分けている。

 

「なんでもないの。ドワッフ族の習慣なの。長いと邪魔だから少し切って置こうと思ったの。」

 訳のわからないことをラフレアは言っていた。

 それでも昼は結構歩いたのでエマも疲れていて眠気が襲ってきていた。

 

「ああ、それにしても今日は山道を歩いて来たから結構疲れたわ。」

「明日はエマと一緒に薬草を取りに行くから早く寝るの。ラフレアいい場所を聞いておいたの。」

「そうなんだ、ありがとうラフレアちゃん。」

 

 二人で寝ようと布団にもぐるとすっと音もなく扉が開いた。

 ラフレアの妹が枕を持ってそ~っと入って来る。

 それに気が付いたラフレアは自分の布団をめくってあげると妹は嬉しそうにラフレアの布団に潜り込んだ。

 

 妹はラフレアの胸に頭を寄せるとたちまち寝入ってしまった。

 ラフレアはすごく優しそうに妹の寝顔を見ていた。

 それを見ていたエマは何とも言えないあったかい気持ちになった。

 

 うん、ラフレアちゃんはきっといい母親になるよ。

 

 エマは疲れていたのかそのまま寝入ってしまった。

 

 

 夜中過ぎ何者かがエマの部屋の前をうろついている、どうやらエマの部屋の様子を探っている様であった。

 やがてエマの寝息に気が付いたのか部屋のに忍び込んげ来る。

 族は真っ暗な中音も無くエマの布団に近づいていった。

 

 その時カッと目を見開いたラフレアは同じように音を立てずに族の後ろに回り思いっきり頭を殴る。

 族は声も上げずにその場で動かなくなる。

 ラフレアは音を立てないようにそっと族を持ち上げるとそのままゴザを巻いて荒縄でぐるぐる巻きにする。

 

「うう~ん、ラフレアちゃん起きたの~っ?」

 寝ぼけまなこのエマが何かを感じて声を上げる、妹は全く気付かずぐっすり寝ていたる。

 

「トイレに行っていたの。起こしてごめんなの。」

「そうなの~っ?お休みラフレアちゃん。」

 エマはそのまま寝てしまったようである。

 

 ラフレアは音を立てないように移動すると族をす巻きのまま軒から逆さに吊るした。

 しばらくすると今度は窓から入ってきた族がいた。

 しかし同じようにラフレアが目を覚ますと族を殴って軒先に吊るした。

 

 

 翌朝日の出と共にエマは目を覚ます。まだラフレアはぐっすり眠っていた。

「ラフレアちゃんまだ寝ているんだ。夕べは夢も見ないでゆっくり眠っちゃったなあ。」

 そんな事を考えながら窓の外を見る。

 

「ん?なんだあれは?」

 窓の外には何か変なものがたくさんぶら下がっていた。

 

 最初は魚を干しているのかとも思ったがさすがに大きすぎる。

 第一寝る前には何もなかった場所である。

 エマは何か嫌な予感がしてラフレアを起こした。

 

「あ、エマさんおはよう。よく眠れたなの?」

「ら、ラフレアちゃん変なものがたくさん外にぶら下がっているよ。夕べは無かったのに。」

「ああ、気にしなくていいなの。そのままぶら下げて置けばいいなの。」

 

 いや、あれはどう見たって人間でしょ~っ。

 

「夜這いに来たから簀巻きにして軒からぶら下げているなの。」

「夜這い?夜這いってなに?」

「ドワッフ族の習慣なの。夜中に若い女のが寝ている所男が行くの。女が合意すればいいけど合意しなければ簀巻きにして朝まで軒から吊るして置くなの。」

 

 なんつー過激な習慣なんだ?

 

「本当は成人にしかしてはいけない習慣だけどラフレアは体が大きかったからずいぶん前から男たちが忍んできたなの。」

 

 みせーねんだろー、それ、いじょーしゃだぞー、はんざいだろー。

 

「お兄ちゃんは男が女の胸に触れば子供が出来るから二人でご神木の所に行けば子供を授かると教えてくれたの。」

 

 あれか?あの食堂で暴れた元凶はそれかー。

 

「ラフレアまだお母さんになりたくなかったので必死で男たちを撃退してきたなの。」

 

 その結果があの食堂の惨状か?お兄さん、ラフレアちゃんは実にたくましく育ちましたよ。

 

 外には5体の男が吊るされてる。ん?最後の一つが少し大きいな?

 

「そろそろ朝だし降ろさないとまずいんじゃない。」

 ラフレアはチラリと妹の方を見る。

「あまり降ろしたくないような予感がするけど、そうね妹が目を覚ます前におろした方が良さそうなの。」

 ラフレアは鎌を持つと二人で男たちがぶら下がっている軒下までくる。

 

 最初の男は体が向こうを向いていたのでこちらを向かせて顔を見る。

 

「やあエマさん、おはようございます。」

 そこにはさわやかな笑顔でこちらを見る見知った顔が有った。

 

「スカウスさん!」

 ラフレアは物も言わずに兄も顔を殴りつける。

 

 そこにぶら下がっていたのはラフレアの兄のスカウスであった。

 軒からぶら下がった兄は大きく跳ね上がって体を軒にぶつけると周りから押し殺したような悲鳴が聞こえる。

 

「だから見に来たくなかったなの。」

 ぶらぶら揺れる兄を横目に見ながらラフレアがつぶやいた。

 

「え?なに?なにが起きているの?」

 ラフレアは兄を無視して次の男の方に向かう。


「あ、あのラフレアちゃん、降ろして下さい。」

 顔を腫らしたスカウスは小さな声で訴える。

 

「お兄ちゃんはもう少しそこでぶら下がっているの。」

 ラフレアがギロッとスカウスをにらむ。

 

「はい、スイマセン。」

 スカウスはゴザの中に頭をひっこめた。

 

 ラフレアは男達の顔を確認すると次々に足元の縄を切っていく。

 縄を切ると男たちは頭から落下するが全くダメージを感じさせることも無くコソコソと逃げ帰っていく。

 

 やっぱドワッフ族は丈夫だわー。


 最後にの大きな男の顔を見る。

「おはようございます。エマさん。」相変わらず明るく挨拶をするシドラであった。

 

 エマは反射的にシドラの頭を蹴った。

 

 シドラはぐるぐる巻きのまま体を回転させて揺れている。軒がギシギシ音を立てる。

「なんであんたがここにぶら下がっているのよ!」

「いや~っ昨夜散歩をしていますとなぜか窓の外に並んでいる人たちがいたのですよ。それで後ろに並んでみたのですが。」

 

「そうしたら殴られて簀巻きにされたの?」

「はい、何か天災に合ったよう感じですね~っ。」

 

 シドラは片手を出して頭を掻く。

 

「あんたはもう一晩位そのままでいなさい。」

「あ、いやちょっとエマさん。」

 シドラはエマに向かって助けを求めるように手を伸ばす。

 

「簀巻きにされているんだから手を出さないの!」

 エマは冷たく言い放ったのでシドラは慌てて簀巻きの中に手を引っ込める。

 

 コイツ一生このまま放置しておこうか?

 

「エマさん今日は紺色のぶるまーですね。」

 エマはそのままシドラの頭に後ろ蹴りを食らわす。

 

 妹のカノンが布団の中でカクンと枕から頭を落とした。

 

 

「朝食を作るの。」

 

 ラフレアがかまどに火を入れると煙突から煙が上がり始める。

 トントンと音を立てて野菜を切る。軒から持ってきた魚の干物と芋を入れたスープを作り野菜と混ぜる。

 別の鍋でゆでた小麦粉を練ったものを鍋に追加する。

 

 と言うかなに?これ朝食の量じゃないよ。

 

 この頃になると村の家々からもかまどの煙が上がり始める。

 カノンも起きてきて朝食の用意を手伝う。

 子供は家にとっては重要な労働力であることはどこのドームでも同じであった。

 

 エマもカノンと一緒にラフレアを手伝って朝食を作る。

 

 ドワッフ族では祖母がおり父親がおり孫であるラフレア達3世代が一緒に暮らす場合が多い。

 しかしラフレアの家では祖父が早く死に、父もまた死んでしまったので今は兄弟しかいない。

 

 ラフレアの兄は母親が違う、もしかしたら父親も違うかもしれなかった。

 妹の母親がラフレアとは同じである事だけは確かであった。

 父が生きていれば2人のうちのどちらかの母親が戻って来たかもしれなかったが今はいない。

 

 畑を耕して暮らすことも考えたがラフレアの並外れた体躯を見込んだウィザーが製材所の仕事を勧めてくれた。

 ラフレアの収入のおかげで今は家族もそれなりに余裕を持てる。

 母親が戻って来るかもしれないし、ラフレアはそれを願っていた。

 

 

「いやあはははは。エマさん夕べは良く眠れましたか?」

 

 左目に青あざを作ったスカウスがニコニコ笑いながら食卓に着く。

「んあ……。」

 まだ眠いのかカノンがあくびをする。

 ラフレアの前には普通の倍以上の大きさのどんぶりが置いてあった。

 

 カノンが木のスプーンで朝食を頬張っている。小さいのにすごい食欲である。

 まるでラフレアと食欲を競っているみたいだ。

 

「それで……。」エマが隣に座っている人間に声を掛ける。

 

「なんであんたがここにいるのよ。」

「いえいえ、ラフレアさんにお呼ばれいたしまして。」シドラが屈託なく答える。

 

「あんた人前では食事をしないんでしょう。」

「はい、ですから私の前には食事は置かれていません。」

 

 いたずらをして食事を抜かれた子供みたい。

 

「お兄ちゃん今度やったら山の上の一本杉に吊るすの。」

 ラフレアがドスの効いた声でスカウスに向かって言う

「いやああ~っ。若い女性に夜這いをかけないのは礼儀に反すると思いまして。」

 

「他のドームではそれは犯罪になるの。」

 

「まあ実際この村では女性はみんな出稼ぎに出てしまいますので。」

 確かに若い女性はあまり見かけない。

「それでも子供が多いのはそういった理由によるものでして。」

 

 あっぶね~っ、すごい貞操の危機だった訳だ。


アクセスいただいてありがとうございます。

夜這いは日本でも最近までは結構普通に行われていた様です。

良い子の皆さんは真似をしないでください。   以下次号

 

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